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〜出会い〜
林さん
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「…新しくわが社に入所してきた方々、ようこそ!これから一緒に…」
歓迎会幹事の、陽気な挨拶が始まる。
入所してからずっと感じていたことが頭をよぎる。
この幹事の人も含めて、なんだかこの会社の社員のひとたち、…割合として、社交的な人が多い気がする…
私はただただ、お菓子が好きで…とにかくその仕事に携わりたい一心で、この会社を目指した。
でもこの先、どちらかというと内向的な性格の私が、こんなに明るい人が多くて、飛ぶ鳥を落とす勢いのある革新的な企業の中で…本当にやっていけるのだろうか… 少し不安になる。
「…では、かんぱーい!!」 …あ、だめだ…。
こんな席で、一人で物思いにふけっていた。「…乾杯~」小さく声を重ねながら…コップに注がれたビールを遅ればせながら皆に合わせて上方へ掲げる。
「では…しばし、ご歓談を…」その挨拶を合図に、各々の席で、がやがやと雑談が始まった。
いそいそと、各テーブルに運ばれるビールや、料理の数々…
残念ながら一人一人で食べられるものはなく、全て取り分け式の料理ばかり…。
店員さんいわく、4人一皿で…とのこと。
私は飲み会や食事会での、この形式が本当に苦手だった…。
特に友人ではなく慣れていない人との食事の場合…気を遣って皆の分を先に取り分けようと思えば、なぜか緊張してこぼしたりなんらかの失敗をすることが多く… 気が進まない…けど…。
ぱっと見た感じ、杉崎さん、目の前の林さん、林さんの横の名前がまだわからない男性…。この4人の中では…完全に私が下っ端に違いない…私は咄嗟に、取り分け皿に手を伸ばそうとした。
失敗ありきで…やらなきゃダメよね…新人だもん…。
すると、私より先に目の前の林さんが、さっとトングを手にし小皿に優雅に4人分のサラダを取り分けてくれる。
「あっ…す、すみません…ありがとうございます…」
…しまった、こんなこと、来て早々、先輩にさせるなんて… そのあと、何も言えなくなった。
林さんは女性らしい雰囲気の綺麗な人で…年齢は見たところ、私よりはちょっと上…20代後半くらいだろうか…
「いいよいいよ、そんなに気を遣わなくったって…!ただでさえ知らない人だらけで緊張してるでしょう?
新人さんは、とにかく食べて食べて…もう少し残ってるけど、あとは食べられる人が、セルフでお願いしますね~」
そう周りにも言って、私にもにっこりと微笑んでくれる。
嫌味もなにもなく、周りに気づかいもできて、すごく素敵な人…私はすぐに、林さんを好きになった。
「そうそう、水無月さん、気にしなくていいよ、食べたいときに自分で取るしね、あとは適当に飲んで適当に食べて、適当に挨拶~これでいいと思うよ…あ、挨拶はきちんとか…主任、そのへん厳しいしね、まあ、頑張って」
杉崎さんがそう言って笑いながらビールを豪快に口に運ぶ。林さんも「そうそう」と、にこやかにうなずく。
良い職場で良かった…
30分ほど、私について聞かれたことに答えたり、林さんや杉崎さん、もう一人の男性と雑談をしていたら、少し酔いがまわったような口調で、さきほどの幹事の男性が声をあげる。
「 えー…皆様、あまり飲み過ぎて酔いが回る前に…このたび、わが社の総務課に入所した新人さん3名に、着任の挨拶をいただきたいと思います~新人の方々…準備は良いですか…?いいですね~??」
そういうと、誰かが「待ってました~!じゃ、端から順にいこうか…?では、お願いしまーす」
…端って…もしかして、私、なのかな…
あ、皆さん…こっち見てるから多分そうか…
ああ…なんで、一番最初なの…
歓迎会幹事の、陽気な挨拶が始まる。
入所してからずっと感じていたことが頭をよぎる。
この幹事の人も含めて、なんだかこの会社の社員のひとたち、…割合として、社交的な人が多い気がする…
私はただただ、お菓子が好きで…とにかくその仕事に携わりたい一心で、この会社を目指した。
でもこの先、どちらかというと内向的な性格の私が、こんなに明るい人が多くて、飛ぶ鳥を落とす勢いのある革新的な企業の中で…本当にやっていけるのだろうか… 少し不安になる。
「…では、かんぱーい!!」 …あ、だめだ…。
こんな席で、一人で物思いにふけっていた。「…乾杯~」小さく声を重ねながら…コップに注がれたビールを遅ればせながら皆に合わせて上方へ掲げる。
「では…しばし、ご歓談を…」その挨拶を合図に、各々の席で、がやがやと雑談が始まった。
いそいそと、各テーブルに運ばれるビールや、料理の数々…
残念ながら一人一人で食べられるものはなく、全て取り分け式の料理ばかり…。
店員さんいわく、4人一皿で…とのこと。
私は飲み会や食事会での、この形式が本当に苦手だった…。
特に友人ではなく慣れていない人との食事の場合…気を遣って皆の分を先に取り分けようと思えば、なぜか緊張してこぼしたりなんらかの失敗をすることが多く… 気が進まない…けど…。
ぱっと見た感じ、杉崎さん、目の前の林さん、林さんの横の名前がまだわからない男性…。この4人の中では…完全に私が下っ端に違いない…私は咄嗟に、取り分け皿に手を伸ばそうとした。
失敗ありきで…やらなきゃダメよね…新人だもん…。
すると、私より先に目の前の林さんが、さっとトングを手にし小皿に優雅に4人分のサラダを取り分けてくれる。
「あっ…す、すみません…ありがとうございます…」
…しまった、こんなこと、来て早々、先輩にさせるなんて… そのあと、何も言えなくなった。
林さんは女性らしい雰囲気の綺麗な人で…年齢は見たところ、私よりはちょっと上…20代後半くらいだろうか…
「いいよいいよ、そんなに気を遣わなくったって…!ただでさえ知らない人だらけで緊張してるでしょう?
新人さんは、とにかく食べて食べて…もう少し残ってるけど、あとは食べられる人が、セルフでお願いしますね~」
そう周りにも言って、私にもにっこりと微笑んでくれる。
嫌味もなにもなく、周りに気づかいもできて、すごく素敵な人…私はすぐに、林さんを好きになった。
「そうそう、水無月さん、気にしなくていいよ、食べたいときに自分で取るしね、あとは適当に飲んで適当に食べて、適当に挨拶~これでいいと思うよ…あ、挨拶はきちんとか…主任、そのへん厳しいしね、まあ、頑張って」
杉崎さんがそう言って笑いながらビールを豪快に口に運ぶ。林さんも「そうそう」と、にこやかにうなずく。
良い職場で良かった…
30分ほど、私について聞かれたことに答えたり、林さんや杉崎さん、もう一人の男性と雑談をしていたら、少し酔いがまわったような口調で、さきほどの幹事の男性が声をあげる。
「 えー…皆様、あまり飲み過ぎて酔いが回る前に…このたび、わが社の総務課に入所した新人さん3名に、着任の挨拶をいただきたいと思います~新人の方々…準備は良いですか…?いいですね~??」
そういうと、誰かが「待ってました~!じゃ、端から順にいこうか…?では、お願いしまーす」
…端って…もしかして、私、なのかな…
あ、皆さん…こっち見てるから多分そうか…
ああ…なんで、一番最初なの…
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