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〜二人きり〜
下見の日
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「おはようございます、失礼します…」
私はそう言って、初めて杉崎さんの車の助手席に乗り込んだ。
今日は旅行会の幹事として、杉崎さんと下見に行くことを約束した日の当日。
目と鼻の先ではあるが、杉崎さんが私のマンション下まで車で迎えに来てくれた。
いきさつはともかく、杉崎さんの車にまさか自分が乗ることになる日が来るとは思っていなかった私は、この日、かなり緊張していた。
「おはよう!あんまり居心地いい車じゃないかもしれないけど、乗って乗って。調節は適当にしてね?」杉崎さんはそう言って微笑む。
ドアを閉めると…完全に密室…杉崎さんが近い…。私は動揺を隠すように「はい。今日はよろしくお願いします。」とだけ言って、シートを調節した。
「うん、天気が良くて良かったよ…じゃ、出発するね」そう言って、杉崎さんは緩やかに車を発進させた。
行きすがら、観光場所を確認したり、トイレ休憩に使えるような場所をリサーチしたりして、私たちは概ね真面目に、下見を続けた。
「実はここ…行きがけに寄ったらどうかな?って思ってて…試飲もできるみたいなんだ…ちょっと寄ってもいいかな…?」
杉崎さんはそう言って、一軒の大きなワイン工場の駐車場に車を止めた。
「素敵…可愛らしい外観ですね…!」
レトロな煉瓦造りのワイン工場、その横に、お洒落なワインショップが何軒か軒を連ねていて…可愛らしい…それが私の素直な感想だった。
「ね、なんか良いよね、ここ。さ、行こ行こ…!俺は運転があるから飲めないけど、水無月さん試しに飲んでみてよ…!ね。」
杉崎さんと一緒に降り立ち、ワインショップに立ち寄ると、店員らしき女性が近付き「彼女さん、良かったら試飲どうぞ~ 無料のがこちらです、他に500円でこちらの3種も試飲もできますよ~良かったら…」と勧められる。
彼女ではないけど…と、心の中では否定しながら、勧められるままに、一杯飲むと、甘くて…少しの酸味…広がる芳醇な香り…私好みの味で、思わず声をあげる。
「美味し~!いいですね。このワイン…甘くて飲みやすい…!」そう言うと、店員さんがにっこりと微笑みながら、「そうなんです、こちらはお酒が苦手な方にも割と好まれる特に女性好みの甘めのワインとなっております~お土産などにもおすすめですよ」
「う~ん、本当に美味し…!」もう1種類、勧められるままに飲んでいると、微笑んでいる杉崎さんと目が合い、ハッとする…。
杉崎さんは一滴も飲めないのに、私ってば一人、何を…しているんだろう…。
あまりに美味しく、しばらく任務を忘れていた…。
「ご…ごめんなさい!美味しくてつい…杉崎さん飲めないのにすみません、私ばかり…」
慌ててそう告げると、
「いや、全然…むしろ飲んでもらったほうがいいよ…せっかく来たんだし…せめてどちらかが飲めないと、来た意味ないよ、ね、俺のことは気にせずどんどんいって…!」杉崎さんが楽しそうに答えてくれる。
「は…い…では…」
その後、私はそう言って、杉崎さんの言葉に甘えて2~3種類、さらに試飲してショップを後にした。
「うん、なかなか良かったね、ここ…お土産も充実してるし…。ぜひ、ここは立ち寄り先にしよう」そう言って、杉崎さんは車を発進させる。
「ふ…あ…はい…ですね…良かった良かった…」
…ちょっと、飲みすぎた…かもしれない…
しかも違う種類のワインを少量とはいえ、何杯も…
「ん…?…大丈夫?水無月さん…まさか、飲みすぎちゃった、とか…かな?」
杉崎さんが運転しながらも、心配そうに横目で私をうかがう。
「は…い、大丈夫…です…ふふふ…なんだか、ふわんとして、気持ちよくなった感じ…です、さ、次の場所へ…ゴー …」
そう言って、笑って返事をする私…。
いつもなら、年上である杉崎さんにこんな口調で話すことは絶対にない…あーあ…ダメな私…
やはり酔ってしまった…みたいだ。
空腹にワイン…ダメなパターンだったかもしれない…慣れない飲み方をしたせいか、私は少し、いやかなり…普段より陽気になっていた。
「あらら…うん、じゃあ、次は旅館!にね…そこで昼ご飯、予約してるから、まあ、ゆっくり休むといいよ…吐き気とかない…?大丈夫…?」
彼の真面目な声に対し、
「ふふ…大丈夫ですって…さあ、旅館へ向けてしゅっぱーっつ…ん…」失礼な私…でも、もういいや…
「ふふ…面白いね水無月さん…じゃ、行こうか…30分くらいで着くから寝ててもいいよ…おやすみ」
