3 / 16
鉢の食卓
しおりを挟む
食堂に着くと、既に家族達が揃って席に着いていた。
扉の正面、長机を挟んで最も上座に座るのが、私の父でありガストン王国の国王であるゴトフリード・ミーティア・ガストン。
赤黒い肌に曲がりくねった羊の角を生やした、堂々たる偉丈夫だ。
入室した私を見た父王ガストンは、その強面をグニャグニャに崩して口を開いた。
「おはよう、ワシの可愛いコルネット!今日も黒光りして調子が良さそうだ!」
「おはようございます。鉢の調子はいつも通りよ、お父様」
その隣に座るのは、艶やかなルビーレッドの髪を高く結い上げた妖艶な美女。
背中に生えたコウモリのような翼をゆらりと揺らしたサキュバスは、私の母でありガストン王国王妃のリリア・ミーティア・ガストンだ。
「おはよう、コルネ。いい朝ね」
「おはようございます、お母様」
両親に挨拶をすると、私は兄弟姉妹に軽く会釈をして席に着いた。
二人の兄達はそれぞれ年の順に上座から並んでおり、既に嫁いだ姉を除く二人目の姉と妹の間に挟まれる位置だ。
私が席に着くとすぐに食事が運ばれてきた。
紫色の湯気の立つスープを味わっていると、隣の妹がこちらをみて馬鹿にしたように笑って小声で囁いてきた。
「今日も重たそうな鉢ですわね。なんて可哀想なお姉様!そんな不細工な姿に産まれるなんて、なにかの呪いとしか考えられませんわね!っふくく!いつ見ても愉快だわ」
「うるさい、チビ」
私は妹に一瞥をくれると、ボソリと言い捨てた。はたから見れば鉢が回転したようにしか見えないだろうが。
私の妹とである、チビーーリリアナは、お母様にそっくりの美貌の幼女である。こいつは何故かしょっちゅう私に絡んでくるので本当に鬱陶しい。
「なっーー!」
「黙れ」
リリアナが顔を真っ赤にして今にも叫び出しそうだったので、その口にパンをいっぱいに突っ込んでやった。
真っ赤になったまま、モゴモゴとパンを頬張るリリアナ。
「ふん……リスみたい」
「!」
ますます顔を赤くしたリリアナは、ようやく静かになった。
はあ、全く毎朝毎朝、うるさい妹だ。
真っ赤なソーセージを頬張っていると、今度は逆隣の姉、リンネに声を掛けられた。
「いつ見ても不思議な鉢ねえ。被ったまま食事が出来るってすごいわよね」
「はあ……」
そんな、改めて感心されても反応に困る。
私の頭の天辺から顎までを覆うこの鉢はバケツのように広がっているので、食べ物を口に運ぶスペースは十分にあるのだ。
グラスがガツンガツン当たるのでコップが使えないのが難点だが、父の誂えた特製のストローがあるので問題ない。
見慣れているはずの鉢について、何故いきなりそんな感想を持ったのかはわからないが、もともとどこかすっとぼけた所のある姉のことなので、深く考えても仕方ない。
案の定、リンネはもうどうでも良さそうな顔で、父に似た角を揺らしながらソーセージを頬張っていた。
残る家族の兄二人ーーカイとアルは黙々と朝食を口に運んでいる。
……いや、長兄であるカイはほとんど寝てるな。一応口を動かしているが、父に似た巨体がいまにも後ろに倒れ込みそうだ。
次兄ーーアルは、親の仇でも見るような険しい顔つきでサラダを睨みつけている。その美貌と相まってかなり恐ろしいが、サラダになにか恨みでもあるのだろうか。
鉢越しにそれをぼんやり眺めながら、私はマンドラゴラのサラダを咀嚼した。
扉の正面、長机を挟んで最も上座に座るのが、私の父でありガストン王国の国王であるゴトフリード・ミーティア・ガストン。
赤黒い肌に曲がりくねった羊の角を生やした、堂々たる偉丈夫だ。
入室した私を見た父王ガストンは、その強面をグニャグニャに崩して口を開いた。
