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31 クレセントの導主の悲劇
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「そうか、何処かで見た気がしたと思っていました。あなたは王弟アレクセイ殿下の家人でしたね」
「はい、レックス様。フィオナ様付きのサラと申します」
「――王弟殿下のご息女付きの方とは意外でした。しかし先程の話を聞いていたのであれば、これは導主ルキウスの関係した案件です。そして我等が主たるマティアス第三王子はルキウスの妹姫を娶っておられた。いわば身内の恥を雪ぐために必要な措置とお考え頂きたい」
「仰る事情は察しております。でもその人は――関係ないと思います」
王弟の家人である少女は、第三王子の側近らしき騎士へ果敢にも反論を試みる。
よく言えば優しそう、悪く言えば軽薄な雰囲気のレックスは困ったような笑みを浮かべ、整った顔で不快さを隠そうとしないアルフレッドはサラを軽く睨んでいる。
騒ぎの中心であるパメラとは関係ないところに話が飛び火してしまい、当のパメラは目を白黒させている。
「直接はそうかもしれません。しかしルキウス導主のことや今回のスタンピード――いや騒乱罪について知っていれば教えてもらいたいのです。王弟殿下が治められるベルゲンクライにも少なからず影響があったはず。彼女から得られる情報は必ず有益なものになると思います。どうでしょう?」
「……分かりました。第三王子マティアス様の側近のお二方様のご厚意を信じます」
「ええ、お任せください」
クラフト王国の王位継承順位は王弟と第三王子であれば王弟の方が高い。第一王子が皇太子となっていれば第一位になるが、立太子の儀式を経ていない場合は王弟が第一位となる。つまりは王弟と第一王子が場合によって上下するだけで第二王子以降は変わらない。
現在は第一王子テオドールが皇太子となっているので王弟アレクセイが第二位、第三王子のマティアスは第四位となる。
王族の力としては現王以外では純粋に王位継承権が物を言う。しかし家人の少女と側近の騎士では地力が違い過ぎた。ましてや主人たる王弟の領地についてまで持ち出されると反論することも敵わなかった。
この場の決着がついたことを感じたパメラは、申し訳なさそうに少女へ頭を一度下げて二人の騎士と歩き出す。
残された少女はため息を飲みこんでパメラ達とは別の方向へ急いで走り去った。
二人の騎士が馬を寄せて騎乗したのでパメラも馬へ跨った。暫くの間、二人の騎士に挟まれて歩くパメラは、レックスから先程受けた説明とは違う道を進もうとしていることに気づき尋ねる。
「ここを右へ曲がるのでは?」
「ギルドへ直接行くのならそうです。しかしそれでは時間が無駄でしょう」
レックスが穏やかな笑みとともに左手甲を差し出してパメラへと見せた。
「ルキウス関係ならば第三王子マティアス様が直接力をお貸しくださいます。その方が間違いなく早いですよ」
パメラはハイエルフでもまだ年若く世事には長けていない。
クラフト王国のこともほとんど知らないため第三王子とルキウスの関係など全く知らなかった。
「第三王子様とルキウスの関係をお聞きしても?」
「そうですね、ご存知ないのであれば先に知っておいていただいた方がよろしいでしょう」
レックスは物語を聞かせるかのような軽い口調で話を始める。
しかし内容は国家のスキャンダルと言われる非常に重すぎるものであった。
ルキウスは、クラフト王国でも屈指の大貴族たる四大公家の一つ、ハルトマイヤー家の次男として生を受けた。
なお四大公にはベルゲンクライ公の爵位を持つ王弟アレクセイも含まれており、実質クラフト王国は彼らと皇太子たる第一王子テオドールによって運営されている。
第三王子マティアスは、ルキウスの妹であるハルトマイヤー家の末姫エリーサとお互い十四歳で婚約をして十五の成人を迎えて結婚をした。しかし結婚二年目を迎えた当時の二人の間に性交渉がないことは公然の事実だった。
