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〜出会い〜
質問タイム
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途端に、周りにいる人の視線を感じる。
幹事の男性から声をかけられる。
「えっと…そちらの端におられる、水無月さん…水無月葉月さん…!ですね、では、よろしくお願いします。」
…あああ…もう逃げようがない…
私は慌てて立ち上がる。
30人ほどの視線が私に集中しているのがわかる。考えるより先に、緊張のためか、口が開く。
「は、初めまして…このたび、広報部に配置になった、水無月…葉月、と申します…出身は東京都内です…、まだまだ仕事に慣れていなくて、皆様にはご迷惑を…おかけしていますが、頑張りますので、よろしくお願いいたします。」なんのひねりもないごく普通の自己紹介。
早口でそう言ってペコリとお辞儀をし、すぐにその場に座りこんだ。
ひー…緊張しすぎて、頭が…真っ白になりかけた。
でも、とりあえず!終わった…。
私が息を吐いていると「ここで!質問ターイム!みなさん他に、水無月さんに聞きたいことはありますか?」
え…何、その…司会進行。もう、終わったんだからこれ以上…掘り下げないで欲しい…
幹事の男性が、まるで合コンのノリのような質問の仕方をする。
やめて…誰も、何にも質問しないで…
私がそう願っていると、1人の男性が手を挙げる…
まさかの…うちの…直属の主任だった。
「水無月さん…質問…!一つ質問…いいかな?
ズバリ、彼氏とかいるんですかー?仕事中には直球では聞きづらいから…この場を利用して、聞いちゃいます~」
酔っ払ったように赤くてヘラヘラした顔で私に問う。
私は…緊張のあまり、そして早くその変な質問コーナーを終わらせたい一心で、もう一度立ち上がり、即座に答える。
「い…います…」
おおおっ…周りからわけのわからないどよめきの声…もう、勘弁してほしい…恥ずかし…。
「 何年くらい…?」主任がまた…
「…あ…5…、5~6年…位…です…かね」
小さな声で一応答える。
「わ、いまどき珍しく、すごい付き合い長いね。いいね~んで、何してる人…?…今、どこまで…進んでるの…?ほら…あっちの…頻度とかさ…若いからやっぱり…」
…主任が周りに、意味深に目配せする。
…え…?…何…、
なんて言ったの…今…
…そんなことまで…こんな場所で聞かれるなんて…どこまで…って、どういう…意味…?結婚…とか、そういう話…?…
あっちの…頻度って…頻度って…まさか…
「…え…えっと…」
こういう時…なんて言ったらいいんだろ…もうやだ…
上手に質問を交わせるような言葉も全く出て来なくて、私の体から拒絶反応が出そうになった瞬間…
グイッと横から強引に手を引かれて無理矢理その場に座らされる…。「!?っ…」
…え…?…驚きのあまり、声が出ない…
「はい…。水無月さんへの質問タイムはここで終了…主任…次の新人さん、待たせ過ぎですって。見てくださいよ…ずっとさっきから次は自分だと、緊張して待ってる状態なんですよ?
あと…これ以上の水無月さんへの質問は、セクハラにもなりかねないので、今後は、指導係である俺を通してからにしてください…以上。」
杉崎さんが、笑顔で主任を見つめながらたしなめる。一応は笑ってはいるけど…でも、その目は全然、笑っていない…ように、私にはみえた。
一瞬その場がシンとなったあと、主任が慌てて取り繕うように「…そ、そうだな…ヤバいやばい…ごめんね水無月さん!酔っ払って、調子に乗り過ぎました…ホント、すみません。」と…
その場はそれで収束し…挨拶は次の人に回る。
私は心からほっとして杉崎さんを見る。
杉崎さんのおかげだ…あれ以上、場の雰囲気で答えていたら、きっと今頃…泣いて後悔していたに違いない…
そして…ふいに、手がまだ…握られたままであることに気付き、赤面する。
「すっ、杉崎さん…!ありがとうございます。あの、手、手…を、あの…」そう言うと…
「あっ!っと…ごめんごめんっ…!これじゃ俺がセクハラだな…ははっ」笑いながら、ぱっと手を離される。
…杉崎さんなら…セクハラにならない…むしろ…
私はすぐに心の声に蓋をして、次の人の挨拶に耳を傾ける。
この…杉崎さんと私のやり取りを…
