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鉢の旅立ち
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「まずはこの、呪いのイバラに包まれた城に行きましょう」
地図を指差し、私は目的地を告げた。
ガストン王国の城から、馬で二週間ほどの距離にあるイバラの城。
それは魔女の呪いによって滅びた、古の王国があったとされる地にそびえ立つ王城である。
ガストン王国では観光名所になっていて、近くの街からイバラの城を見学するツアーも組まれている有名な場所だ。
「ええー?なんでそんなところに行くんです?あ、わかった!旅先でのアバンチュールですね!旅の途中で知り合った男性との淡い恋!白い砂浜、赤い夕陽が二人を照らし出す……!」
「海ないから。森よ森」
「ええー……テンションだだ下がり……」
ルミーナは明らさまにガッカリした様子で地面に寝転がった。
おい、こいつ侍女としてどうなの。
王城の中でも大概やる気が無かったが、城から出てみれば更にやる気がない。
つま先でルミーナを転がしながら、目的地に向けて蹴り飛ばそうか本気で考えた。
「いいから行くわよ!立ちなさい!」
「ええー……だいたい、なんで呪いの城なんかに行くんですか。真実の愛はそんな辛気臭いところにはありませんよ」
しぶしぶ立ち上がるルミーナに向けて、私は高らかに宣言した。
「真実の愛は王子様と育むものなのよ!呪いの城には王子様が眠っているに決まっているじゃない!さあ、行くわよ!待っててね、王子様ーー!」
「ええー……」
ぶちぶちと愚痴を零すルミーナのお尻を蹴飛ばしながら、私たちは呪いの城に向けて出発した。
呪いの城までの道中。
消耗品の補給や食料の買い込みのために立ち寄った街では、さすがにじろじろと変な視線を受けた。
生まれ育った王城では誰も気にしていなかったが、一歩城の外に出れば大きな鉢を被った私の姿はかなり奇妙だ。
「まったく、みんな私の美貌に釘付けね」
「絶対ちがう……」
違うのはわかっている。
私の美貌ではなく鉢に釘付けだということくらい、百も承知だ。
しかし私の頭部を見ているのだから、鉢だろうが顔だろうが似たようなものだ。
きっと私の美貌が鉢を通して溢れ出ているのだろう。自分の顔見たことないけど。
現実逃避しながらブラブラ歩いていると、何人かの男たちが私たちの前に立ちふさがった。
服装からして明らかにならず者だ。
「ようよう、お前さん、良いもん被ってんじゃねえか。見ればなかなか良さそうな鉢だ。置いていって貰おうか」
「鉢は被るもんじゃねえぜ。俺たちが有効活用してやんよ!」
その通りだ。
まさかこんなならず者達に正論を諭されるとは思ってもみなかった。
「全くその通りね。あんたの言葉が全面的に正しいわ。出来るなら喜んでプレゼントしたいくらいよ」
「なら、大人しく鉢を脱いで貰おうか!」
「是非そうさせて頂きたいところなのだけれど、そうもいかないの。……ルミーナさん、やっておしまいなさい」
「はいはーい」
やる気なく地べたに座り込んでいたルミーナは大儀そうに立ち上がると、ならず者達に向かってだらりと構えた。
「あん?やんのか……ひぶっ」
「このやろ……ごふっ」
ルミーナがふわりと動いたと思ったら、次の瞬間に勝敗は決していた。
軽く放たれたかに見えた蹴りが男達の急所を確実に捉え、ひとり、またひとりと泡を吹いて地面に倒れていく。
なんて的確な……ならず者が気の毒に思えるほどだ。
やる気なし侍女のルミーナは、腐っても若くして王女付きに任命されるほどの実力者である。
特にその格闘センスは目を見張るほどで、正確に相手の急所を狙いうちするその戦い方は、ガストン王国の悪魔軍団の中でも悪魔中の悪魔と称されている。
「終わりました~~」
「お疲れさま。こら、懐を探らない」
「ええー勝者の権利ですよう~」
「こんなのでも我が国の民なのよ。さあ行きましょう」
「フェーイ」
相変わらずやる気のない返事をするルミーナ。
しかし他に護衛も連れずに気楽に旅を出来るのは、ひとえにこのルミーナが付いてきてくれたからである。
悪魔王国ガストンが誇る、最強の悪魔、ルミーナ。
