【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～拓海～

おっちょこちょい

この人がもし…あの男に…

杉崎って男に、うっかり俺と瑠衣のことを話せば…あの男はどんな行動に出るだろう…。

悪くすれば、すぐさま、葉月に知らせるかもしれない…。
詳細を話すことで…俺と葉月の仲を、裂こうとするかもしれない…。

ただでさえ、葉月にあんなことをしてしまった状況だ…。
　
既に、葉月とはあれっきり、一度も連絡が取れていない…。
そもそも、関係の修復自体難しいかもしれないこの状況で更に…瑠衣とのことが、葉月にバレようものなら…

　　　　　もう、完全に終わりだ…。

「…ほら、ドアはなせよ…。林さんも困ってる…帰りたいですよねこんな時間だし…あの、…わざわざすみませんが…部屋も散らかってますし…またの機会に…」

ぺこりとお辞儀をして、再びドアを閉めようとした瞬間…

「いえ…全然大丈夫ですよ…でも、瑠衣ちゃんもこう言ってますし…もし、長谷川さんさえよければ、少しだけお邪魔しても…？」

にこりと、微笑む彼女…。

「　…　…え…　…　」

なん、なんだ…　

俺は、正直、彼女が断ることを…　
部屋に入ることを遠慮してくれると、予想していた…。

「は～～い！　じゃ、決定…！お邪魔しま～す。」

「　…あ…っ　…　」

瑠衣が、まるで勝手知ったる我が家のように、俺の横をすり抜けて部屋に入っていく…。

「あれ…？こんなとこにアイス、落ちてるよ～拓海君は、おっちょこちょいだな～ふふ…冷凍庫入れとくね？わ…少し溶けちゃってるよ…あ～あ…」

瑠衣が迷いもなく冷蔵庫へ向かう…その行動すらも、見られたくない状況なのに…。

「…　あ…　ああ…　」　お前のせいだよと……　内心、毒づく…。

「…　お邪魔します…　」女がペコリとお辞儀をして、俺の方を見ずに瑠衣に続く。

一体、何を考えてるんだ…
　　　　　この、林智花という女は…　

瑠衣がこの人を連れて来た意味も、目的も…さっぱり分からない…。

これはあまりにも、怖すぎる会合だ…

とてもではないが、葉月にメールを送るどころではなくなった…。　

俺は、落胆しつつも、

　　バタンと…後ろ手にドアを閉めた…。