王族の最大の責務は後継者を成すことであり、家人が二人の夜の生活へ目を光らすのも責務の一つである。
深窓の令嬢であるエリーサが恥ずかしがってとの好意的な受け止められ方がなされていたのは初めだけで、何か別の問題があると噂されるのにそう時間は掛からなかった。
ある夜、業を煮やしたマティアスが、頑なに同衾を拒むエリーサを荒縄で縛り上げて強引に事へと及んだ。
十六歳の若い情熱を持て余す彼は王族でもあることから何人もの愛人を持っている。エリーサが相手にしなくても性欲のはけ口はいくらでもある。彼の愛人たちは彼の寵愛を得ようと演技過剰とも思えるほどベッドでは痴態を演じるので、マティアスはかなり食傷気味だった。
だが必死に彼から逃げようとするエリーサを強引に支配をした興奮はこれまでにない快楽を彼に与える。
嫌がる深窓の令嬢への蹂躙行為にマティアスは息を荒げて激しく腰を振る。縛られた豊かな乳房を力の限り揉みしだくたびに目は血走って血流の音が頭を駆け巡る。エリーサはルキウスの名前を小さく呼んで悔しそうに涙を流した。そしてベッドには破瓜の証と考えられている赤い染みはできなかった。
マティアスには裏切られたとの思いと妙な嫉妬心が生まれる。そしてその日から毎夜エリーサの自由を奪って激しく犯し続けた。
家人達もやり過ぎとは感じたものの、これまで一切性交渉がなかったほうが心配であったため二人の仲はとても睦まじいと当主達へ報告をしていた。
エリーサがルキウスの名前を呼ぶことも、兄に大切にされたてきた末の妹姫だからあり得ない話ではないと聞き流された。処女膜が破れても稀に出血しない者がいるため問題にはされなかった。
実際のところルキウスとエリーサが兄妹でありながら結ばれていたのかは不明である。
そしてある冬の晴れた日の午後、エリーサが城の西にある見張り塔から身を投げて自殺をしてしまった。ハルトマイヤー領は王都ウライユールから西方にある。ルキウスはこのことを知るとアーレイ教へ帰依し、貴族籍を自ら捨てたのである。
「はい、レックス様。フィオナ様付きのサラと申します」
「――王弟殿下のご息女付きの方とは意外でした。しかし先程の話を聞いていたのであれば、これは導主ルキウスの関係した案件です。そして我等が主たるマティアス第三王子はルキウスの妹姫を娶っておられた。いわば身内の恥を雪ぐために必要な措置とお考え頂きたい」
「仰る事情は察しております。でもその人は――関係ないと思います」
王弟の家人である少女は、第三王子の側近らしき騎士へ果敢にも反論を試みる。
よく言えば優しそう、悪く言えば軽薄な雰囲気のレックスは困ったような笑みを浮かべ、整った顔で不快さを隠そうとしないアルフレッドはサラを軽く睨んでいる。
騒ぎの中心であるパメラとは関係ないところに話が飛び火してしまい、当のパメラは目を白黒させている。
「直接はそうかもしれません。しかしルキウス導主のことや今回のスタンピード――いや騒乱罪について知っていれば教えてもらいたいのです。王弟殿下が治められるベルゲンクライにも少なからず影響があったはず。彼女から得られる情報は必ず有益なものになると思います。どうでしょう?」
「……分かりました。第三王子マティアス様の側近のお二方様のご厚意を信じます」
「ええ、お任せください」
クラフト王国の王位継承順位は王弟と第三王子であれば王弟の方が高い。第一王子が皇太子となっていれば第一位になるが、立太子の儀式を経ていない場合は王弟が第一位となる。つまりは王弟と第一王子が場合によって上下するだけで第二王子以降は変わらない。
現在は第一王子テオドールが皇太子となっているので王弟アレクセイが第二位、第三王子のマティアスは第四位となる。
王族の力としては現王以外では純粋に王位継承権が物を言う。しかし家人の少女と側近の騎士では地力が違い過ぎた。ましてや主人たる王弟の領地についてまで持ち出されると反論することも敵わなかった。