「おはよう、ワシの可愛いコルネット!今日も黒光りして調子が良さそうだ!」
「おはようございます。鉢の調子はいつも通りよ、お父様」
その隣に座るのは、艶やかなルビーレッドの髪を高く結い上げた妖艶な美女。
背中に生えたコウモリのような翼をゆらりと揺らしたサキュバスは、私の母でありガストン王国王妃のリリア・ミーティア・ガストンだ。
「おはよう、コルネ。いい朝ね」
「おはようございます、お母様」
両親に挨拶をすると、私は兄弟姉妹に軽く会釈をして席に着いた。
二人の兄達はそれぞれ年の順に上座から並んでおり、既に嫁いだ姉を除く二人目の姉と妹の間に挟まれる位置だ。
私が席に着くとすぐに食事が運ばれてきた。
紫色の湯気の立つスープを味わっていると、隣の妹がこちらをみて馬鹿にしたように笑って小声で囁いてきた。
「今日も重たそうな鉢ですわね。なんて可哀想なお姉様!そんな不細工な姿に産まれるなんて、なにかの呪いとしか考えられませんわね!っふくく!いつ見ても愉快だわ」
「うるさい、チビ」
私は妹に一瞥をくれると、ボソリと言い捨てた。はたから見れば鉢が回転したようにしか見えないだろうが。
私の妹とである、チビーーリリアナは、お母様にそっくりの美貌の幼女である。こいつは何故かしょっちゅう私に絡んでくるので本当に鬱陶しい。
「なっーー!」
「黙れ」
リリアナが顔を真っ赤にして今にも叫び出しそうだったので、その口にパンをいっぱいに突っ込んでやった。
真っ赤になったまま、モゴモゴとパンを頬張るリリアナ。
「ふん……リスみたい」
「!」
ますます顔を赤くしたリリアナは、ようやく静かになった。
はあ、全く毎朝毎朝、うるさい妹だ。
真っ赤なソーセージを頬張っていると、今度は逆隣の姉、リンネに声を掛けられた。
「いつ見ても不思議な鉢ねえ。被ったまま食事が出来るってすごいわよね」
「はあ……」
そんな、改めて感心されても反応に困る。
私の頭の天辺から顎までを覆うこの鉢はバケツのように広がっているので、食べ物を口に運ぶスペースは十分にあるのだ。
グラスがガツンガツン当たるのでコップが使えないのが難点だが、父の誂えた特製のストローがあるので問題ない。
見慣れているはずの鉢について、何故いきなりそんな感想を持ったのかはわからないが、もともとどこかすっとぼけた所のある姉のことなので、深く考えても仕方ない。
案の定、リンネはもうどうでも良さそうな顔で、父に似た角を揺らしながらソーセージを頬張っていた。
残る家族の兄二人ーーカイとアルは黙々と朝食を口に運んでいる。
……いや、長兄であるカイはほとんど寝てるな。一応口を動かしているが、父に似た巨体がいまにも後ろに倒れ込みそうだ。
次兄ーーアルは、親の仇でも見るような険しい顔つきでサラダを睨みつけている。その美貌と相まってかなり恐ろしいが、サラダになにか恨みでもあるのだろうか。
鉢越しにそれをぼんやり眺めながら、私はマンドラゴラのサラダを咀嚼した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
初夜の床で「愛はない」と言った自分に返ってきたのは「愛はいらない食はくれ」と言う新妻の言葉だった。
いさき遊雨
恋愛
「僕に君への愛はない。」
初夜の床でそう言った僕に、
「愛はいらないから食事はください。」
そう言ってきた妻。
そんな風に始まった二人の夫婦生活のお話。
※設定はとてもふんわり
※1話完結 の予定
※時系列はバラバラ
※不定期更新
矛盾があったらすみません。
小説家になろうさまにも登録しています。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる