24 / 46
24 持つべきものは
しおりを挟む
「暫く姿を見ませんでしたね。それもハイエルフのお嬢さんにキアラ様とは」
「何がだ?」
「いいんですよ。皆まで言わなくとも」
コルトはガイルの左右に座ったパメラとキアラを見て、どこか納得した笑みを浮かべている。
困ったようにガイルは頭を掻いた。デニスを失ったガイルは固定のパーティーをずっと組んでこなかった。単なるクエスト同行のメンバーなのだと説明しても今さら信じそうにない。
コルト司教はとても腕のいい治療師でもあるが、あのデニスと意気投合をした人物でもある。思考回路が多少ぶっ飛んでいるので、ガイルも誤解を解くのはあきらめることにした。
「それよりあの三人をどうしたらいい」
「そうですね。一服盛りますよ。暫く寝ていてもらいましょうか」
想像しないコルトの答えにガイルとパメラが答えに詰まった。
「い、 いいのか?」
「良くはないですけど、ここでガイルさんに貸しを作っておく方が私的には利益が大きいかと思って」
「えらく俗な動機だな」
「まあ半分冗談ですけど、あの人達の役目はあなた達の様子見でしょう。本気でキアラ様を奪回するならつもりならば、あのような普通の信徒は使いません」
「そう。メフィストのしるしも持ってない」
「キアラ様が彼らとの同行を拒否された理由ですね」
小さく頷いた少女にコルトが続けた。
「でも彼らは本当にメフィスト様の使いだとは思いますよ。ただ都合よく近場に居た者はメダルを持つほどの力を持っていなかっただけでしょう」
「さっきからメフィストって出て来るけど、それってルキウスみたいなものか?」
ガイルは疑問に思っていたことを尋ねた。
アーレイ教の信徒でもないから導主とか尊称を付ける気は毛頭ない。それ以前に最初から人を見下した態度が気に入らないからと言った方が正しい。
これまでの流れからするとキアラはその人物を良く知っていると思われた。しかし言葉足らずで、ガイルにはコルトがしてくれた簡潔な説明のほうがわかりやすかった。
「つまりルキウスと同じアーレイ教の導主会の一人で研究者ってところか」
「はい、それとデニスさんとも仲が良かった人です」
「・・・デニスって何者だったんだ?」
「あなたの師匠でしょう?」
人を食ったような態度でコルトが答える。どうやら教える気はまったくないらしい。ガイルは仕方なく事情を知っていそうなキアラへ顔を向けた。
「デニスはキアラを守る人。ガイルもキアラを守る?」
普段は感情の起伏を見せない少女の蒼い瞳に揺らぎを見た彼は思わず見惚れてしまう。
ログレスまでは護送のクエストを受けているので当然のことになる。
今さらながら師であった女性が何をやっていたのか、頭を悩ます暇もなく答えを求められた彼は口にした。
「まあ、そうなるんじゃないか――」
「わかった。今のキアラにはしるしがないけれど約束する。デニスのメダルを出して」
「やだよ! またおかしなことする気だろう!!」
「むう、いいから出す」
「おっ!?」
「きゃっ!」
キアラは勢いよく立ち上がり、ガイルの体をよじ登って頭にへばりついた。突然頭が重くなったガイルは体勢を崩す。倒れた先に座っていたパメラが小さな悲鳴を上げた。
ガイルは慌てて手を付いて体を起こした。彼のすぐ目の前で、キアラは何故かパメラと顔を見合わせて抱き合っている。倒れる彼の頭から落ちた先でパメラが受け止める形になったらしい。
何故か二人の視線が彼へ非難がましく向けられる。
「な、何だ?」
もとはと言えばキアラがメダルを取ろうとしたことに原因がある。責められるいわれはない。
彼はしっかり座り直そうと伸ばした手へ更に力を入れる。
「いやーっ!!」
「むう、えっち」
ガイルはパメラへ倒れ掛かって覆いかぶさっている。体を起こすために手を置いた場所に、革のソファーのありがちなしっかりとした反発が無い。気づいた時はもう遅かった。
とてもやわらかく温かいパメラの豊かな胸をガイルは思い切り鷲掴みにしていた。
大慌てで手を引いた彼へ険悪どころか凶悪な思念が向けられる中、コルトがのんきに告げる。それは困窮するガイルにとって救いの神のお告げ以外何物でもなかった。
「じゃあ、ガイルさんだけは別の部屋にしましょうか」
すっかりご機嫌斜めになった二人と別になった隣室でガイルはくつろいでいた。
本心を言えば、気を遣うことなく一人寝ができるのはかなりありがたい。同じ敷地にアーレイ教の三人組がいるのは気になる。けれどコルトは信用できる。
何だかんだ言っても、デニスが築いた信頼関係にガイルはまた助けられたこと感謝していると扉を叩く音がした。
ガイルは警戒をしながら扉を開ける。高そうな酒瓶とグラス二つを持ったコルトがにこやかな顔を見せた。