この場の決着がついたことを感じたパメラは、申し訳なさそうに少女へ頭を一度下げて二人の騎士と歩き出す。
残された少女はため息を飲みこんでパメラ達とは別の方向へ急いで走り去った。
二人の騎士が馬を寄せて騎乗したのでパメラも馬へ跨った。暫くの間、二人の騎士に挟まれて歩くパメラは、レックスから先程受けた説明とは違う道を進もうとしていることに気づき尋ねる。
「ここを右へ曲がるのでは?」
「ギルドへ直接行くのならそうです。しかしそれでは時間が無駄でしょう」
レックスが穏やかな笑みとともに左手甲を差し出してパメラへと見せた。
「ルキウス関係ならば第三王子マティアス様が直接力をお貸しくださいます。その方が間違いなく早いですよ」
パメラはハイエルフでもまだ年若く世事には長けていない。
クラフト王国のこともほとんど知らないため第三王子とルキウスの関係など全く知らなかった。
「第三王子様とルキウスの関係をお聞きしても?」
「そうですね、ご存知ないのであれば先に知っておいていただいた方がよろしいでしょう」
レックスは物語を聞かせるかのような軽い口調で話を始める。
しかし内容は国家のスキャンダルと言われる非常に重すぎるものであった。
ルキウスは、クラフト王国でも屈指の大貴族たる四大公家の一つ、ハルトマイヤー家の次男として生を受けた。
なお四大公にはベルゲンクライ公の爵位を持つ王弟アレクセイも含まれており、実質クラフト王国は彼らと皇太子たる第一王子テオドールによって運営されている。
第三王子マティアスは、ルキウスの妹であるハルトマイヤー家の末姫エリーサとお互い十四歳で婚約をして十五の成人を迎えて結婚をした。しかし結婚二年目を迎えた当時の二人の間に性交渉がないことは公然の事実だった。
王族の最大の責務は後継者を成すことであり、家人が二人の夜の生活へ目を光らすのも責務の一つである。
深窓の令嬢であるエリーサが恥ずかしがってとの好意的な受け止められ方がなされていたのは初めだけで、何か別の問題があると噂されるのにそう時間は掛からなかった。
ある夜、業を煮やしたマティアスが、頑なに同衾を拒むエリーサを荒縄で縛り上げて強引に事へと及んだ。
十六歳の若い情熱を持て余す彼は王族でもあることから何人もの愛人を持っている。エリーサが相手にしなくても性欲のはけ口はいくらでもある。彼の愛人たちは彼の寵愛を得ようと演技過剰とも思えるほどベッドでは痴態を演じるので、マティアスはかなり食傷気味だった。
だが必死に彼から逃げようとするエリーサを強引に支配をした興奮はこれまでにない快楽を彼に与える。
嫌がる深窓の令嬢への蹂躙行為にマティアスは息を荒げて激しく腰を振る。縛られた豊かな乳房を力の限り揉みしだくたびに目は血走って血流の音が頭を駆け巡る。エリーサはルキウスの名前を小さく呼んで悔しそうに涙を流した。そしてベッドには破瓜の証と考えられている赤い染みはできなかった。
マティアスには裏切られたとの思いと妙な嫉妬心が生まれる。そしてその日から毎夜エリーサの自由を奪って激しく犯し続けた。
家人達もやり過ぎとは感じたものの、これまで一切性交渉がなかったほうが心配であったため二人の仲はとても睦まじいと当主達へ報告をしていた。
エリーサがルキウスの名前を呼ぶことも、兄に大切にされたてきた末の妹姫だからあり得ない話ではないと聞き流された。処女膜が破れても稀に出血しない者がいるため問題にはされなかった。
実際のところルキウスとエリーサが兄妹でありながら結ばれていたのかは不明である。
そしてある冬の晴れた日の午後、エリーサが城の西にある見張り塔から身を投げて自殺をしてしまった。ハルトマイヤー領は王都ウライユールから西方にある。ルキウスはこのことを知るとアーレイ教へ帰依し、貴族籍を自ら捨てたのである。
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