179 / 538
〜2人の距離〜
入室
しおりを挟む
静かに杉崎さんの後をついて行く…。
杉崎さんの部屋にお邪魔するのは…
あの、杉崎さんが旅館の下見の後、熱を出し、私がお土産を持って訪問した時…以来だ…
エントランスに入ると、エレベーターが降りてくるのを待っていた住人らしき女性と一瞬だけ、目が合う。
歳は40代半ばだろうか…スーパーの買物袋を片手に下げている。
「こんばんは。」杉崎さんが先にその女性に声をかけると、女性は「あ…こんばんは。お疲れ様です」そう答え杉崎さんに向かって柔らかく微笑む…。
そして一瞬、視線が私の全身に走った…ような気がした…。
心なしか、この女性もあの居酒屋の店員と同様、杉崎さんのことを少し意識しているように見えた…。
こんな素敵な男性が、こんな地味な見た目の女と共に、自宅マンションの一室へ向かうなんて…などと、驚かれているのかもしれない…。
最近、私はおかしい…。
杉崎さんと一緒にいると、いつもこのような思考に走ってしまう気がする…。
あまりに、自意識過剰…というかもしくは、被害妄想が過ぎるというか…。
エレベーターへ3人で乗り込み、その女性は6階のボタンを押す…。
杉崎さんの部屋は8階…
四角い無機質な箱が少しの機械音を立てて、私たちをそれぞれの目的の階へ運んでいく…。
「失礼します…」
6階に着くと、その女性がお辞儀をして…でも去り際、やはり私をまるで上から下まで査定するかのように瞬時に見て、自動扉の向こうへ消えていく。
杉崎さんといる限り、
もしかしたら、ずっとこうなのかもしれない…。
彼のように中身だけではなく見た目も、魅力にあふれるような男性と恋人同士になってしまうと…きっとこうなるに違いない…
もちろん、拓海もイケメンと言われる部類で、よく街中で、若い女性に視線を送られるタイプではあるが、杉崎さんにはさすがに負けるかもしれない…。
もっとも、拓海が杉崎さんの年齢位にまで…つまり、年相応の大人になれば、勝敗はわからないけれど…。
ダメだ…、私は一体…何を考えているんだろう…。
こんな時に、杉崎さんと拓海を比べてしまうことに一種の罪悪感を覚え、瞬時にその考えを打ち消した。
気付けば、ドアの前…。
ゆっくりと鍵を差し込み、ドアを開ける杉崎さん…。
本当に今日、これから杉崎さんの部屋に…上がってしまっても…いいのだろうか…。
開かれたドアの前に立ち尽くし、なかなか脚を踏み出せないでいると、
「水無月さん…?どうぞ、上がって…そんなに片付いてなくて悪いけど…」
そんな風に、斜め上から優しく声をかけられる。
「では、お邪魔します…」
玄関口に、やっと脚を踏みいれ、少しヒールが高めのパンプスを脱ぐ…。
私が入ってすぐに杉崎さんがドアを閉めたのか、背後からガチャリと施錠の音がする…
その鍵を閉めた時の金属音が、やけに耳に響く…。
どきんどきん… 心臓が鳴る…
照明は玄関先の小さなライトの点灯のみで…部屋はいまだに、薄暗いままだ…。
完全に今、ここは密室で…こんな薄暗い部屋に、二人きり…不意に、あの旅館での夜を思い出しそうになるのを、必死に抑える…。
でも、…無駄だった…。
「あっ…!」
思わず驚きで、小さく声を上げてしまう…。
私は背後から…
突然肩を引き寄せられ振り向かされて…
温かな腕に力強く、
抱きすくめられていた…。
杉崎さんの部屋にお邪魔するのは…
あの、杉崎さんが旅館の下見の後、熱を出し、私がお土産を持って訪問した時…以来だ…
エントランスに入ると、エレベーターが降りてくるのを待っていた住人らしき女性と一瞬だけ、目が合う。
歳は40代半ばだろうか…スーパーの買物袋を片手に下げている。
「こんばんは。」杉崎さんが先にその女性に声をかけると、女性は「あ…こんばんは。お疲れ様です」そう答え杉崎さんに向かって柔らかく微笑む…。
そして一瞬、視線が私の全身に走った…ような気がした…。
心なしか、この女性もあの居酒屋の店員と同様、杉崎さんのことを少し意識しているように見えた…。
こんな素敵な男性が、こんな地味な見た目の女と共に、自宅マンションの一室へ向かうなんて…などと、驚かれているのかもしれない…。
最近、私はおかしい…。
杉崎さんと一緒にいると、いつもこのような思考に走ってしまう気がする…。
あまりに、自意識過剰…というかもしくは、被害妄想が過ぎるというか…。
エレベーターへ3人で乗り込み、その女性は6階のボタンを押す…。
杉崎さんの部屋は8階…
四角い無機質な箱が少しの機械音を立てて、私たちをそれぞれの目的の階へ運んでいく…。
「失礼します…」
6階に着くと、その女性がお辞儀をして…でも去り際、やはり私をまるで上から下まで査定するかのように瞬時に見て、自動扉の向こうへ消えていく。
杉崎さんといる限り、
もしかしたら、ずっとこうなのかもしれない…。
彼のように中身だけではなく見た目も、魅力にあふれるような男性と恋人同士になってしまうと…きっとこうなるに違いない…
もちろん、拓海もイケメンと言われる部類で、よく街中で、若い女性に視線を送られるタイプではあるが、杉崎さんにはさすがに負けるかもしれない…。
もっとも、拓海が杉崎さんの年齢位にまで…つまり、年相応の大人になれば、勝敗はわからないけれど…。
ダメだ…、私は一体…何を考えているんだろう…。
こんな時に、杉崎さんと拓海を比べてしまうことに一種の罪悪感を覚え、瞬時にその考えを打ち消した。
気付けば、ドアの前…。
ゆっくりと鍵を差し込み、ドアを開ける杉崎さん…。
本当に今日、これから杉崎さんの部屋に…上がってしまっても…いいのだろうか…。
開かれたドアの前に立ち尽くし、なかなか脚を踏み出せないでいると、
「水無月さん…?どうぞ、上がって…そんなに片付いてなくて悪いけど…」
そんな風に、斜め上から優しく声をかけられる。
「では、お邪魔します…」
玄関口に、やっと脚を踏みいれ、少しヒールが高めのパンプスを脱ぐ…。
私が入ってすぐに杉崎さんがドアを閉めたのか、背後からガチャリと施錠の音がする…
その鍵を閉めた時の金属音が、やけに耳に響く…。
どきんどきん… 心臓が鳴る…
照明は玄関先の小さなライトの点灯のみで…部屋はいまだに、薄暗いままだ…。
完全に今、ここは密室で…こんな薄暗い部屋に、二人きり…不意に、あの旅館での夜を思い出しそうになるのを、必死に抑える…。
でも、…無駄だった…。
「あっ…!」
思わず驚きで、小さく声を上げてしまう…。
私は背後から…
突然肩を引き寄せられ振り向かされて…
温かな腕に力強く、
抱きすくめられていた…。
0
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる