君を好きになるなんて絶対にありえない!

ジャック

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1章

第9話Side北風真美

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名前を知りたかったので、勘で名前を言ってみた。違うならば、反論して自分の名前を言うだろうから。

「ねぇ、山本君だけ?」
「…違う」
「んじゃあ、教えてよ。名前」
「嫌だ」
「なんでよ!?」

「…知らない人には名前を言わないって教わらなかったのか?」

衝撃である。全く見知らぬ人ならともかく同じ学校の生徒なら名前を教えるのは問題ないだろう。小学生が言いそうな反論だ…
しかも「あなたが嫌いです」と言わんばかりの顔と雰囲気だ!

けれども私は負けない。反論してやる!

「んじゃあ、私は2年5組の北風真美。はい言った。あなたは?」

「…6組の荒木だ」
荒木くん…か。聞いた事があるようなないような…下の名前言ってくれなかったけど、組を言ってくれたのですぐ特定できるだろう。

「そっか…荒木くんね。おっけ。さっきは名前間違えてごめんね?本当に知らなかったから適当に言ってみたの」

今度は荒木くんは、傷ついたような表情をして、また私への嫌悪感を出した。それにしても、彼の表情はわかりやすい…
それに前髪が長くて顔がよく見えないのに。
 
気になったので、彼の顔を見ることにする!

「そんな顔しないでさぁ、もうちょっと笑ったら?ほら、髪とか上げたら…」

「ちょ…やめろって!」

そうして見た顔は…かなりのイケメンだった。ちゃんと整えれば男前になるだろう。ちょっと私好みの顔をしていた。

会話をしたいが、私から話題を出しても荒木くんのことだから、
「あぁ」、「そうか」しか言わないだろう。だから彼から話題を出す必要があると私は感じた。なので、


「んじゃ~さぁ、話題提供してよ」

「はぁ!?」

「いや、こういうのって男から話しかけるもんじゃない?」
単刀直入に言ってやることにした。そして、強行手段にでる。


「んじゃあ、なにか聞きたいことはない?私に。今ならなんでも答えてあげるよォ?」

「ほらほらー、なーんでもいいんだよぉ?スリーサイズでも彼氏いるの?とかでも」

これなら彼から話題を振らざるをえないし、隣のクラスなら私が有名なことは知っているだろう。いくら私が嫌いとはいえ、こんなチャンスはない。泣いていた理由を聞くかもしれない。私の最新情報知って、男子に伝えれば人気にもなれるだろう。

…今まで見てきた男と同じ反応をするだろう。そう思った。

しかし、


「…はぁ。…嫌いな食べ物は何?」


またしても衝撃的だった!可愛い女の子に、なんでも聞いていいよって言われて聞きたいのが「嫌いな食べ物は何?」だ。
しかも、「嫌いな」の部分は強調して。

これにはさすがに笑った。呆れた、なんて感じられなかった。
変なやつ…だけど今までの男とは違う気がした。私を嫌っているのだとしても、

「私」を見てくれる気がした。

受け答えも、しっかりしてくれた。
そして、ふと彼がどうしてあそこにいたのかを聞いた。まぁ、これは少し気になっていた。聞いた時は笑った。携帯を忘れるなんてあるのかなぁ…

そこからもしかすると、私があそこにいた理由を聞くかもしれない。聞きやすい状態を作った。語りたくはないが、聞かれたら素直に答えようとは思っていたから。

でも、彼は最後まで聞くことはなかった。

とても優しい人なんだな… 

純粋にそう思った。  

そうこうしているうちに、ホテルが見えてきた。

まだ話していたかった。


「お、見えたぞ。ホテルだ。ようやく戻ってこれたな。」

「そうだね~。でも、まだ着くまで時間あるからさぁ、質問タイムを続けようよ♪次は荒木くんが質問する番ね。」

最後だろうとおもった。だから、どんな質問が来るのかドキドキしていた。

「マミって、どんな漢字なんだ?」

これを聞いた時はまた笑いそうになった。そんなの後で誰かに聞けばわかるどうでもいい質問だったからだ。 

でも不思議と彼らしいとおもった。

でそんなことより嬉しかったのは、  


「…名前…初めて呼んだね…」

そう。彼が私の名前を読んでくれたことだ。とても嬉しかった。
今まで名前を呼ばれてもそんなこと感じたことがないのに…

「ふふっ、あーっと漢字だけ?えっと真実の真に美しいって書いて真美」

「あぁ、なるほどピッタリだな。」

ピッタリ?どういうことだろう?今までそんなことを1度も言われたことがなかったので意味がわからなかった。どうしても気になるので聞いた。


「?なんで?」




「いや、だって、そうだろう?まことに美しいって北風にピッタリじゃないか?」


  

本日1番の衝撃だった。そんなこと初めて言われた。顔が熱い。
きっと耳の先まで真っ赤になっていることだろう。

きっと、荒木くん以外がそう言ってもこんなふうにはならなかったと思う。

彼が何も飾らず、私の目を見て、「私」自身を見て、純粋に感じたことをありのままで伝えてくれたからだと思う。


でも、こんな顔を見られたくないし、今は目も合わせることが難しい。

どうしよう…

そう思っていたら

「いいご身分だな。遅刻した上に教師に電話しないで2人揃って談笑しながら歩いて帰って来るとはよォ」

「わっ!!」
驚いたが助かった…
それにしても鬼山先生に見つかったかぁ。時間は5時をとっくに越していた。

「ち、違うんですよ!先生!俺が迷っていたら、北風さんが助けてくれたんですよ!それで…」

「経緯は後でたっぷり聞くから安心しろ。弁明もな。そこで待ってろぉ!探している先生を呼ぶからな!」

彼が弁明しようとしていたが、無理だった。先生が来て怒られた時も、道に迷った彼を偶然私が見つけて、ここまでの道を教えてくれた、ということで説明していた。

私と居たということが噂になるのを嫌ったのかもしれない。

ただ何となく、私といるところが噂になっても、にバレないようにしていたように思った。

荒木くんはカッコよくて、優しくて、ちょっと可愛い。そんな今まで出会った男とは違う不思議な人だった。

不思議とあんな出来事があったことを忘れ、ただ、

「彼と仲良くなりたい─」

そう切実に願った─
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