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内腿の山百合ーー薄緑の花弁に隠された,蜜の旋律を歌う二人だけの練習曲
第15話:九時の共犯者,九時半の陽光
枕カバーと,脱ぎたてのパジャマを洗濯槽へ放り込む。
午前八時三十分。私は,確信を持って洗濯機のスタートボタンを押した。
標準コースで四十五分。
九時のチャイムが鳴る頃,この機械はまだ,私の孤独を洗い流している真っ最中のはずだ。
ガコン,という低い音と共に水が流れ込み,私の秘密を洗剤の香りで上書きし始めた。
私は,部屋の窓を大きく開け放った。
カーテンを揺らして入り込む初夏の風は,驚くほど乾いていて,私の肌に残る湿った熱を冷酷に暴いていく。
わざとらしく,重いスーツケースを玄関に置いた。
「もう準備はできている」という無言の嘘。
鏡の前で,白のワンピースの襟元を整え,完璧な「後輩」としての自分を完成させる。
ーーピンポン。
予定より五分早く,エントランスのインターホンが鳴った。モニターに映る大輝先輩は,少し申し訳なさそうに微笑んでいる。
「ごめん,陽菜さん。少し早く着きすぎちゃった」
心臓が,跳ねる。
「……いいえ,大丈夫です。今,開けますね」
私は解錠ボタンを押し,彼がエレベーターで上がってくるまでの数十秒間,玄関の鏡の前で立ち尽くした。
私は震える指先で,完璧に整えたはずのワンピースの襟元を,少しだけ,乱暴に緩めた。
……………………………………………………………………………………
二度目のチャイム。部屋のドアを開けると,眩しい光と共に大輝先輩が入ってきた。
「おはよう,陽菜さん。……あ,準備,もう終わってるね。ごめん,急がせちゃったかな」
彼は玄関に置かれたスーツケースを見て,安心したように笑った。
けれど,脱衣所から響く「ガタガタ」という洗濯機の脱水音が,まるで警告のように鳴り響いている。
「……いえ。でも,洗濯機がまだ終わらなくて。上がって,待っててもらえますか?」
私は脱衣所のドアを開けたまま,彼を振り返った。緩めた襟元から,私の落ち着かない鼓動が漏れ出しているのが自分でもわかる。
「なんだか,動いたら汗かいちゃって。……待ってる間に,シャワー,浴びてもいいですか?」
「あと十分で洗濯終わるでしょ? それに……新幹線の時間,大丈夫?」
大輝先輩の問いかけは,どこまでも私を思いやる「正しさ」に満ちていた。
けれど私は,その正しさを裏切るために,潤んだ瞳で彼を見上げた。
「……新幹線,実は十三時なんです。だから,まだ時間はあります。」
自分の声が,湿った空気に溶けていくのが分かった。
ーー嘘じゃない。
けれど,九時の今,それを口にすることは「それまで私をどうしてもいい」という許可証を彼に手渡すのと同じことだ。
「……一緒に,シャワー,浴びませんか?」
私の言葉に,大輝先輩の喉仏が小さく動いた。
彼は抗えない引力に引かれるように,私の方へ一歩踏み出す。
足の裏からは,脱水を終えようとする洗濯機の激しい振動が伝わってきた。
彼は洗濯機へ視線を向け,我に返ったように呼吸を整えようとしている。
その「正しさ」を壊したくてーー。
私は無言で,彼の目の前でワンピースの背中のファスナーを引き下げた。
スルスルと,白い生地が床に落ち,タイルの上に花びらのように重なる。
若草色の上下セットの下着に包まれた私の身体を見て,大輝先輩が息を呑んだ。
「……お願いします」
自分の声が震えているのが分かった。
大輝先輩の瞳に,激しい葛藤が火花のように散る。
けれど次の瞬間,彼は抗うことを諦めたように私を抱き寄せ,その大きな腕で私の肩を,強く包み込んだ。
