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第45話

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 いきなり貴族の子供が青年の姿になって、私に杭による奇襲を仕掛ける。
 咄嗟にアルクが動いて……腕に杭が刺さり、アルクが倒れている。

「な……しくじったかヤミー!?」

 ドリアス殿下が叫ぶけど、この人は協力者か。
 ヤミーと呼ばれた青年は焦りながらも、私に向かって叫ぶ。

「まだです……この魔法道具は刺した者の記憶を奪います! 数分もすればアルク様は廃人と化すでしょう!」

 いきなりそんなことを言い出すヤミーに、私は唖然とする。
 魔法道具の説明を始めたのは……私と交渉するためだ。

「杭を抜くことは私にしかできません……キャシー様がこの杭を自ら刺すのなら、アルク様の杭を破壊しましょう!」

 記憶を奪う――どうやら魔方陣を問題なく起動させる私の知識を、ドリアス殿下は欲しがったのでしょう。
 謝罪したいと言って私に接近して、その杭を刺す気だったのか。

 アルクを助けるためなら従うしかないけど、ヤミーが本当に杭を壊す保証はない。
 それなら……私は倒れて意識を失ったアルクの杭に触れて、魔力を流す。

「その提案を呑むかどうかは――試してからです!」

 これが魔法道具と知れただけで、私には十分だ。
 杭に触れて魔力を流す……魔方陣の操作に比べたら、杭を破壊することなんて容易い。

「誰も破壊できなかった杭を破壊した!?」

 そうヤミーが叫ぶけど、私が杭を刺した後、アルクを助ける気はなかったようだ。
 警備の人達に取り押さえられて、ヤミーは唖然とした声を漏らす。

「貴方に刺さっていれば魔法が使えなくなり、その膨大な魔法知識を得られたというのに……」

 完全に意表をつかれた私は、本来なら刺されていたはず。
 アルクが身を挺しても私を庇い、そして警戒していてくれたから。

 ヤミーを取り押さえることに成功して――こうして婚約破棄を受けてからの出来事が、終わりを迎えた。
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