「何がだ?」
「いいんですよ。皆まで言わなくとも」
コルトはガイルの左右に座ったパメラとキアラを見て、どこか納得した笑みを浮かべている。
困ったようにガイルは頭を掻いた。デニスを失ったガイルは固定のパーティーをずっと組んでこなかった。単なるクエスト同行のメンバーなのだと説明しても今さら信じそうにない。
コルト司教はとても腕のいい治療師でもあるが、あのデニスと意気投合をした人物でもある。思考回路が多少ぶっ飛んでいるので、ガイルも誤解を解くのはあきらめることにした。
「それよりあの三人をどうしたらいい」
「そうですね。一服盛りますよ。暫く寝ていてもらいましょうか」
想像しないコルトの答えにガイルとパメラが答えに詰まった。
「い、 いいのか?」
「良くはないですけど、ここでガイルさんに貸しを作っておく方が私的には利益が大きいかと思って」
「えらく俗な動機だな」
「まあ半分冗談ですけど、あの人達の役目はあなた達の様子見でしょう。本気でキアラ様を奪回するならつもりならば、あのような普通の信徒は使いません」
「そう。メフィストのしるしも持ってない」
「キアラ様が彼らとの同行を拒否された理由ですね」
小さく頷いた少女にコルトが続けた。
「でも彼らは本当にメフィスト様の使いだとは思いますよ。ただ都合よく近場に居た者はメダルを持つほどの力を持っていなかっただけでしょう」
「さっきからメフィストって出て来るけど、それってルキウスみたいなものか?」
ガイルは疑問に思っていたことを尋ねた。
アーレイ教の信徒でもないから導主とか尊称を付ける気は毛頭ない。それ以前に最初から人を見下した態度が気に入らないからと言った方が正しい。
これまでの流れからするとキアラはその人物を良く知っていると思われた。しかし言葉足らずで、ガイルにはコルトがしてくれた簡潔な説明のほうがわかりやすかった。
「つまりルキウスと同じアーレイ教の導主会の一人で研究者ってところか」
「はい、それとデニスさんとも仲が良かった人です」
「・・・デニスって何者だったんだ?」
「あなたの師匠でしょう?」
人を食ったような態度でコルトが答える。どうやら教える気はまったくないらしい。ガイルは仕方なく事情を知っていそうなキアラへ顔を向けた。
「デニスはキアラを守る人。ガイルもキアラを守る?」
普段は感情の起伏を見せない少女の蒼い瞳に揺らぎを見た彼は思わず見惚れてしまう。
ログレスまでは護送のクエストを受けているので当然のことになる。
今さらながら師であった女性が何をやっていたのか、頭を悩ます暇もなく答えを求められた彼は口にした。
「まあ、そうなるんじゃないか――」
「わかった。今のキアラにはしるしがないけれど約束する。デニスのメダルを出して」
「やだよ! またおかしなことする気だろう!!」
「むう、いいから出す」
「おっ!?」
「きゃっ!」
キアラは勢いよく立ち上がり、ガイルの体をよじ登って頭にへばりついた。突然頭が重くなったガイルは体勢を崩す。倒れた先に座っていたパメラが小さな悲鳴を上げた。
ガイルは慌てて手を付いて体を起こした。彼のすぐ目の前で、キアラは何故かパメラと顔を見合わせて抱き合っている。倒れる彼の頭から落ちた先でパメラが受け止める形になったらしい。
何故か二人の視線が彼へ非難がましく向けられる。
「な、何だ?」
もとはと言えばキアラがメダルを取ろうとしたことに原因がある。責められるいわれはない。
彼はしっかり座り直そうと伸ばした手へ更に力を入れる。
「いやーっ!!」
「むう、えっち」
ガイルはパメラへ倒れ掛かって覆いかぶさっている。体を起こすために手を置いた場所に、革のソファーのありがちなしっかりとした反発が無い。気づいた時はもう遅かった。
とてもやわらかく温かいパメラの豊かな胸をガイルは思い切り鷲掴みにしていた。
大慌てで手を引いた彼へ険悪どころか凶悪な思念が向けられる中、コルトがのんきに告げる。それは困窮するガイルにとって救いの神のお告げ以外何物でもなかった。
「じゃあ、ガイルさんだけは別の部屋にしましょうか」
すっかりご機嫌斜めになった二人と別になった隣室でガイルはくつろいでいた。
本心を言えば、気を遣うことなく一人寝ができるのはかなりありがたい。同じ敷地にアーレイ教の三人組がいるのは気になる。けれどコルトは信用できる。
何だかんだ言っても、デニスが築いた信頼関係にガイルはまた助けられたこと感謝していると扉を叩く音がした。
ガイルは警戒をしながら扉を開ける。高そうな酒瓶とグラス二つを持ったコルトがにこやかな顔を見せた。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる