万年Aクラスのオッサン冒険者、引退間際になって伝説を残す?

ナギノセン

文字の大きさ
23 / 46

23 知らない長衣の者には

しおりを挟む
 ガイルがベルゲンクライへと入って感じたのは、これまで訪れた中で一番の物々しさだった。彼らと入れ替わりに王国軍の騎士や兵士が夕陽を背に慌ただしく出て行った。 
 少し耳をそばだてたパメラが教えてくれた。どうやらアルザスのことが伝わって、ようやく治安部隊の編成を終えて出発させたらしい。
 アルザス自体は北の辺境にあって、自治が認められた町ではあるもののクラフト王国には違いない。近隣であり王弟の治めるベルゲンクライとしては、何もしないではいられないといったところだろう。

 ざわめきの残る町をガイルが見渡す。ここはクラフト王国でも指折りの規模を誇るだけあって人通りも多い。ハイエルフはさすがに隣に立つパメラくらいしかいないけれど、出稼ぎ職人らしいドワーフ族や獣人のメジャーどころの狼人族などもちらほらと見受けられる。

 大通りに面する商店や食堂は夕方のかき入れ時とあって大変な繁盛振りだった。
 ガイル達が今夜の宿を探して三軒目に断られ次へ向かおうとしたところ、白い長衣を着た三人の男がキアラの方へ駆け寄ってきた。

「お待ちしておりました、キアラ様」
「メフィスト様からお迎えに向かうよう言われ参上しました。どうぞ教会へお越しください」

 男達はガイルとパメラが見えていないかのように無視をしている。
 キアラは逆に男達の言葉が聞こえないかのようにガイルの背中へ身を隠した。
 結果的に男達の前にガイルが立つことになった。

「あのさ、お宅らはどちら様?」

 アーレイ教の人間であることは特徴のある長衣からわかる。
 キアラがアーレイ教で特別な存在らしいことも、アーレイ教の幹部である導主ルキウスの仲間だったことから知っている。
 だとすればキアラをそのまま彼らへ引き渡してもよさそうなものであるが、服装などどうとでもなる。教徒を偽った質の悪い奴らの可能性も否めないし、何よりキアラが彼らを避けている。

 ガイルは後ろ手にキアラをパメラへと委ねて、何時でも剣を抜ける態勢で斜めに一歩足を踏み出した。少し威嚇気味なのは相手の出方を計ろうとしたからだった。
 長衣の男達は見るからに戸惑った様子を見せる。ガイルはこのまま戦いにはならなそうだと判断して少し心を落ち着かせた。
 
「キアラ、この人達とは行かなくていいのか?」
「見知らぬ長衣の者について行ってはいけないと教えられた」

 ガイルは思わず言葉を失う。
 見知らぬ者を警戒させるならわかる。しかし見知らぬ長衣の者に限定する意図は何か。アーレイ教徒であれば、キアラの仲間との認識は改める必要があるらしい。
 
「わかった。だったらキアラはこのまま俺達がログレスへ連れて行くから、お宅らは帰って親玉に伝えればいい」
「お前達如きが彼の地に踏み込めるものか!! さっさとキアラ様を返せ!」
「そう言われてもキアラは行きたくないらしいし、俺はルキウスって人に来いって言われてるんだぜ? お宅らに従う理由なんてどこにもない」
「そこを何とか頼みますよ、ガイルさん」
「コルト司教!?」

 ガイルが身を翻そうとしたその時、三人の男達の背後から疲れた顔をした男が進み出て声を掛けた。
 白い長衣を来た男は四人になったが、他の三人よりコルトの衣装は見るからに白く上質なものだった。
 
「お久しぶりですね」
「この人達は司教の仲間ですか」
「広い意味ではそうですが、キアラ様もよくご存知のお偉いさんが寄越した者達です。その方はデニスさんともお知り合いのようですよ」
「デニスと!? どうして!」

 ガイルはコルト司教へ思わず詰め寄った。
 コルト司教は軽く首を振りながら告げる。キアラを迎えに寄越したメフィストと、少し前まで教会に滞在をしていたルキウスとの会話を耳にしただけだと。
 コルトの言葉を聞いたキアラもガイルの後ろから顔をのぞかせた。

「キアラもデニス知ってる。メフィストがキアラを作ったのもデニス知ってる」
「そ、そうだったのか」

 デニスとキアラに何らかの関係があったことも十分わかっていたのに、ガイルは旅が始まっても改めて尋ねようとしなかった。
 アルザスの家の風呂場での醜態や、キアラを一時的にでも隷属させたことなど、ガイルが意識的に避けてきた話題だった。

「今日はもう遅いから教会へ来てはどうですか? ご心配ならガイルさん達は三人ご一緒の部屋を準備しましょう」
「え、さ、三人一緒っ!?」
「いや、俺達はどこか宿を探すから」
「デニスさんに誓って悪い様にはしませんから」
「ん、わかった」

 パメラが妙に焦った声を上げる。ガイルも町中くらいは一人で落ち着いて寝たい。
 二人を無視して了承の返事をしたのはキアラだった。
 このクエストの依頼主はロキではあるが、護衛対象のキアラの意思は無視できない。
 三人の長衣の男達との同行は嫌がったのに、コルト司教の誘いにはすぐに応じたことをガイルが不思議に思ってホムンクルスの少女を見る。

「デニスは怖い。誰も逆らえない」

 キアラが妙に力強い口調で頷く。コルトも困ったように笑う。
 ガイルは、既に故人となっている師匠の凶悪――ではなく偉大さを改めて垣間見た気がした。

 話はまとまったのでコルトを先頭にキアラ、パメラ、ガイルの順に教会を目指す。三人の長衣の男達は、コルトの指示で離れて付いて来ている。
 領主の城の前を通り過ぎて教会の建物へと入ったところで、三人の男達の姿はなくなった。コルトは気にすることなく、ガイル達を貴賓室と思われる設備の整った大きな部屋へと案内した。

「ガイルさん、申し訳ありませんでした。さすがにあの三人を追い払うことはできないもので」

 部屋の真ん中にある対面のソファーへ座りながらコルトが申し訳なさそうに切り出した。ガイル達も勧められて腰を下ろす。
 ガイルとコルトは、デニスを通して知己の間柄である。ガイルは詳しくは聞かされていないが、デニスがかつて大ケガをしてコルトに世話になったことがあった。コルトは見事な手際を見せてデニスを治療したことで彼女の信頼を得たらしい。
 以来、ガイルがデニスとパーティーを組むようになって何度もこの教会には訪れていた。

========================
お読みいただきましてありがとうございます。
更新のために一週間振りにログインしたところ
お気に入りがいきなり増えていてとても驚きました。
時間が取れなくて辛い中では本当に励みになっています!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...