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第2話
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小屋を出て屋敷に戻り、私はシンディの記憶を思い出しながら確認していく。
「目にする光景はシンディの記憶と同じ……魔法も使えたし、間違いなく転生している」
小声で呟くけど、もう私がシンディだから失言だった。
誰にも聞かれていないことに安堵して、私はまず自分の部屋に向かう。
魔法が使えたことが嬉しくて、元の世界に戻りたいと思っていない。
魔法道具という魔法を使う道具があることも知っているから、生活面で問題はなさそうだ。
部屋に到着した私は――鏡で新しい自分、シンディを眺める。
「記憶のシンディと少し雰囲気が違うけど……これは仕方ないわね」
強すぎる力を持ったせいで、周囲を気にし続けていたシンディと私は違う。
今の私は膨大な魔力から何が起きても対処できると自信に満ちて、それが表情に出ていた。
記憶で見たシンディと同じ表情でいてもよかったけど、私としてはこのままがいい。
「オリドス、様にやり返すのは、明日魔法学園に行った時になりそう」
呼び捨てになりそうだったけど、シンディの記憶から様付けはしておいた方がよさそうだ。
今日は休日で――シンディは明日が嫌だと苦悩した結果、魔法で自らの命を絶った。
実際は私の魂が入ってしまったから、予定とは全然違うはず。
本来ならシンディは自らの命を絶ったことで、オリドスがヨハンに対しての嫌がらせを行わなくなると考えていたはずだ。
私は記憶を見たことで、オリドスにやり返すと決意している。
シンディは強すぎるから魔法の使用を躊躇っていたけど、私はこの力を隠す気がなかった。
■◇■◇■◇■◇■
夕食の時間になって――私は食卓に向かう。
食卓に到着すると父と母が驚き、私を敵視している妹ルミスが明らかに苛立った様子で叫ぶ。
「お姉様! 私に迷惑をかけ続けているのに、その自信に満ちた顔はなんですか!?」
一学年下の妹ルミスは、私の悪評のせいで自分の評判も落ちていると父と母に話していた。
魔法学園に通うようになってから暴言を吐くようになり、シンディは受け入れていた。
そしてルミスの態度は更に酷くなったみたいだけど、私は言い返す。
「迷惑をかけ続けている? 貴方とは学年が違うでしょう」
「なっっ……!? お姉様の成績が悪いことは、学園中で有名です!!」
「実技はともかく筆記は好成績なのに、ルミスに迷惑がかかるほどなの?」
「確かにそうだな……ルミスは毎日のように迷惑をかけられていると言っているが、本当なのか?」
「うぅっ……」
私の発言に父が賛同して、ルミスが言い淀む。
今までは家族の信頼を私よりも得るために、ルミスは自分の方が優秀だと常に言っていた。
受け入れていたシンディは追及しなかったから、ルミスはただ迷惑がかかっていると言っていただけだ。
今まではシンディが賛同したからこそ父と母は詳しく聞かなかったけど……私が尋ねたことで、家族は気になったらしい。
言い淀んでいたルミスは理由を思いついたのか、私を睨んで叫ぶ。
「お姉様の実技成績が酷すぎるからです! 魔法が使えないなんて信じられません!」
「魔法が使えない生徒は学園内に何人かいるし、魔法道具を使えるから魔力がないわけではない……それなのに、ルミスは迷惑がかかっているの?」
「そ、それは……もういいです! 早く食事にしましょう!」
これ以上追及されたくないようで、ルミスは強引に話を終わらせようとしていた。
問い詰めてもよかったけど、これからルミスは後悔することとなるから放っておこう。
そして翌日になって――私はシンディの力で、やり返すために動こうとしていた。
「目にする光景はシンディの記憶と同じ……魔法も使えたし、間違いなく転生している」
小声で呟くけど、もう私がシンディだから失言だった。
誰にも聞かれていないことに安堵して、私はまず自分の部屋に向かう。
魔法が使えたことが嬉しくて、元の世界に戻りたいと思っていない。
魔法道具という魔法を使う道具があることも知っているから、生活面で問題はなさそうだ。
部屋に到着した私は――鏡で新しい自分、シンディを眺める。
「記憶のシンディと少し雰囲気が違うけど……これは仕方ないわね」
強すぎる力を持ったせいで、周囲を気にし続けていたシンディと私は違う。
今の私は膨大な魔力から何が起きても対処できると自信に満ちて、それが表情に出ていた。
記憶で見たシンディと同じ表情でいてもよかったけど、私としてはこのままがいい。
「オリドス、様にやり返すのは、明日魔法学園に行った時になりそう」
呼び捨てになりそうだったけど、シンディの記憶から様付けはしておいた方がよさそうだ。
今日は休日で――シンディは明日が嫌だと苦悩した結果、魔法で自らの命を絶った。
実際は私の魂が入ってしまったから、予定とは全然違うはず。
本来ならシンディは自らの命を絶ったことで、オリドスがヨハンに対しての嫌がらせを行わなくなると考えていたはずだ。
私は記憶を見たことで、オリドスにやり返すと決意している。
シンディは強すぎるから魔法の使用を躊躇っていたけど、私はこの力を隠す気がなかった。
■◇■◇■◇■◇■
夕食の時間になって――私は食卓に向かう。
食卓に到着すると父と母が驚き、私を敵視している妹ルミスが明らかに苛立った様子で叫ぶ。
「お姉様! 私に迷惑をかけ続けているのに、その自信に満ちた顔はなんですか!?」
一学年下の妹ルミスは、私の悪評のせいで自分の評判も落ちていると父と母に話していた。
魔法学園に通うようになってから暴言を吐くようになり、シンディは受け入れていた。
そしてルミスの態度は更に酷くなったみたいだけど、私は言い返す。
「迷惑をかけ続けている? 貴方とは学年が違うでしょう」
「なっっ……!? お姉様の成績が悪いことは、学園中で有名です!!」
「実技はともかく筆記は好成績なのに、ルミスに迷惑がかかるほどなの?」
「確かにそうだな……ルミスは毎日のように迷惑をかけられていると言っているが、本当なのか?」
「うぅっ……」
私の発言に父が賛同して、ルミスが言い淀む。
今までは家族の信頼を私よりも得るために、ルミスは自分の方が優秀だと常に言っていた。
受け入れていたシンディは追及しなかったから、ルミスはただ迷惑がかかっていると言っていただけだ。
今まではシンディが賛同したからこそ父と母は詳しく聞かなかったけど……私が尋ねたことで、家族は気になったらしい。
言い淀んでいたルミスは理由を思いついたのか、私を睨んで叫ぶ。
「お姉様の実技成績が酷すぎるからです! 魔法が使えないなんて信じられません!」
「魔法が使えない生徒は学園内に何人かいるし、魔法道具を使えるから魔力がないわけではない……それなのに、ルミスは迷惑がかかっているの?」
「そ、それは……もういいです! 早く食事にしましょう!」
これ以上追及されたくないようで、ルミスは強引に話を終わらせようとしていた。
問い詰めてもよかったけど、これからルミスは後悔することとなるから放っておこう。
そして翌日になって――私はシンディの力で、やり返すために動こうとしていた。
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