【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～変化～

訪問者

拓海は、私の態度に構わず言葉を続ける。

「…もう、マジで二度と、あんなことはしない…ていうか、身体大丈夫なのか…？妊娠、とか…してな…」

「やめてっ…こんな、廊下で…そんな話しないで…お願い…拓海…お願いだから今日はもう帰って…」

「やだ…。お前が、俺の話をちゃんと聞いてくれるまでは絶対ここを動かない…てか、いい加減入れろよ…寒くて、風邪ひいちまう…」

「や、あっ　…」いきなり、すごい力でドアを開けられ、
私はドアの前で…バランスを崩して拓海の腕に抱き込まれたような形になってしまう。　

「はは…なんだよおまえ…結局、俺の腕の中に自分から入ってきてさ…可愛い奴だな…」

さらに力を込めて抱き締められ…息苦しさに…私は小さく、呻く…。
「や、やめ、てっ…　んっ　…苦しい…　は、なして…」

私は拓海の腕の中で、全力で藻掻く…。
こんなところを、杉崎さんに見られるわけにはいかない…。

　　　　　　でも、

　　　　　　　遅かった。

「こんばんは、水無月さん。」
背後から、彼の声がした。

「…ああ…やっぱ、あんたか～むっかつくわー何、この状況…」拓海がゆっくりと、彼を振り返る。

「…　同じ言葉を…君に、返そうかな…」

杉崎さんの…聞いたこともないような…低い声に、ゾクリとした…

怒っているのは明白だ…。
杉崎さんの眼が…本当に…全然、笑っていない…

「…杉崎、さん…」

「…水無月さん…寒いから…君は中に入っているといい…。」

「ふっざけんな…俺は葉月に話があって…痛っ…！　」
杉崎さんが、私を抱き締めたままの拓海の身体を荒々しい手つきで、引き離していく…。

「ほら…水無月さん、危ないから…早く入ってて…」

「は、はいっ…すみません…」

「危ないってなんだよ…！あっ、葉月、待てって…」
私に再び手を伸ばしてきた拓海を遮るように、素早く、私と拓海の間に立つ杉崎さん…。

「君の相手は俺…さ、少し外で話そうか…じゃあ、後でね、水無月さん…」

「は、は、…は、い…　」

バタンとドアの閉まった音の後に…　
ザッザッと…二人の足音が、遠ざかっていく…。

「…　…　…　っせー　てめえ…　　……　っ」

「…　…　…　…　…」杉崎さんの声は小さ過ぎて、何ひとつ聞こえない…

ああ…どうしよう…
二人が話し合いではなく…喧嘩にでもなったら…　

杉崎さんが…ひどい怪我でもしてしまったら…　

最低だ…　　
私が馬鹿だった…　
拓海がいきなり来るなんて…予想すら、しなかった…

私はへなへなと…

　　　　　力なく、床に座り込んだ…。