重なった唇からは,洗剤の清潔な香りと,彼の肺から漏れ出た熱い吐息が混ざり合って届く。
彼の手が私の背中に回り,ブラジャーのホックを探り当てた。
けれど,彼の慣れていないその指は、何度も布地を滑らせ、どうしても小さな金具を外すことができない。
嬉しい、と思った。
同時に、もどかしくて仕方がなかった。早く、この隔たりをすべて無くして、彼の熱に触れたいーー。
ーーピー、ピー、ピー。
その時だった。洗濯終了を告げる無機質な電子音が、間の抜けた音で響き渡る。
大輝先輩の指が、ぴたりと止まる。
「……終わった、みたいだね」
我に返りかけた彼の瞳を逃さないように、そして,そこにある彼の「正しさ」を殺すため,私は迷わず彼の首に腕を回し,その耳元で熱い吐息を吹きかけた。
彼の肩に自分の胸を押し当て,彼の思考を停止させる。
「……干すのは、後でいいです。」
私は彼の手をそっと退け,背中に回した自分の指で、慣れた手つきでホックを弾いた。
カチリ、と小さな音がして、若草色のブラジャーが床に落ちる。
剥き出しになった私のふくらみが、彼の視線に晒されて熱を帯びる。
大輝先輩は、吸い寄せられるように私の前に膝をついた。
彼は震える手で、私の腰に残った若草色のショーツの縁を掴む。
ーーゆっくりと、慈しむように引き下げられていく布地。
目の前に、彼の顔がある。
ショーツが足首まで落ちた瞬間、大輝先輩が小さく、深く、息を吸い込んだ。
「……っ」
(私の匂いを、彼が嗅いでる!)
隠しきれない私自身の淫らな匂いが、彼の肺へと吸い込まれていく。
昨日から溜め込んできた私の熱が,水を含んだ果実のように溢れ出しているのを自分でも自覚して,死んでしまいたいほど恥ずかしかった。
けれど同時に、彼にすべてを暴かれているという事実に、下腹部がジリジリと熱く脈打つのを感じた。
大輝先輩の耳が,真っ赤に染まっている。
「先に……,入ってますね……」
逃げるように浴室へ飛び込み,シャワーを出した。
熱い飛沫が肌を叩く。
流すべき汚れなんてどこにもないのにーー。
私の指先が,彼の「芯」に触れる。
驚くほど硬く,熱い。
彼の大きな手が,私の肩を震えながら掴んでいた。
私はその感触を確かめるように,泡にまみれた指先でゆっくりと,彼のそこをしごき上げた。
「陽菜……さん……っ」
押し殺したような彼の声が,タイルの壁に反響して脳を痺れさせる。
先輩が,苦しそうにーー、けれど快楽に耐えるように私の名前を呼ぶ。
すると,負けじと彼の手が私の胸を滑った。
大きな手のひらが,泡とともに私の控えめなふくらみを包み込む。
彼の指先が,不意に私の乳首に触れた。
「んぁ……っ」
鋭い刺激が背骨を駆け抜け,私の膝がガクリと震える。
彼はそれを支えるようにさらに強く私を抱き寄せ,私たちはどちらからともなく,限界を確かめ合うような深いキスを交わした。
ーー午前九時半。
窓の外では日常が動きはじめたはずなのに,ここはただ,水音と吐息だけが支配する,濃厚な背徳感に満ちた異界だった。
一緒にシャワーを出ると、水滴を拭き切るのももどかしく、私たちは,再び,そして何度もキスを繰り返した。
濡れた髪から滴る水が、胸元を冷たく伝う。
「ベッド……濡らしちゃうね」
大輝先輩のかすれた声に、私は首を振った。
「いいです。……ここで」
私は、湿り気を帯びた厚手のバスタオルを、床に乱暴に広げた。
ふかふかのベッドではなく、硬い床の上に敷かれた一枚の布。
大輝先輩がリュックサックの中から,昨日使ったばかりのコンドームを取り出した。
私は,それを見つめながら少しだけ意地悪く,微笑んでんでみせる。
「……ふふ,入れっぱなしだったんですか?」
