98 / 538
〜戸惑いの日々〜
彼の領域
しおりを挟む
桜マンション804。
杉崎さんから聞かされた部屋番号のボタンをマンション下のエントランスで押す。
ピンポンと小さく作動音がしたと思うと「どうぞ、」と杉崎さんの声がして自動ドアが開く。
ドキドキドキ…部屋に上がるつもりは毛頭ないものの、異常に緊張してくる。
私の申し出はやはり少しまずかった気が、今更ながらにしてくる…
彼女のいる男性に対して自宅まで差し入れを持参すると提案すること自体…
仮にもし林さんが知れば、あまりいい気がしないかもしれない…
ドアの前に立って、もう一度ピンポンを押す。
「はい。」彼の声がしたので、即座に、
「あ、水無月です!言われたもの、買ってきました。ドアノブにかけておきますね!お大事にされてください。」
そう言って、すぐに立ち去ろうとしたら、突然ガチャリと…ドアが開く。
「…水無月さん…わざわざ、ありがとう…ほんと、ごめんね…」杉崎さんがひょこんと顔を出す。
きちんとマスクをしていて…少しだけ、いつもより顔が赤い気がした。
「あ…杉崎さん、無理されないでください…どうぞ…これ…」手にしていた袋を差し出す。
「助かるよ…ちょっと良くなってきたのかお腹もすいちゃって…だからと言って買いに行く気力はなくて…あ…水無月さん良かったら…少しだけ上がっていかないかな…?って言っても、何のお構いもできないけど、珈琲くらいは…どうかな…?」
杉崎さんがそう言って微笑んだ…気がした。
マスクで口元は見えないが、目元がすごく優しくて…ドキリとする。
「え…っと…でも…」
正直私は、杉崎さんの言葉にぐらついた…
お邪魔してみたい…
普段から素敵な男性である杉崎さんのお宅にお邪魔できるなんて、まさに夢のようだ…
本心は…私の本心は…心からそう思ったのだけど…その一方で、
上がっちゃダメでしょ…仮にも彼女さんがいる独身男性のお宅に…しかもこんな夜に…事情はどうあれお邪魔なんてしちゃ…駄目でしょ…と止める自分がいた。
「もし、良ければだけど…っていうか、普通、嫌だよね…男の部屋に入るの。そうだ…風邪うつっちゃうといけないしね…ごめん、俺、無神経だった…今日はありがとう…」そう言って杉崎さんが話を終わらせた…だけど、私はまたしても、自分の気持ちに貪欲になってしまう。
「では…少しだけお邪魔します…、そうだ、買ってきたおかゆ…温めたり、私全部しますから…杉崎さんは座って大人しく待っていてください…ね!」
ニッコリ笑ってそう言うと、
杉崎さんも、「…じゃあ、よろしくお願いします…!俺、準備ができるまでおとなしく寝てます…」そう言ってにっこりと微笑む。
「じゃ…入って…」ドアを開ける彼…
「すみません、お邪魔します…」足を踏み入れる私…
私はわけもわからず高鳴る鼓動を抑えながら、彼の領域に侵入した…。
杉崎さんから聞かされた部屋番号のボタンをマンション下のエントランスで押す。
ピンポンと小さく作動音がしたと思うと「どうぞ、」と杉崎さんの声がして自動ドアが開く。
ドキドキドキ…部屋に上がるつもりは毛頭ないものの、異常に緊張してくる。
私の申し出はやはり少しまずかった気が、今更ながらにしてくる…
彼女のいる男性に対して自宅まで差し入れを持参すると提案すること自体…
仮にもし林さんが知れば、あまりいい気がしないかもしれない…
ドアの前に立って、もう一度ピンポンを押す。
「はい。」彼の声がしたので、即座に、
「あ、水無月です!言われたもの、買ってきました。ドアノブにかけておきますね!お大事にされてください。」
そう言って、すぐに立ち去ろうとしたら、突然ガチャリと…ドアが開く。
「…水無月さん…わざわざ、ありがとう…ほんと、ごめんね…」杉崎さんがひょこんと顔を出す。
きちんとマスクをしていて…少しだけ、いつもより顔が赤い気がした。
「あ…杉崎さん、無理されないでください…どうぞ…これ…」手にしていた袋を差し出す。
「助かるよ…ちょっと良くなってきたのかお腹もすいちゃって…だからと言って買いに行く気力はなくて…あ…水無月さん良かったら…少しだけ上がっていかないかな…?って言っても、何のお構いもできないけど、珈琲くらいは…どうかな…?」
杉崎さんがそう言って微笑んだ…気がした。
マスクで口元は見えないが、目元がすごく優しくて…ドキリとする。
「え…っと…でも…」
正直私は、杉崎さんの言葉にぐらついた…
お邪魔してみたい…
普段から素敵な男性である杉崎さんのお宅にお邪魔できるなんて、まさに夢のようだ…
本心は…私の本心は…心からそう思ったのだけど…その一方で、
上がっちゃダメでしょ…仮にも彼女さんがいる独身男性のお宅に…しかもこんな夜に…事情はどうあれお邪魔なんてしちゃ…駄目でしょ…と止める自分がいた。
「もし、良ければだけど…っていうか、普通、嫌だよね…男の部屋に入るの。そうだ…風邪うつっちゃうといけないしね…ごめん、俺、無神経だった…今日はありがとう…」そう言って杉崎さんが話を終わらせた…だけど、私はまたしても、自分の気持ちに貪欲になってしまう。
「では…少しだけお邪魔します…、そうだ、買ってきたおかゆ…温めたり、私全部しますから…杉崎さんは座って大人しく待っていてください…ね!」
ニッコリ笑ってそう言うと、
杉崎さんも、「…じゃあ、よろしくお願いします…!俺、準備ができるまでおとなしく寝てます…」そう言ってにっこりと微笑む。
「じゃ…入って…」ドアを開ける彼…
「すみません、お邪魔します…」足を踏み入れる私…
私はわけもわからず高鳴る鼓動を抑えながら、彼の領域に侵入した…。
0
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる