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0回目〈2〉side Y
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次の日、学校に行くのが怖くて、私は初めてズル休みをしてしまった。パパも昨日の今日だから
「無理しなくていい。」
と言ってくれたのだ。
今日は金曜日。今日休んでしまえば土日になるので気が楽だった。
パパが仕事に行くのを見送って、居間のソファにごろんと寝そべる。
棚の上のデジタル時計には『2010年10月14日•FRI』と表示されている。
テレビを付けたらママの好きな韓国ドラマが映った。女の人が事故に遭って記憶喪失になって、恋人の事がわからなくなって、恋人役のちょっと塩顔のイケメンが何か叫んでいる。それをフライドチキンを食べながら知らないおじさんが見ている。
ドラマの合間合間では、通販番組がやっている。
今日はノンフライヤーを紹介しているみたいだ。
油がなくても美味しいポテトフライが揚げられるらしい。本当にそれって美味しいのかな?
平和だなぁ。なんだか、この一か月のことが嘘のようだ。ぼーっとこの先のことを考える。
この街に来てもうすぐ3年。多分2月にはパパに辞令が出て、4月にはこの街から引っ越しすることになる。
冬休みもあるから、あと4か月弱我慢すればもうあの教室に行かなくてもいい。
清々する。でも、村永君に会えなくなるのは寂しいなぁ。そんなに沢山話したわけではないけれど。
そのままウトウトしていたら、いつの間にかソファで眠ってしまった。
◇◇◇
お昼過ぎに目が覚めて、冷凍ご飯をチンして上にキムチとチーズと納豆をのせてモソモソ食べた。ついでに野菜がないからトマトジュースを飲んだ。
そのあと、
(あー、丁度下校時間だな。クラスの子に会いたくないから絶対家から出ないようにしよう。)
なんて思いながら、通信教育で送られてきたプリントで勉強していたら玄関のチャイムが鳴った。
「ピンポーン。」
誰だろうと思いながらインターホンを覗き込むと、村永くんが立っていた。
(え、嘘嘘嘘!なんで?!)
慌ててドアを開けると、ちょっと緊張した顔で、
「松川、体調大丈夫?今日のノート持ってきた。」
と言われた。
お礼を言おうと思って口を開きかけたらそのままガバッと頭を下げられた。
「ごめん!俺、よかれと思って女子が変な手紙回したことチクったんだけど、まさかあんな大事になるなんて。親にまで知らされて、嫌だったんじゃないかなって。」
思わずキョトンとしてしまう。それでも村永君は止まらない。
「今日、学校に来なかったし凄い傷つけちゃったんじゃないかって、、」
結構大きな声で玄関で土下座する勢いで捲し立てる村永くんについ焦ってしまった。
「わー、わー、ちょっと待って!大丈夫だから!っていうか、同じマンションに学校の子もいるし、見られちゃうかも!良かったら入る?」
「え?いいの。」
「うん!いいから!早く入って!」
こうして意図せずつい村永くんを家に入れてしまった。
◇◇◇
「はい。どうぞ。」
机の上には麦茶のコップが二つと木のお皿にのったカンガルーのマーチとポテチと平家パイ。
さっきキムチと納豆を食べてしまったのでお菓子を用意しながらさりげなくミントのタブレットをモグモグした。
「頂きます、、」
そう言って村永くんはお菓子に手を伸ばす。
ぱりぽりぱりぽり。お菓子の咀嚼音が響く。勢い余って家に入れちゃったけどちょっと気まずい。
さっき必死で謝ろうとしてくれていたけれど、勢いも削がれてしまったようだ。
「えーっと、さっきのことだけど。」
そう切り出すと、
「ぶほっ。そ、そうだ、俺…、」
ちょっとむせそうになりながら返事をしてくれた。
「大丈夫、気にしてないよ。むしろ、私のこと気にかけてくれてありがとう。」
「いや、、なんていうか、ごめん。本当はもっとうまくやりたかったんだけど。」
なんだか村永君は落ち込んでいた。
「だからいいってば!むしろ、皆が無視する中で村永くんが助けてくれて。具合悪い時も声かけてくれたし、私凄い嬉しかった。」
そう、本当に嬉しかった。だから、私はそれだけで十分。
「そ、そう?具合悪そうだったから人呼んだだけだし、あの時俺、あんまり役に立ってなかったような。」
「村永君が助けてくれなかったら私あの時息が吸えなくて死んじゃうかと思った。本当に、本当にありがとう。」
あの後から、ちゃんと私、息が吸えるようになった。
「えー、いや、なんかその。ど、どういたしまして?」
ふと見たら、村永君の耳が真っ赤になっていた。
「ふふ!」
なんだか可愛い。
「えー、笑うところあった?」
「なんか村永君に会えて元気出た!」
「そ、そう?まあ、それなら良かったけど。あ!授業のノート、渡すの忘れてた。ほら、これ。」
そう言ってちょっと角張った丁寧な字で書かれたノートを差し出した。
「ありがとう。えっと、、もし用事とかなければもう少ししたらコンビニでコピーしてきてもいいかな?今だと、誰かに会っちゃうのがなんとなく嫌で。」
窓の外を見ると結構まだランドセルを背負った小学生が歩いていた。
「全然いいよ!どうしよう、俺、どっかで時間潰してきた方が良い?」
「いや、うちで待ってて問題ないけど。」
「無理しなくていい。」
と言ってくれたのだ。
今日は金曜日。今日休んでしまえば土日になるので気が楽だった。
パパが仕事に行くのを見送って、居間のソファにごろんと寝そべる。
棚の上のデジタル時計には『2010年10月14日•FRI』と表示されている。
テレビを付けたらママの好きな韓国ドラマが映った。女の人が事故に遭って記憶喪失になって、恋人の事がわからなくなって、恋人役のちょっと塩顔のイケメンが何か叫んでいる。それをフライドチキンを食べながら知らないおじさんが見ている。
ドラマの合間合間では、通販番組がやっている。
今日はノンフライヤーを紹介しているみたいだ。
油がなくても美味しいポテトフライが揚げられるらしい。本当にそれって美味しいのかな?
平和だなぁ。なんだか、この一か月のことが嘘のようだ。ぼーっとこの先のことを考える。
この街に来てもうすぐ3年。多分2月にはパパに辞令が出て、4月にはこの街から引っ越しすることになる。
冬休みもあるから、あと4か月弱我慢すればもうあの教室に行かなくてもいい。
清々する。でも、村永君に会えなくなるのは寂しいなぁ。そんなに沢山話したわけではないけれど。
そのままウトウトしていたら、いつの間にかソファで眠ってしまった。
◇◇◇
お昼過ぎに目が覚めて、冷凍ご飯をチンして上にキムチとチーズと納豆をのせてモソモソ食べた。ついでに野菜がないからトマトジュースを飲んだ。
そのあと、
(あー、丁度下校時間だな。クラスの子に会いたくないから絶対家から出ないようにしよう。)
なんて思いながら、通信教育で送られてきたプリントで勉強していたら玄関のチャイムが鳴った。
「ピンポーン。」
誰だろうと思いながらインターホンを覗き込むと、村永くんが立っていた。
(え、嘘嘘嘘!なんで?!)
慌ててドアを開けると、ちょっと緊張した顔で、
「松川、体調大丈夫?今日のノート持ってきた。」
と言われた。
お礼を言おうと思って口を開きかけたらそのままガバッと頭を下げられた。
「ごめん!俺、よかれと思って女子が変な手紙回したことチクったんだけど、まさかあんな大事になるなんて。親にまで知らされて、嫌だったんじゃないかなって。」
思わずキョトンとしてしまう。それでも村永君は止まらない。
「今日、学校に来なかったし凄い傷つけちゃったんじゃないかって、、」
結構大きな声で玄関で土下座する勢いで捲し立てる村永くんについ焦ってしまった。
「わー、わー、ちょっと待って!大丈夫だから!っていうか、同じマンションに学校の子もいるし、見られちゃうかも!良かったら入る?」
「え?いいの。」
「うん!いいから!早く入って!」
こうして意図せずつい村永くんを家に入れてしまった。
◇◇◇
「はい。どうぞ。」
机の上には麦茶のコップが二つと木のお皿にのったカンガルーのマーチとポテチと平家パイ。
さっきキムチと納豆を食べてしまったのでお菓子を用意しながらさりげなくミントのタブレットをモグモグした。
「頂きます、、」
そう言って村永くんはお菓子に手を伸ばす。
ぱりぽりぱりぽり。お菓子の咀嚼音が響く。勢い余って家に入れちゃったけどちょっと気まずい。
さっき必死で謝ろうとしてくれていたけれど、勢いも削がれてしまったようだ。
「えーっと、さっきのことだけど。」
そう切り出すと、
「ぶほっ。そ、そうだ、俺…、」
ちょっとむせそうになりながら返事をしてくれた。
「大丈夫、気にしてないよ。むしろ、私のこと気にかけてくれてありがとう。」
「いや、、なんていうか、ごめん。本当はもっとうまくやりたかったんだけど。」
なんだか村永君は落ち込んでいた。
「だからいいってば!むしろ、皆が無視する中で村永くんが助けてくれて。具合悪い時も声かけてくれたし、私凄い嬉しかった。」
そう、本当に嬉しかった。だから、私はそれだけで十分。
「そ、そう?具合悪そうだったから人呼んだだけだし、あの時俺、あんまり役に立ってなかったような。」
「村永君が助けてくれなかったら私あの時息が吸えなくて死んじゃうかと思った。本当に、本当にありがとう。」
あの後から、ちゃんと私、息が吸えるようになった。
「えー、いや、なんかその。ど、どういたしまして?」
ふと見たら、村永君の耳が真っ赤になっていた。
「ふふ!」
なんだか可愛い。
「えー、笑うところあった?」
「なんか村永君に会えて元気出た!」
「そ、そう?まあ、それなら良かったけど。あ!授業のノート、渡すの忘れてた。ほら、これ。」
そう言ってちょっと角張った丁寧な字で書かれたノートを差し出した。
「ありがとう。えっと、、もし用事とかなければもう少ししたらコンビニでコピーしてきてもいいかな?今だと、誰かに会っちゃうのがなんとなく嫌で。」
窓の外を見ると結構まだランドセルを背負った小学生が歩いていた。
「全然いいよ!どうしよう、俺、どっかで時間潰してきた方が良い?」
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