鉢かぶり姫の冒険

ぽんきち

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鉢の食卓

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食堂に着くと、既に家族達が揃って席に着いていた。

扉の正面、長机を挟んで最も上座に座るのが、私の父でありガストン王国の国王であるゴトフリード・ミーティア・ガストン。
赤黒い肌に曲がりくねった羊の角を生やした、堂々たる偉丈夫だ。
入室した私を見た父王ガストンは、その強面をグニャグニャに崩して口を開いた。

「おはよう、ワシの可愛いコルネット!今日も黒光りして調子が良さそうだ!」

「おはようございます。鉢の調子はいつも通りよ、お父様」

その隣に座るのは、艶やかなルビーレッドの髪を高く結い上げた妖艶な美女。
背中に生えたコウモリのような翼をゆらりと揺らしたサキュバスは、私の母でありガストン王国王妃のリリア・ミーティア・ガストンだ。

「おはよう、コルネ。いい朝ね」

「おはようございます、お母様」

両親に挨拶をすると、私は兄弟姉妹に軽く会釈をして席に着いた。
二人の兄達はそれぞれ年の順に上座から並んでおり、既に嫁いだ姉を除く二人目の姉と妹の間に挟まれる位置だ。

私が席に着くとすぐに食事が運ばれてきた。
紫色の湯気の立つスープを味わっていると、隣の妹がこちらをみて馬鹿にしたように笑って小声で囁いてきた。

「今日も重たそうな鉢ですわね。なんて可哀想なお姉様!そんな不細工な姿に産まれるなんて、なにかの呪いとしか考えられませんわね!っふくく!いつ見ても愉快だわ」

「うるさい、チビ」

私は妹に一瞥をくれると、ボソリと言い捨てた。はたから見れば鉢が回転したようにしか見えないだろうが。

私の妹とである、チビーーリリアナは、お母様にそっくりの美貌の幼女である。こいつは何故かしょっちゅう私に絡んでくるので本当に鬱陶しい。

「なっーー!」

「黙れ」

リリアナが顔を真っ赤にして今にも叫び出しそうだったので、その口にパンをいっぱいに突っ込んでやった。
真っ赤になったまま、モゴモゴとパンを頬張るリリアナ。

「ふん……リスみたい」

「!」

ますます顔を赤くしたリリアナは、ようやく静かになった。
はあ、全く毎朝毎朝、うるさい妹だ。

真っ赤なソーセージを頬張っていると、今度は逆隣の姉、リンネに声を掛けられた。

「いつ見ても不思議な鉢ねえ。被ったまま食事が出来るってすごいわよね」

「はあ……」

そんな、改めて感心されても反応に困る。
私の頭の天辺から顎までを覆うこの鉢はバケツのように広がっているので、食べ物を口に運ぶスペースは十分にあるのだ。
グラスがガツンガツン当たるのでコップが使えないのが難点だが、父の誂えた特製のストローがあるので問題ない。

見慣れているはずの鉢について、何故いきなりそんな感想を持ったのかはわからないが、もともとどこかすっとぼけた所のある姉のことなので、深く考えても仕方ない。
案の定、リンネはもうどうでも良さそうな顔で、父に似た角を揺らしながらソーセージを頬張っていた。

残る家族の兄二人ーーカイとアルは黙々と朝食を口に運んでいる。
……いや、長兄であるカイはほとんど寝てるな。一応口を動かしているが、父に似た巨体がいまにも後ろに倒れ込みそうだ。

次兄ーーアルは、親の仇でも見るような険しい顔つきでサラダを睨みつけている。その美貌と相まってかなり恐ろしいが、サラダになにか恨みでもあるのだろうか。

鉢越しにそれをぼんやり眺めながら、私はマンドラゴラのサラダを咀嚼した。
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