鬼の心臓は闇夜に疼く

藤波璃久

文字の大きさ
上 下
37 / 59

旅立ち8(過去編②)

しおりを挟む
「いくぞ」
猿女に連れられて着いたのは、洋風の建物だった。
地下へと続く階段を降り、薄暗い空間にたどり着く。
石造りの寒い部屋だ。
そこで待っていたのは、吉備津桃寿郎だった。
「よく来たね」
「…桃寿郎」
「ここなら思う存分刀を振れる」
「……」
「君はもう完全な鬼になったかな?」
小太郎が、猿女の手から逃げようと暴れると、首輪が締まった。
「ぐあっ!」
小太郎は首輪を外そうともがく。
「カハッ…ハッ…ヒュ…息が…」
「あれ? 呼吸がおかしいみたいだ」
桃寿郎が淡々と言う。小太郎は、意識を失って倒れた。
「あれ? 倒れちゃった。今のうちにトドメさしちゃうか」
桃寿郎が破鬼の剣を小太郎の体に突き刺した。
「ぐぁ‼︎」
一瞬目を覚ました小太郎。血を吐いた後、また意識を失くした。
「あれ?」
刀はまたも穢れた。
「あれれ? まだ人間との中間なんだ」
桃寿郎は小太郎を覗き込む。
「心臓刺したつもりだったけど、ずれちゃったか。半分鬼だからかな、少しずつ傷塞がってくね」
「どうしますか?」
「とりあえず牢屋に閉じこめておいて」
しおりを挟む

処理中です...