「っ、……あ。いや,これは……」
大輝先輩が,あからさまに動揺して視線を泳がせた。
私は彼を逃がさないように,濡れたままの身体を彼に寄せ,上目遣いで問いを重ねる。
「……今日も,するつもりだったんですか?」
「いや,本当に……入れっぱなしだっただけで……」
私は,彼の熱いそこを優しく撫で上げた。
その先端からは透明な液体がじわりと溢れ出し,私の指を濡らしている。
彼がもう限界まで私を欲しがっていることだけは,言葉以上に伝わってきた。
「大輝、先輩……」
「陽菜……さん、もう……」
彼は震える手でリュックから取り出した袋を裂いた。乾いた音が静かな部屋に響く。
鼻を突く,独特のゴムの匂い。
「……つけて、いいかな」
確認するような彼の声は,熱に浮かされたように,かすれていた。
私が無言で頷くと,彼はそれを自分の「芯」へとあてがった。
先端から根元へと,薄い膜が彼の熱を閉じ込めていく。
その一連の動作が,これから始まる「行為」の,逃れられない合図だった。
「……お願いします」
私はバスタオルの上に仰向けになり,自らゆっくりと,足を広げた。
むき出しの,一番恥ずかしい体勢。
九時半の光が,隠したいはずの場所まで容赦なく照らし出す。
大輝先輩の視線が、私のすべてをなぞるように降りてくる。
「……っ、」
彼を受け入れた瞬間、私は短く悲鳴を上げた。
内側を押し広げる衝撃。
けれど、それ以上に背中に走る痛みが私を現実へ引き戻そうとする。
「待って……」
フローリングの硬さが直接背骨を突き上げ、私は逃げるように身をよじった。
「陽菜さん?,痛い?」
「……背中が、痛いの。床が、硬くて……」
大輝先輩は申し訳なさそうに眉を下げると、私を抱き起こした。
「あ……ごめん。……そうだよね,痛いよね」
大輝先輩はひどく申し訳なさそうに眉を下げた。
<だけど,先輩はもっとすごい提案をする>
「……じゃあ,こうしよう」
大輝先輩が私を抱き起こした。
彼は自分は床に膝をついたまま,私を四つん這いの姿勢へと導いていく。
視界から彼の顔が消え,代わりに,バスタオルの端と,フローリングの木目だけが目の前に広がった。
けれど,今度は体重を支える両膝が,薄いバスタオル越しに床の硬さを拾ってじんわりと痛む。
手首にも変な力が入り,私は慣れない格好に戸惑いながら,なんとか姿勢を保った。
視線が床に近づいた瞬間,フローリングの隅に,小さなほこりが落ちているのが見えた。
私にとって,本来なら耐え難い光景のはずだった。
けれど,その「汚れた場所」に今,一番恥ずかしい姿で晒されている事実が,私の背徳感をかえって鋭く研ぎ澄ませていく。
背後から彼の手が伸び,私の背中を,大きな手のひらでゆっくりと撫でた。
「……っ、ん、……ぁ,はやく……」
背骨をなぞる指先の熱に,思わず喉の奥から震えた声が漏れる。
彼にとっても私にとっても,まだこれは「慣れた儀式」ではない。
顔が見えない不安の中,彼の手が私の太ももの内側を撫で,入り口を確かめるように手探りで這う。
大輝先輩の動きは,丁寧ーーけれど,どこか強く,入り口を探り当てる指先も少し,焦っていた。
そしてーー
彼の「芯」が,私の「茂み」を,そしてその奥にある柔らかな粘膜を往復する。
ーーぬ,ちゃ。
静まり返った部屋に,水を含んだ粘膜がこすれ合う,逃げ場のない音が響く。
自覚できるほどにあふれ出した蜜が,彼の動きに合わせて広がり,私たちの境界を溶かしていく。
やがて,私の「容れ物」の入り口に,熱く硬い「芯」の先端が,焦れったいほど何度も場所を探るように迷った末に,ピタリとあてがわれた。
「……ひゃっ、っ……あ、」
脳を直接突かれたような刺激に,私は思わずバスタオルを握りしめた。
