【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～決意～

泥棒猫

「えっ…　そうなんだ…　細野さんとランチ…？知らなかったな…」意外そうに、目を見開く杉崎さん。

「はい、年も近いので…　」
彼女と仲が良いように話している自分が、ほんの少しだけ虚しくなったが、止まらない…。

「…　でも…　何かあれば、教えて欲しい…本当に、大丈夫、かな…？」

「はい、大丈夫です。あの、デザート、まだ途中なんですが、すごく…美味しかったです。ありがとうございます。」

「…それは、良かった…あ…　もうあと5分で、時間だね…」

掛け時計を見ると…　１２時５４分…　
ああ…デザートも途中で…　食後の歯磨きすら、できていない…
細野さんの突然の出現で…色々な意味で、ペースが乱れてしまった…。

「そうですね…そろそろ戻りましょう…」

私がドアに手を掛けた瞬間…

「あっ…　」
背後から…杉崎さんにぎゅっと抱き締められ、　一瞬、息が止まる…。

背中に、杉崎さんの胸の鼓動が伝わる…
胸に…杉崎さんの腕が、触れていて…　頭が、どうにかなりそうだ…。

こんな場所で…　　
誰も見ていないとはいえ、職場で…　
こんなことをされるとは思っていなかった私は、驚きを隠せない…。

「あ…　あの…　杉崎…さん…　」

「…　ちょっと、午後に向けて、充電中　…少しだけ…じっとしてて…」

「あ…　は、い…　…」
耳に、そっと囁かれた優しい声に…胸が、ズキンと音を立てる…。

細野さんの言うことなんて、もう、気にしない…　　
気にならない自分が、怖いとさえ思う…。

私は…
もはや彼女のいうところの…意地汚い、泥棒猫でいい…

　　　　　…杉崎さんが、好き…　
　　　　　
　　　この気持ちだけは、揺らがない…。
　
私も、ここぞとばかりに充電しよう…。

背中に温かな彼の体温を感じながら、私はゆっくりと目を閉じた…。