【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～杉崎～

訂正

「ごめん、…　いっ…　今、のはっ…！」

俺はベッドの上で、慌てて訂正の言葉を挟もうと、口を開く。

『…は、はいっ…』　シンとした室内…　

「あの、さっきのは、…言い間違え…　だから…ごめん！変なこと、言ってしまって…」

『　…言い…間違え…？　』

「そう！あの…正しくは…」

『…はい…』

「あの…正しくは、その…改めて言うのも恥ずかしいけど…君を、抱き締めたい、でした…抱きたい、ではなく…」

『…　…　…』

彼女の、しばしの沈黙が怖い…
なんとかこれで、誤魔化せただろうか…。
いやらしい男だと思われたくはない…ただ、その一心だった…。

沈黙が怖くて、更に言葉を重ねる…。

「あの俺…あまり、電話ってしない方だから…いざ電話してみたらちょっと緊張してしまって…すまない…俺からかけたいって言っておいて…あんなこと言うつもりは…なくて…ほんと、言い間違いとはいえ…完全にセクハラだった…失言です…ごめん…」

いつになく、説明が早口になってしまった…。
ああ…　穴があったら入りたいとは、まさにこのことだ…。

だが…その後の彼女の言葉が、俺をさらなる深みに連れて行こうと、俺につかみかかる…。

『…いえ…全然…あの…』

「…ん…？」　

『…いえ…あの…言い間違いだっていうのは、よくわかったんですけど…あの…』

「…うん…？」

『…それはそれで…どちらでも…私は、嬉しい…というか…その…』
段々と…彼女の声の音量が、下がっていく…。

「…　…　…」　なんだ…　何を、言おうとしている…？

『…そういう風に…杉崎さんに思っていただけることは光栄というか…その…本当に、どちらでも…あの…嫌だなんて、思わない…ので…』

「…　…　…」　真面目過ぎる彼女の…　本当に真面目な…　ああ…

『…むしろ、わ…わ、私も…抱いて、欲し　や、違っ…あ、あのっ、抱き…抱き…締めて欲しいって…今、おもっ…』

　　　　　　「ストップ！」

　　　　　　
頭で考えるより先に、俺はそう、口にしていた。