これから彼が私の中へ入ってくるのを,直感的に悟った。多分,私の腰を強く掴んでいる彼も,同じことを思っている。
「……陽菜さん」
かすれた声とともに,彼の「芯」は,一気に私の中へ沈み込んできた。
薄い膜に包まれた彼が,力任せに私を押し広げていく。
「……あ、……ぁっ、……ふ、ぅ……」
内側が無理やり作り変えられるような,逃げ場のない圧迫感。
私の身体は,快感よりも先に、内臓を押し上げられるような生理的な恐怖に悲鳴を上げた。
(痛い……、苦しい、っ……)
反射的に腰が引け,私は身体を丸めてその衝撃から逃げようとした。
けれど,大輝先輩の大きな手が私の腰をガシリと固定し,逃げることを許さない。
「ごめん……、陽菜さん、……っ」
彼は苦しそうな吐息を漏らしながら,一度動きを止めた。
その「溜め」の動作が,私の強張った粘膜をじわじわと熱で溶かしていく。
「……ぁ、……っ、……ん、」
痛みが鈍い熱へと変わり,私はようやく、自分の肺に空気が戻ってくるのを感じた。
その熱情の波に背中を押されるように,私は自分でも驚くほど淫らな飢餓感に突き動かされ始めた。
(もっと……もっと奥を,突いてほしい)
「新幹線まで」の時間。
それが,私を狂わせていた。
ーー早く彼をすべて受け入れたい。
私はもう,じっと耐えていることができなかった。
「……ぁ,……っ,ん……」
(あと少し,あと少し,で奥に届くっ)
熱い吐息を漏らしながら,私は自分で,彼のほうへと腰を突き出した。
ーーけれど,「あと少し」では,なかった。
腰をぶつけるようにして迎え入れた瞬間,私は「カハッ」と肺の空気をすべて吐き出した。
呼吸が止まる。
悲鳴さえ出ない。
衝撃で内臓をぐりりと圧迫されるような,未知の激痛に近い刺激。
頭の中のスイッチが強制的に切られたように真っ白になる。
それは快感よりも先に「壊される」という生存本能的な恐怖を呼び起こした。
「……ぁ,……が,……っ……!!」
膝がガクガクと震え,私はたまらず崩れ落ちた。
その拍子に,足元に敷いていたバスタオルが,ぐしゃり,と丸まって足首に絡みつく。
剥き出しになった私の膝と太ももが,冷たいフローリングに直接叩きつけられた。
その硬く冷徹な感触が,今の自分の無様さをこれでもかと強調する。
「陽菜……さん,だいじょ……ぶ?」
背後で,大輝先輩の焦った声が響く。
彼は自分の乱暴さを悔いるように,慌てて私の中から「芯」を引き抜こうとした。
けれど,それは残酷な優しさだった。
引き抜かれる時に粘膜をこすり上げるその摩擦。
その摩擦が,まるで逆流するように,激しい快感となって私を襲ってきた。
「……ぁ,っ,……ぁ!」
ついに彼が抜けきるその瞬間。
彼の「芯」の先端が,私の「出入口」を,内側からぐりりと抉るように引っかけた。
「んっ……,ぁああ……っ!」
逃げ場のないその刺激に,私の両の太ももが激しく痙攣した。
たった一引き。
それだけで,私の身体はもう,自分のものではなくなってしまった。
(行かないで……,もっと……)
ひきつけを起こしたような吐息を漏らし,床に倒れ込んだ私の身体を,慈しむように大きな腕で抱き起こした。
「……陽菜さん、ごめん、……ひどいことして、ごめん」
丸まったタオルごと私を抱きしめ,自らの膝の上に私を座らせる。
「冷たかったよね……、痛かったよね……」
彼の胸の鼓動が,私の背中に直接響く。
床の冷たさとは対照的な,彼の肌。
熱すぎるほどの体温。
大輝先輩は私の肩に顔を埋め,耳元で「大丈夫だよ」と繰り返しながら,私の震えを止めるように強く,強く抱きしめた。
