【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

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~杉崎~

内心

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「修哉さん!久しぶり…」

林智花…彼女が、九州から戻って来た。

俺は空港の停車スペースに車を一時的に停め、笑顔で彼女を車内に迎えいれる。

今回は二泊三日の滞在らしく、一日目は俺の家に泊まり、二日目は実家に顔を出すようだ。

彼女が九州に旅立って二ヶ月と少し…今まで遠距離恋愛とは無縁だった俺だが、意外と、なんてことはなかった。

彼女が週末に、たびたび帰省してくるためか、もしくはラインで連絡をこまめにしているせいか、正直なところ、今のところ寂しいなんていう感情はほとんどない。

強いていえば…
彼女という存在の智花がいないため、今まで仕事帰りに気軽に声を掛けて行けていた食事などをする機会が、極端に減った…そんなところだろうか。

本音を言うと、俺自身の感情の問題なのかもしれない…彼女に会いたいとか、寂しいという気持ちが人よりきっと、希薄なのだ。
もちろん、こんなことを当の本人に言うほど馬鹿なことはしない。

彼女ともかに限ってではなく、今まで経験してきた全ての恋愛において、そういう感覚なのだ…。
しかも、実は過去に、正直にそんな類の話を当時の交際相手にしてしまい、相手を怒らせた経験もある。

若かりし20代の頃、こんなことは口に出して言うべきではないのだと、身をもって学んだ。

さらに遡り、10代後半、特に思春期にも友人の女子から俺の考え方、態度が冷たいと言われたことがあり、当時はそのことに真剣に悩み、深く考え込んだこともあるくらいだ…。

もともと俺の中に、寂しいとか、人恋しいとか、そういう慕情のような感情が欠落しているのかもしれない…

ただ、どんなに考えてみても、やはり性格を変えることは出来ず…良くも悪くも感情的にならず、ドライな人間でしかないのだと自分を分析して、現在に至る。

今回も、智花が帰省してくるのは嬉しいと感じはしたものの、正直に言うと…泊まらなくてもいいのに…と考えてしまった自分がいた…。

部屋を綺麗に整えたり、普段自分が口にしない食料飲料を準備したり…正直少し、鬱陶しい…。

告白されて誰かと交際するたびに、俺は誰かと一緒に過ごすより、一人でいる方が好きなのかもしれないと…何度、自己嫌悪に陥りながらも、自己分析したことか。

つまり、たとえば誰かと生活をともにする同棲や、結婚など、絶対にありえないということ。

「修哉さん…迎えに来てくれてありがとう…」
智花が口を開き、俺は無理矢理、思考を停止した。

「元気だった…?私はすごく、修哉さんに会いたかった…」智花が運転席の俺をうっとりとした表情で見つめながら、やけに甘ったるい声を出す。

「うん…俺も…」

 うん…俺も…
…でも、俺はそうでもない…と、もちろん本音を漏らせるはずもなく…

俺は彼女に微笑んで、

   家に向かって静かに車を走らせた。



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