優しい声を耳の端に聞いて、不覚ながら…私はそのまま、本当に眠りに落ちてしまった…。
私はそう言って、初めて杉崎さんの車の助手席に乗り込んだ。
今日は旅行会の幹事として、杉崎さんと下見に行くことを約束した日の当日。
目と鼻の先ではあるが、杉崎さんが私のマンション下まで車で迎えに来てくれた。
いきさつはともかく、杉崎さんの車にまさか自分が乗ることになる日が来るとは思っていなかった私は、この日、かなり緊張していた。
「おはよう!あんまり居心地いい車じゃないかもしれないけど、乗って乗って。調節は適当にしてね?」杉崎さんはそう言って微笑む。
ドアを閉めると…完全に密室…杉崎さんが近い…。私は動揺を隠すように「はい。今日はよろしくお願いします。」とだけ言って、シートを調節した。
「うん、天気が良くて良かったよ…じゃ、出発するね」そう言って、杉崎さんは緩やかに車を発進させた。
行きすがら、観光場所を確認したり、トイレ休憩に使えるような場所をリサーチしたりして、私たちは概ね真面目に、下見を続けた。
「実はここ…行きがけに寄ったらどうかな?って思ってて…試飲もできるみたいなんだ…ちょっと寄ってもいいかな…?」
杉崎さんはそう言って、一軒の大きなワイン工場の駐車場に車を止めた。
「素敵…可愛らしい外観ですね…!」
レトロな煉瓦造りのワイン工場、その横に、お洒落なワインショップが何軒か軒を連ねていて…可愛らしい…それが私の素直な感想だった。
「ね、なんか良いよね、ここ。さ、行こ行こ…!俺は運転があるから飲めないけど、水無月さん試しに飲んでみてよ…!ね。」
杉崎さんと一緒に降り立ち、ワインショップに立ち寄ると、店員らしき女性が近付き「彼女さん、良かったら試飲どうぞ~ 無料のがこちらです、他に500円でこちらの3種も試飲もできますよ~良かったら…」と勧められる。
彼女ではないけど…と、心の中では否定しながら、勧められるままに、一杯飲むと、甘くて…少しの酸味…広がる芳醇な香り…私好みの味で、思わず声をあげる。
「美味し~!いいですね。このワイン…甘くて飲みやすい…!」そう言うと、店員さんがにっこりと微笑みながら、「そうなんです、こちらはお酒が苦手な方にも割と好まれる特に女性好みの甘めのワインとなっております~お土産などにもおすすめですよ」
「う~ん、本当に美味し…!」もう1種類、勧められるままに飲んでいると、微笑んでいる杉崎さんと目が合い、ハッとする…。
杉崎さんは一滴も飲めないのに、私ってば一人、何を…しているんだろう…。
あまりに美味しく、しばらく任務を忘れていた…。
「ご…ごめんなさい!美味しくてつい…杉崎さん飲めないのにすみません、私ばかり…」
慌ててそう告げると、
「いや、全然…むしろ飲んでもらったほうがいいよ…せっかく来たんだし…せめてどちらかが飲めないと、来た意味ないよ、ね、俺のことは気にせずどんどんいって…!」杉崎さんが楽しそうに答えてくれる。
「は…い…では…」
その後、私はそう言って、杉崎さんの言葉に甘えて2~3種類、さらに試飲してショップを後にした。
「うん、なかなか良かったね、ここ…お土産も充実してるし…。ぜひ、ここは立ち寄り先にしよう」そう言って、杉崎さんは車を発進させる。
「ふ…あ…はい…ですね…良かった良かった…」
…ちょっと、飲みすぎた…かもしれない…
しかも違う種類のワインを少量とはいえ、何杯も…
「ん…?…大丈夫?水無月さん…まさか、飲みすぎちゃった、とか…かな?」
杉崎さんが運転しながらも、心配そうに横目で私をうかがう。
「は…い、大丈夫…です…ふふふ…なんだか、ふわんとして、気持ちよくなった感じ…です、さ、次の場所へ…ゴー …」
そう言って、笑って返事をする私…。
いつもなら、年上である杉崎さんにこんな口調で話すことは絶対にない…あーあ…ダメな私…
やはり酔ってしまった…みたいだ。
空腹にワイン…ダメなパターンだったかもしれない…慣れない飲み方をしたせいか、私は少し、いやかなり…普段より陽気になっていた。
「あらら…うん、じゃあ、次は旅館!にね…そこで昼ご飯、予約してるから、まあ、ゆっくり休むといいよ…吐き気とかない…?大丈夫…?」
彼の真面目な声に対し、
「ふふ…大丈夫ですって…さあ、旅館へ向けてしゅっぱーっつ…ん…」失礼な私…でも、もういいや…
「ふふ…面白いね水無月さん…じゃ、行こうか…30分くらいで着くから寝ててもいいよ…おやすみ」
優しい声を耳の端に聞いて、不覚ながら…私はそのまま、本当に眠りに落ちてしまった…。
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