丸まったタオルの上で,彼の体温に包まれながら震える私の背中に,九時半の残酷なほど明るい光が降り注いでいた。
午前八時三十分。私は,確信を持って洗濯機のスタートボタンを押した。
標準コースで四十五分。
九時のチャイムが鳴る頃,この機械はまだ,私の孤独を洗い流している真っ最中のはずだ。
ガコン,という低い音と共に水が流れ込み,私の秘密を洗剤の香りで上書きし始めた。
私は,部屋の窓を大きく開け放った。
カーテンを揺らして入り込む初夏の風は,驚くほど乾いていて,私の肌に残る湿った熱を冷酷に暴いていく。
わざとらしく,重いスーツケースを玄関に置いた。
「もう準備はできている」という無言の嘘。
鏡の前で,白のワンピースの襟元を整え,完璧な「後輩」としての自分を完成させる。
ーーピンポン。
予定より五分早く,エントランスのインターホンが鳴った。モニターに映る大輝先輩は,少し申し訳なさそうに微笑んでいる。
「ごめん,陽菜さん。少し早く着きすぎちゃった」
心臓が,跳ねる。
「……いいえ,大丈夫です。今,開けますね」
私は解錠ボタンを押し,彼がエレベーターで上がってくるまでの数十秒間,玄関の鏡の前で立ち尽くした。
私は震える指先で,完璧に整えたはずのワンピースの襟元を,少しだけ,乱暴に緩めた。
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二度目のチャイム。部屋のドアを開けると,眩しい光と共に大輝先輩が入ってきた。
「おはよう,陽菜さん。……あ,準備,もう終わってるね。ごめん,急がせちゃったかな」
彼は玄関に置かれたスーツケースを見て,安心したように笑った。
けれど,脱衣所から響く「ガタガタ」という洗濯機の脱水音が,まるで警告のように鳴り響いている。
「……いえ。でも,洗濯機がまだ終わらなくて。上がって,待っててもらえますか?」
私は脱衣所のドアを開けたまま,彼を振り返った。緩めた襟元から,私の落ち着かない鼓動が漏れ出しているのが自分でもわかる。
「なんだか,動いたら汗かいちゃって。……待ってる間に,シャワー,浴びてもいいですか?」
「あと十分で洗濯終わるでしょ? それに……新幹線の時間,大丈夫?」
大輝先輩の問いかけは,どこまでも私を思いやる「正しさ」に満ちていた。
けれど私は,その正しさを裏切るために,潤んだ瞳で彼を見上げた。
「……新幹線,実は十三時なんです。だから,まだ時間はあります。」
自分の声が,湿った空気に溶けていくのが分かった。
ーー嘘じゃない。
けれど,九時の今,それを口にすることは「それまで私をどうしてもいい」という許可証を彼に手渡すのと同じことだ。
「……一緒に,シャワー,浴びませんか?」
私の言葉に,大輝先輩の喉仏が小さく動いた。
彼は抗えない引力に引かれるように,私の方へ一歩踏み出す。
足の裏からは,脱水を終えようとする洗濯機の激しい振動が伝わってきた。
彼は洗濯機へ視線を向け,我に返ったように呼吸を整えようとしている。
その「正しさ」を壊したくてーー。
私は無言で,彼の目の前でワンピースの背中のファスナーを引き下げた。
スルスルと,白い生地が床に落ち,タイルの上に花びらのように重なる。
若草色の上下セットの下着に包まれた私の身体を見て,大輝先輩が息を呑んだ。
「……お願いします」
自分の声が震えているのが分かった。
大輝先輩の瞳に,激しい葛藤が火花のように散る。
けれど次の瞬間,彼は抗うことを諦めたように私を抱き寄せ,その大きな腕で私の肩を,強く包み込んだ。
重なった唇からは,洗剤の清潔な香りと,彼の肺から漏れ出た熱い吐息が混ざり合って届く。
彼の手が私の背中に回り,ブラジャーのホックを探り当てた。
