【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

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〜お互いの日常〜

約束

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「うーん…こっちの方がいいかな…いや、でもこっちも捨てがたいよね…少し値段が高くはなるけど…」
杉崎さんが旅館のパンフレットをテーブルに広げながら話す。

私達は、自宅近所の居酒屋で、軽い食事をしながら旅行会の旅館の検討をしていた。

「ごめんね…オフの時間に付き合わせて…。本当は旅行会も仕事の一環だから勤務時間中にできることではあるんだけどさ…なかなか他の仕事も立て込んでるし、時間中に呑気に旅行のパンフレット眺めて遊んでるように見えてもちょっとやりづらいなって思ってさ…」杉崎さんが微笑む。

「それは…そう思います!やりづらいですよね…仕事中には…だから全然気にしないでください。お酒飲みながら話した方が、きっと良いアイデアが生まれますよ。私、普通に食事を楽しんでますし…」

これは本当だった。
美味しいお酒に美味しい食べ物をつまみながら、杉崎さんと旅行の話…なんだか普通のカップルのデートみたいだ…なんて、勝手に思っていたくらいだ。

「よし…もういいや、会費をケチって皆に旅館がどうとか料理が…とか不平言われるよりは、少し良いところにしよう。ね!もう一つのところより距離も少し近いし、ここならバスも出るから…ね?こっちにしない?」
杉崎さんは既に悩み過ぎていたのか、疲れたのか…少し投げやりな感じになって、選択肢の中でも一番グレードの高いところのパンフレットを指さした。

そこは、まあまあ名の知れた旅館で、料理がおいしいと定評のある旅館だった。
杉崎さんにはわざわざ伝えはしなかったが、実は前に拓海と行こうかと話をしていた場所…でもあった。

「はい!ではそこにしましょう!あとは、参加人数の確認と、予約、会費の決定…宴会場の手配…?とかですか…うわー…まだまだ沢山…考えなきゃいけないことって、残ってますね…」私が言うと、

「そうだね…宴会かぁ…宴会場所の広さとか間取りとか確認したいし…あと、バスで行く場合の休憩場所とか観光…まあ、観光なんてなくてもいいけど…ざっと…確認しとかなきゃ…だな…。…一回、車で下見に行っとくかな…」

杉崎さんが疲れた表情でそう、口にする。

私は迷う。口にするか…しないか…本当に迷った挙句、何も言えなくて黙り込む…
「そうですね…色々、大変…ですよね」それだけを言うのがやっとだったのだけど、

杉崎さんが私が言おうかどうか迷ったことを、突如、口にする。

「あの…あのさ…水無月さんが良かったら、なんだけど…今度の休みかどこかで、一緒に…下見に…行けない?…っていうか、付き合ってくれないかな…?俺の車出すから…あ、もちろん、無理ならいいんだ、本当に…その場合はひとりでスッと行けるし…ただ、二人で見た方が安心かなって程度だから…」

私だって、同じ提案をしようと思っていた…。でも、言えなかっただけだ…
「行きます…私で良ければ是非…下見、必要だと思います…よろしくお願いします。」私は即答していた。

私は何を期待しているのだろうか…でも、断る理由はなく、むしろ行きたいと思った…。

私の心の奥底にある、下心…なのかもしれない…
少しだけそう思い…戸惑いながらも、私と杉崎さんは、下見の日の約束をした。






























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