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鉢の決意
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「ーーところで、ワシから少し話がある」
朝食を終え、食後のコーヒーを飲んでいると父がおもむろにそう告げた。
「実は、早急にコルネットの婚約者を選ばなくてはならなくなった。人の王、アルスがコルネを自分の息子の嫁に欲しいと言ってきたからだ」
「なんですって?!お姉様が人の国に行くなんて許せませんわ!絶対ダメよ!私もい……もがっ」
「うるさい」
リリアナの口に手近にあったバナナを突っ込んで黙らせると、私は父に向き直った。
「……つまり、人王の息子の中から選ぶということですか?」
私に婚約者?しかも人王の息子……私が指名されたのは次姉のリンネの婚約者が決まっているからだろうが……人王には複数の息子がいるのだろうか。
私の問い掛けに、父は激しくかぶりをふった。
「誰があんな軟弱野郎の息子に可愛いコルネをやるものか!しかもあの野郎、コルネを鉢かぶりと馬鹿にしやがった!」
「はあ……まあ鉢かぶりは事実なのでどうでもいいですが、ただ断ればいい話では?」
「いいや!あの野郎の鼻を明かしてやらねばならん!コルネにはお前の息子など屁でもないほどの素晴らしい婚約者がいるからお呼びじゃないってな!ハッハー!」
「はあ……」
しかし素晴らしい婚約者がいないのだからどうしようもない。
私のやる気がないせいではないと思うが、父はしょんぼりと急に肩を落とした。
「それに……コルネの鉢は、真実の愛をもってしか外れない。コルネの意思に沿わない結婚など、不幸でしかないのだ。ワシはコルネの鉢を外してやりたい……」
「お父様……」
そう。
私のこの忌まわしい鉢は、真実私を愛してくれている者にしか外せないのだ。そしてそれは家族には外せない。
つまり私は、この鉢を被ったまま、私を愛してくれる人を見つけなければならないのだ。
何故こんな面倒くさい事になったのか……この鉢は、私が産まれてすぐ、いつの間にか頭にはまっていたのだという。
鉢があるため顔の判別のつかない気味の悪い子供を、大事に育ててくれた父母には本当に感謝している。
父母は鉢を外そうと躍起になり、私の成長とともに大きくなるこの鉢をについて国内外の文献を調べ上げ、沢山の医者に診せ、学者に研究させた。
しかしその研究でわかったことは、この鉢が真実の愛なんて不確かなものでしか外せないということ。そして父母には外せない、ということだった。
父母が私を愛してはいないのではないか、なんて疑心暗鬼に陥ることはなかった。
何故なら私は、家族の愛情にいつも満たされていたからだ。
そのため、少々の不自由はあるものの、私はこの鉢については諦めていた。
家族がいるし、幸せだから別に外れなくて一生独身でもいいやーってなもんだ。
「ワシは、ワシは……コルネに幸せになって欲しいのだ」
「お父様……わかりました」
「わかってくれたか!では早速、国中の若者と見合いの席をーー」
「私、旅に出ます」
「へ?」
「私、旅に出て真実の愛を見つけて参ります!」
私は決意を胸に、高らかに宣言した。
朝食を終え、食後のコーヒーを飲んでいると父がおもむろにそう告げた。
「実は、早急にコルネットの婚約者を選ばなくてはならなくなった。人の王、アルスがコルネを自分の息子の嫁に欲しいと言ってきたからだ」
「なんですって?!お姉様が人の国に行くなんて許せませんわ!絶対ダメよ!私もい……もがっ」
「うるさい」
リリアナの口に手近にあったバナナを突っ込んで黙らせると、私は父に向き直った。
「……つまり、人王の息子の中から選ぶということですか?」
私に婚約者?しかも人王の息子……私が指名されたのは次姉のリンネの婚約者が決まっているからだろうが……人王には複数の息子がいるのだろうか。
私の問い掛けに、父は激しくかぶりをふった。
「誰があんな軟弱野郎の息子に可愛いコルネをやるものか!しかもあの野郎、コルネを鉢かぶりと馬鹿にしやがった!」
「はあ……まあ鉢かぶりは事実なのでどうでもいいですが、ただ断ればいい話では?」
「いいや!あの野郎の鼻を明かしてやらねばならん!コルネにはお前の息子など屁でもないほどの素晴らしい婚約者がいるからお呼びじゃないってな!ハッハー!」
「はあ……」
しかし素晴らしい婚約者がいないのだからどうしようもない。
私のやる気がないせいではないと思うが、父はしょんぼりと急に肩を落とした。
「それに……コルネの鉢は、真実の愛をもってしか外れない。コルネの意思に沿わない結婚など、不幸でしかないのだ。ワシはコルネの鉢を外してやりたい……」
「お父様……」
そう。
私のこの忌まわしい鉢は、真実私を愛してくれている者にしか外せないのだ。そしてそれは家族には外せない。
つまり私は、この鉢を被ったまま、私を愛してくれる人を見つけなければならないのだ。
何故こんな面倒くさい事になったのか……この鉢は、私が産まれてすぐ、いつの間にか頭にはまっていたのだという。
鉢があるため顔の判別のつかない気味の悪い子供を、大事に育ててくれた父母には本当に感謝している。
父母は鉢を外そうと躍起になり、私の成長とともに大きくなるこの鉢をについて国内外の文献を調べ上げ、沢山の医者に診せ、学者に研究させた。
しかしその研究でわかったことは、この鉢が真実の愛なんて不確かなものでしか外せないということ。そして父母には外せない、ということだった。
父母が私を愛してはいないのではないか、なんて疑心暗鬼に陥ることはなかった。
何故なら私は、家族の愛情にいつも満たされていたからだ。
そのため、少々の不自由はあるものの、私はこの鉢については諦めていた。
家族がいるし、幸せだから別に外れなくて一生独身でもいいやーってなもんだ。
「ワシは、ワシは……コルネに幸せになって欲しいのだ」
「お父様……わかりました」
「わかってくれたか!では早速、国中の若者と見合いの席をーー」
「私、旅に出ます」
「へ?」
「私、旅に出て真実の愛を見つけて参ります!」
私は決意を胸に、高らかに宣言した。
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