けれど,彼の慣れていないその指は、何度も布地を滑らせ、どうしても小さな金具を外すことができない。
嬉しい、と思った。
同時に、もどかしくて仕方がなかった。早く、この隔たりをすべて無くして、彼の熱に触れたいーー。
ーーピー、ピー、ピー。
その時だった。洗濯終了を告げる無機質な電子音が、間の抜けた音で響き渡る。
大輝先輩の指が、ぴたりと止まる。
「……終わった、みたいだね」
我に返りかけた彼の瞳を逃さないように、そして,そこにある彼の「正しさ」を殺すため,私は迷わず彼の首に腕を回し,その耳元で熱い吐息を吹きかけた。
彼の肩に自分の胸を押し当て,彼の思考を停止させる。
「……干すのは、後でいいです。」
私は彼の手をそっと退け,背中に回した自分の指で、慣れた手つきでホックを弾いた。
カチリ、と小さな音がして、若草色のブラジャーが床に落ちる。
剥き出しになった私のふくらみが、彼の視線に晒されて熱を帯びる。
大輝先輩は、吸い寄せられるように私の前に膝をついた。
彼は震える手で、私の腰に残った若草色のショーツの縁を掴む。
ーーゆっくりと、慈しむように引き下げられていく布地。
目の前に、彼の顔がある。
ショーツが足首まで落ちた瞬間、大輝先輩が小さく、深く、息を吸い込んだ。
「……っ」
(私の匂いを、彼が嗅いでる!)
隠しきれない私自身の淫らな匂いが、彼の肺へと吸い込まれていく。
昨日から溜め込んできた私の熱が,水を含んだ果実のように溢れ出しているのを自分でも自覚して,死んでしまいたいほど恥ずかしかった。
けれど同時に、彼にすべてを暴かれているという事実に、下腹部がジリジリと熱く脈打つのを感じた。
大輝先輩の耳が,真っ赤に染まっている。
「先に……,入ってますね……」
逃げるように浴室へ飛び込み,シャワーを出した。
熱い飛沫が肌を叩く。
流すべき汚れなんてどこにもないのにーー。
私の指先が,彼の「芯」に触れる。
驚くほど硬く,熱い。
彼の大きな手が,私の肩を震えながら掴んでいた。
私はその感触を確かめるように,泡にまみれた指先でゆっくりと,彼のそこをしごき上げた。
「陽菜……さん……っ」
押し殺したような彼の声が,タイルの壁に反響して脳を痺れさせる。
先輩が,苦しそうにーー、けれど快楽に耐えるように私の名前を呼ぶ。
すると,負けじと彼の手が私の胸を滑った。
大きな手のひらが,泡とともに私の控えめなふくらみを包み込む。
彼の指先が,不意に私の乳首に触れた。
「んぁ……っ」
鋭い刺激が背骨を駆け抜け,私の膝がガクリと震える。
彼はそれを支えるようにさらに強く私を抱き寄せ,私たちはどちらからともなく,限界を確かめ合うような深いキスを交わした。
ーー午前九時半。
窓の外では日常が動きはじめたはずなのに,ここはただ,水音と吐息だけが支配する,濃厚な背徳感に満ちた異界だった。
一緒にシャワーを出ると、水滴を拭き切るのももどかしく、私たちは,再び,そして何度もキスを繰り返した。
濡れた髪から滴る水が、胸元を冷たく伝う。
「ベッド……濡らしちゃうね」
大輝先輩のかすれた声に、私は首を振った。
「いいです。……ここで」
私は、湿り気を帯びた厚手のバスタオルを、床に乱暴に広げた。
ふかふかのベッドではなく、硬い床の上に敷かれた一枚の布。
大輝先輩がリュックサックの中から,昨日使ったばかりのコンドームを取り出した。
私は,それを見つめながら少しだけ意地悪く,微笑んでんでみせる。
「……ふふ,入れっぱなしだったんですか?」
「っ、……あ。いや,これは……」
大輝先輩が,あからさまに動揺して視線を泳がせた。
私は彼を逃がさないように,濡れたままの身体を彼に寄せ,上目遣いで問いを重ねる。