彼女はやる気なく、頭をぽりぽり掻きながらぽてぽてと私の方へと歩いてきた。
地図を指差し、私は目的地を告げた。
ガストン王国の城から、馬で二週間ほどの距離にあるイバラの城。
それは魔女の呪いによって滅びた、古の王国があったとされる地にそびえ立つ王城である。
ガストン王国では観光名所になっていて、近くの街からイバラの城を見学するツアーも組まれている有名な場所だ。
「ええー?なんでそんなところに行くんです?あ、わかった!旅先でのアバンチュールですね!旅の途中で知り合った男性との淡い恋!白い砂浜、赤い夕陽が二人を照らし出す……!」
「海ないから。森よ森」
「ええー……テンションだだ下がり……」
ルミーナは明らさまにガッカリした様子で地面に寝転がった。
おい、こいつ侍女としてどうなの。
王城の中でも大概やる気が無かったが、城から出てみれば更にやる気がない。
つま先でルミーナを転がしながら、目的地に向けて蹴り飛ばそうか本気で考えた。
「いいから行くわよ!立ちなさい!」
「ええー……だいたい、なんで呪いの城なんかに行くんですか。真実の愛はそんな辛気臭いところにはありませんよ」
しぶしぶ立ち上がるルミーナに向けて、私は高らかに宣言した。
「真実の愛は王子様と育むものなのよ!呪いの城には王子様が眠っているに決まっているじゃない!さあ、行くわよ!待っててね、王子様ーー!」
「ええー……」
ぶちぶちと愚痴を零すルミーナのお尻を蹴飛ばしながら、私たちは呪いの城に向けて出発した。
呪いの城までの道中。
消耗品の補給や食料の買い込みのために立ち寄った街では、さすがにじろじろと変な視線を受けた。
生まれ育った王城では誰も気にしていなかったが、一歩城の外に出れば大きな鉢を被った私の姿はかなり奇妙だ。
「まったく、みんな私の美貌に釘付けね」
「絶対ちがう……」
違うのはわかっている。
私の美貌ではなく鉢に釘付けだということくらい、百も承知だ。
しかし私の頭部を見ているのだから、鉢だろうが顔だろうが似たようなものだ。
きっと私の美貌が鉢を通して溢れ出ているのだろう。自分の顔見たことないけど。
現実逃避しながらブラブラ歩いていると、何人かの男たちが私たちの前に立ちふさがった。
服装からして明らかにならず者だ。
「ようよう、お前さん、良いもん被ってんじゃねえか。見ればなかなか良さそうな鉢だ。置いていって貰おうか」
「鉢は被るもんじゃねえぜ。俺たちが有効活用してやんよ!」
その通りだ。
まさかこんなならず者達に正論を諭されるとは思ってもみなかった。
「全くその通りね。あんたの言葉が全面的に正しいわ。出来るなら喜んでプレゼントしたいくらいよ」
「なら、大人しく鉢を脱いで貰おうか!」
「是非そうさせて頂きたいところなのだけれど、そうもいかないの。……ルミーナさん、やっておしまいなさい」
「はいはーい」
やる気なく地べたに座り込んでいたルミーナは大儀そうに立ち上がると、ならず者達に向かってだらりと構えた。
「あん?やんのか……ひぶっ」
「このやろ……ごふっ」
ルミーナがふわりと動いたと思ったら、次の瞬間に勝敗は決していた。
軽く放たれたかに見えた蹴りが男達の急所を確実に捉え、ひとり、またひとりと泡を吹いて地面に倒れていく。
なんて的確な……ならず者が気の毒に思えるほどだ。
やる気なし侍女のルミーナは、腐っても若くして王女付きに任命されるほどの実力者である。
特にその格闘センスは目を見張るほどで、正確に相手の急所を狙いうちするその戦い方は、ガストン王国の悪魔軍団の中でも悪魔中の悪魔と称されている。
「終わりました~~」
「お疲れさま。こら、懐を探らない」
「ええー勝者の権利ですよう~」
「こんなのでも我が国の民なのよ。さあ行きましょう」
「フェーイ」
相変わらずやる気のない返事をするルミーナ。
しかし他に護衛も連れずに気楽に旅を出来るのは、ひとえにこのルミーナが付いてきてくれたからである。
悪魔王国ガストンが誇る、最強の悪魔、ルミーナ。
彼女はやる気なく、頭をぽりぽり掻きながらぽてぽてと私の方へと歩いてきた。
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