もしかしたらずっと…見られていたのかもしれない。
私は随分後になって、そう思うようになった。
幹事の男性から声をかけられる。
「えっと…そちらの端におられる、水無月さん…水無月葉月さん…!ですね、では、よろしくお願いします。」
…あああ…もう逃げようがない…
私は慌てて立ち上がる。
30人ほどの視線が私に集中しているのがわかる。考えるより先に、緊張のためか、口が開く。
「は、初めまして…このたび、広報部に配置になった、水無月…葉月、と申します…出身は東京都内です…、まだまだ仕事に慣れていなくて、皆様にはご迷惑を…おかけしていますが、頑張りますので、よろしくお願いいたします。」なんのひねりもないごく普通の自己紹介。
早口でそう言ってペコリとお辞儀をし、すぐにその場に座りこんだ。
ひー…緊張しすぎて、頭が…真っ白になりかけた。
でも、とりあえず!終わった…。
私が息を吐いていると「ここで!質問ターイム!みなさん他に、水無月さんに聞きたいことはありますか?」
え…何、その…司会進行。もう、終わったんだからこれ以上…掘り下げないで欲しい…
幹事の男性が、まるで合コンのノリのような質問の仕方をする。
やめて…誰も、何にも質問しないで…
私がそう願っていると、1人の男性が手を挙げる…
まさかの…うちの…直属の主任だった。
「水無月さん…質問…!一つ質問…いいかな?
ズバリ、彼氏とかいるんですかー?仕事中には直球では聞きづらいから…この場を利用して、聞いちゃいます~」
酔っ払ったように赤くてヘラヘラした顔で私に問う。
私は…緊張のあまり、そして早くその変な質問コーナーを終わらせたい一心で、もう一度立ち上がり、即座に答える。
「い…います…」
おおおっ…周りからわけのわからないどよめきの声…もう、勘弁してほしい…恥ずかし…。
「 何年くらい…?」主任がまた…
「…あ…5…、5~6年…位…です…かね」
小さな声で一応答える。
「わ、いまどき珍しく、すごい付き合い長いね。いいね~んで、何してる人…?…今、どこまで…進んでるの…?ほら…あっちの…頻度とかさ…若いからやっぱり…」
…主任が周りに、意味深に目配せする。
…え…?…何…、
なんて言ったの…今…
…そんなことまで…こんな場所で聞かれるなんて…どこまで…って、どういう…意味…?結婚…とか、そういう話…?…
あっちの…頻度って…頻度って…まさか…
「…え…えっと…」
こういう時…なんて言ったらいいんだろ…もうやだ…
上手に質問を交わせるような言葉も全く出て来なくて、私の体から拒絶反応が出そうになった瞬間…
グイッと横から強引に手を引かれて無理矢理その場に座らされる…。「!?っ…」
…え…?…驚きのあまり、声が出ない…
「はい…。水無月さんへの質問タイムはここで終了…主任…次の新人さん、待たせ過ぎですって。見てくださいよ…ずっとさっきから次は自分だと、緊張して待ってる状態なんですよ?
あと…これ以上の水無月さんへの質問は、セクハラにもなりかねないので、今後は、指導係である俺を通してからにしてください…以上。」
杉崎さんが、笑顔で主任を見つめながらたしなめる。一応は笑ってはいるけど…でも、その目は全然、笑っていない…ように、私にはみえた。
一瞬その場がシンとなったあと、主任が慌てて取り繕うように「…そ、そうだな…ヤバいやばい…ごめんね水無月さん!酔っ払って、調子に乗り過ぎました…ホント、すみません。」と…
その場はそれで収束し…挨拶は次の人に回る。
私は心からほっとして杉崎さんを見る。
杉崎さんのおかげだ…あれ以上、場の雰囲気で答えていたら、きっと今頃…泣いて後悔していたに違いない…
そして…ふいに、手がまだ…握られたままであることに気付き、赤面する。
「すっ、杉崎さん…!ありがとうございます。あの、手、手…を、あの…」そう言うと…
「あっ!っと…ごめんごめんっ…!これじゃ俺がセクハラだな…ははっ」笑いながら、ぱっと手を離される。
…杉崎さんなら…セクハラにならない…むしろ…
私はすぐに心の声に蓋をして、次の人の挨拶に耳を傾ける。
この…杉崎さんと私のやり取りを…
もしかしたらずっと…見られていたのかもしれない。
私は随分後になって、そう思うようになった。
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