「……今日も,するつもりだったんですか?」
「いや,本当に……入れっぱなしだっただけで……」
私は,彼の熱いそこを優しく撫で上げた。
その先端からは透明な液体がじわりと溢れ出し,私の指を濡らしている。
彼がもう限界まで私を欲しがっていることだけは,言葉以上に伝わってきた。
「大輝、先輩……」
「陽菜……さん、もう……」
彼は震える手でリュックから取り出した袋を裂いた。乾いた音が静かな部屋に響く。
鼻を突く,独特のゴムの匂い。
「……つけて、いいかな」
確認するような彼の声は,熱に浮かされたように,かすれていた。
私が無言で頷くと,彼はそれを自分の「芯」へとあてがった。
先端から根元へと,薄い膜が彼の熱を閉じ込めていく。
その一連の動作が,これから始まる「行為」の,逃れられない合図だった。
「……お願いします」
私はバスタオルの上に仰向けになり,自らゆっくりと,足を広げた。
むき出しの,一番恥ずかしい体勢。
九時半の光が,隠したいはずの場所まで容赦なく照らし出す。
大輝先輩の視線が、私のすべてをなぞるように降りてくる。
「……っ、」
彼を受け入れた瞬間、私は短く悲鳴を上げた。
内側を押し広げる衝撃。
けれど、それ以上に背中に走る痛みが私を現実へ引き戻そうとする。
「待って……」
フローリングの硬さが直接背骨を突き上げ、私は逃げるように身をよじった。
「陽菜さん?,痛い?」
「……背中が、痛いの。床が、硬くて……」
大輝先輩は申し訳なさそうに眉を下げると、私を抱き起こした。
「あ……ごめん。……そうだよね,痛いよね」
大輝先輩はひどく申し訳なさそうに眉を下げた。
<だけど,先輩はもっとすごい提案をする>
「……じゃあ,こうしよう」
大輝先輩が私を抱き起こした。
彼は自分は床に膝をついたまま,私を四つん這いの姿勢へと導いていく。
視界から彼の顔が消え,代わりに,バスタオルの端と,フローリングの木目だけが目の前に広がった。
けれど,今度は体重を支える両膝が,薄いバスタオル越しに床の硬さを拾ってじんわりと痛む。
手首にも変な力が入り,私は慣れない格好に戸惑いながら,なんとか姿勢を保った。
視線が床に近づいた瞬間,フローリングの隅に,小さなほこりが落ちているのが見えた。
私にとって,本来なら耐え難い光景のはずだった。
けれど,その「汚れた場所」に今,一番恥ずかしい姿で晒されている事実が,私の背徳感をかえって鋭く研ぎ澄ませていく。
背後から彼の手が伸び,私の背中を,大きな手のひらでゆっくりと撫でた。
「……っ、ん、……ぁ,はやく……」
背骨をなぞる指先の熱に,思わず喉の奥から震えた声が漏れる。
彼にとっても私にとっても,まだこれは「慣れた儀式」ではない。
顔が見えない不安の中,彼の手が私の太ももの内側を撫で,入り口を確かめるように手探りで這う。
大輝先輩の動きは,丁寧ーーけれど,どこか強く,入り口を探り当てる指先も少し,焦っていた。
そしてーー
彼の「芯」が,私の「茂み」を,そしてその奥にある柔らかな粘膜を往復する。
ーーぬ,ちゃ。
静まり返った部屋に,水を含んだ粘膜がこすれ合う,逃げ場のない音が響く。
自覚できるほどにあふれ出した蜜が,彼の動きに合わせて広がり,私たちの境界を溶かしていく。
やがて,私の「容れ物」の入り口に,熱く硬い「芯」の先端が,焦れったいほど何度も場所を探るように迷った末に,ピタリとあてがわれた。
「……ひゃっ、っ……あ、」
脳を直接突かれたような刺激に,私は思わずバスタオルを握りしめた。
これから彼が私の中へ入ってくるのを,直感的に悟った。多分,私の腰を強く掴んでいる彼も,同じことを思っている。
「……陽菜さん」
