【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～就寝～

恐怖

これまで、確かに何度かはあった…

特に、久しぶりに会った時や…拓海が酔っぱらった時などには、拓海は勢いに任せて私を押し倒し…
たまにはいいじゃんと言って笑いながら、避妊をしてくれずにそのまましようとしたことが何度かあった…

もちろん、すぐさま私は止めた…

でも、私が説明をすれば…拓海はいつも少しだけがっかりした表情を見せつつも、そうだな、駄目だよな、ごめんと笑って…ちゃんと納得してくれていた。

男は言うものだと…　
直接、君に触れたいと…一度くらい、つけずに生で、してみたいと…
口にしなくても男である以上…どんな男でも、頭の中ではそんな風に思っていると…雑誌に書いてあるのを見たことがある…。

好きな人から…愛する人からセックスの際にそんな風に甘い声で囁かれて、はっきり断るのは確かに至難の業だ…。
男に熱いまなざしで求められれば、女にだって…そういう欲望が生まれてしまうかもしれない…
その場の雰囲気に流され、そのまま、していいよと、呟きそうになることもあるかもしれない…

だけど…駄目だ…。

夫婦ならいい…　
可愛らしい子供が生まれてくることを心待ちにしている夫婦なら、むしろそれが普通だとは思う…。

でも…恋人と…結婚をしている夫婦は、絶対的に違う…

一時の気の迷いで…一時の感情…欲望の、域で…そんなことをしては絶対に駄目だ。

避妊をしないセックス…。

赤ちゃんが…子供ができるかもしれない行為…
そんなことを…いまだに子育てをする覚悟もない、ただ、恋人同士であるだけの男女がするべきではない…。
頭が固すぎるかもしれないが、これだけは絶対に譲れない、私の女としての気持ち…

そのことを、拓海はこれまでの私とのやり取りで、嫌でもわかっているはずだ…

なのに…　　なんで…　　

「な…このまま、しよ…？葉月…いきなり妊娠しねえって…仮にしても、俺責任持つし大丈夫だって。ほら…脚…もっと開け…」

考えている矢先、再び脚を左右に割り開かれ、息を飲む…。

「やっ…　たく、み…　　…　や、だ…　本当に、　やめ…　て…それだけは…　嫌、っ…！」

「…　いくぞ…　葉月…　」拓海が不思議なほどに…私の話を聞いてくれない…　　

拓海が、怖い…。
拓海の逞しい胸板が…ゆっくりと私に覆いかぶさってくる…。

「やっ…　やだ…んっ…　んぅ…」口内に舌を差し入れられ、私の抵抗の声はすぐにかき消される…。

怖い…　　駄目…　

逃げようとしても拓海は物凄い力で、私の両手首を拘束し、全く振りほどくことができない…。

助けて…　杉崎さん…　
　
私はここにいない、彼の…

　　杉崎さんの顔を…思い浮かべた…。