【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～変化～

眩暈

翌日の夕方、　
　
　　約束の時間が近付いていた…

　　　　　　　
　　　　　　　ピン、ポーン　…

「…　…　…」

来た…　杉崎さんだ…

部屋の準備は整った。
掃除は、万全…。

新しい珈琲豆と、ケーキもすぐに出せる準備をしている…。
　
私は、段々と早くなる自身の鼓動に気付かないふりをして、ドアへ向かう…。

　　　　　　　ガチャ…　…　　

ドアを開けながら…ゆっくりと愛しい人の顔を見上げて、息が止まる…。

「…こんばんは…　…えっ　…」

驚きのあまり…　

声が、裏返りそうになる…。

目の前にいるのは…　　　

　　　　杉崎さんじゃない…　　

　　　嘘…　なんで、今　…ここに…

ああ…私はなんて、馬鹿なんだろう…

なんで、確認しなかったんだろう…　
誰が、来たのか…　

「あ…　あっ　…どう、して…　た…たく……」

「…　おまえさ…こんな夜に…誰、待ってんの…？　」

「…え　…え　…？」

「自分の家に、俺以外の人間、あげることなんてなかっただろう…なのに今、…誰に対して、挨拶したん…？」

「…え…　…なんで、…　ここ…に　」

率直に…いきなり訪問してきた拓海のことを…怖いと思った…　
拓海の目が、暗闇に光っている…。

「拓海…　いき、なり…どうして…」ドアノブを持つ手が、震える…。

「知るか…いきなりも何も…おまえ…あんなメール一つで…俺と別れようとか、思ってんの…？」

「…　…　…」

「ていうか、とりあえず入れろよ…　部屋に…　部屋でゆっくり、話そう…　さみい…」

ぶるると震わせる拓海の身体が…なぜだろう…前よりさらに大きく見えて…恐怖しかない…。

「…拓海、ご…ごめん…部屋は、無理…　も、帰って…言いたいことは全部、あのメールに」

「…なあ…葉月…　」拓海の声が、少しだけ小さくなった…。

「…あの夜…俺がおまえにしたことは…マジで…本当に心から悪かったと、思ってる…。」

「…　…　…」

どうしよう…　もうすぐ、杉崎さんがここに来てしまう…

二人が鉢合わせになるのが怖い…　

　　　　　今にも、眩暈がしそうだ…。