【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

〜異変〜

後悔

カチャ…

ポットで保温されていた珈琲を、ゆっくりとカップに注ぐ。

物凄く、気まずい…

遂に、杉崎さんに聞かれるままに…あの夜のことを話してしまった…
拓海と、そういう…いわゆる男女の行為をしてしまったこと…

杉崎さんはどう思っただろう…

いくら、優しい杉崎さんといえども、別れると言いつつも、依然として彼氏とそんなことをする女を…良く思うはずは、ない…

私だって、杉崎さんが林さんと同様のことをすればきっと、良い気持ちはしない。

そして、杉崎さんはあの夜の状況を知らない…
なぜ、したくないと…嫌だと、断らなかったのか…
男の希望のままに身体を委ねた意志の弱い女だと思われただろうか…

もしくは…まだ、拓海に愛情が残っていて…
そういうことをしたのか…などと、思われているかもしれない…
しかも、杉崎さんとそうなった翌日のことだ…
最低な、タイミングともいえる…。

ああ…

今更何度後悔しても仕方のないことだが、なぜあの日…あんな状況で拓海に別れを告げてしまったのか、やっぱり後悔しかない…、

つい、珈琲のおかわりなどと口走ってしまったが、今のこのおかしな雰囲気の中、あの場所に戻って一体何を話せば良いのかわからない…

でも、戻るより他はない…。 

珈琲を注ぎ終わり、
「杉崎さん、お待たせしました」と声をかけ、
私が振り向こうとした瞬間、
すぐ背後に、人の気配を感じて、息が止まりそうになる。

「… っ… あっ…」

すかさず長い腕が、私の前に伸びてくる…

驚きのあまり、
ガチャとコーヒーカップを取り落としそうになるが、なんとか溢さずに、台に置く…。

な… なに… 

心臓に、…悪い…   

「す…すぎ、さきさん… ？」

「… … …」
杉崎さんは何も言わない…

やはり、不快にさせてしまったのか…
怒らせてしまったのかもしれない…

私は、
　背後から… 

　　　杉崎さんに抱きしめられていた…