かすれた声とともに,彼の「芯」は,一気に私の中へ沈み込んできた。
薄い膜に包まれた彼が,力任せに私を押し広げていく。
「……あ、……ぁっ、……ふ、ぅ……」
内側が無理やり作り変えられるような,逃げ場のない圧迫感。
私の身体は,快感よりも先に、内臓を押し上げられるような生理的な恐怖に悲鳴を上げた。
(痛い……、苦しい、っ……)
反射的に腰が引け,私は身体を丸めてその衝撃から逃げようとした。
けれど,大輝先輩の大きな手が私の腰をガシリと固定し,逃げることを許さない。
「ごめん……、陽菜さん、……っ」
彼は苦しそうな吐息を漏らしながら,一度動きを止めた。
その「溜め」の動作が,私の強張った粘膜をじわじわと熱で溶かしていく。
「……ぁ、……っ、……ん、」
痛みが鈍い熱へと変わり,私はようやく、自分の肺に空気が戻ってくるのを感じた。
その熱情の波に背中を押されるように,私は自分でも驚くほど淫らな飢餓感に突き動かされ始めた。
(もっと……もっと奥を,突いてほしい)
「新幹線まで」の時間。
それが,私を狂わせていた。
ーー早く彼をすべて受け入れたい。
私はもう,じっと耐えていることができなかった。
「……ぁ,……っ,ん……」
(あと少し,あと少し,で奥に届くっ)
熱い吐息を漏らしながら,私は自分で,彼のほうへと腰を突き出した。
ーーけれど,「あと少し」では,なかった。
腰をぶつけるようにして迎え入れた瞬間,私は「カハッ」と肺の空気をすべて吐き出した。
呼吸が止まる。
悲鳴さえ出ない。
衝撃で内臓をぐりりと圧迫されるような,未知の激痛に近い刺激。
頭の中のスイッチが強制的に切られたように真っ白になる。
それは快感よりも先に「壊される」という生存本能的な恐怖を呼び起こした。
「……ぁ,……が,……っ……!!」
膝がガクガクと震え,私はたまらず崩れ落ちた。
その拍子に,足元に敷いていたバスタオルが,ぐしゃり,と丸まって足首に絡みつく。
剥き出しになった私の膝と太ももが,冷たいフローリングに直接叩きつけられた。
その硬く冷徹な感触が,今の自分の無様さをこれでもかと強調する。
「陽菜……さん,だいじょ……ぶ?」
背後で,大輝先輩の焦った声が響く。
彼は自分の乱暴さを悔いるように,慌てて私の中から「芯」を引き抜こうとした。
けれど,それは残酷な優しさだった。
引き抜かれる時に粘膜をこすり上げるその摩擦。
その摩擦が,まるで逆流するように,激しい快感となって私を襲ってきた。
「……ぁ,っ,……ぁ!」
ついに彼が抜けきるその瞬間。
彼の「芯」の先端が,私の「出入口」を,内側からぐりりと抉るように引っかけた。
「んっ……,ぁああ……っ!」
逃げ場のないその刺激に,私の両の太ももが激しく痙攣した。
たった一引き。
それだけで,私の身体はもう,自分のものではなくなってしまった。
(行かないで……,もっと……)
ひきつけを起こしたような吐息を漏らし,床に倒れ込んだ私の身体を,慈しむように大きな腕で抱き起こした。
「……陽菜さん、ごめん、……ひどいことして、ごめん」
丸まったタオルごと私を抱きしめ,自らの膝の上に私を座らせる。
「冷たかったよね……、痛かったよね……」
彼の胸の鼓動が,私の背中に直接響く。
床の冷たさとは対照的な,彼の肌。
熱すぎるほどの体温。
大輝先輩は私の肩に顔を埋め,耳元で「大丈夫だよ」と繰り返しながら,私の震えを止めるように強く,強く抱きしめた。
丸まったタオルの上で,彼の体温に包まれながら震える私の背中に,九時半の残酷なほど明るい光が降り注いでいた。
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