【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～拓海～

意識

俺はその異様な光景に、愕然とする…。

「な…！！　…　う、嘘だろ……」

俺は驚いて、咄嗟に顔を近づけてまずその女に息があるかを確かめる。

「　…　すーすー　…　…　」

心からホッとした…　　

完全に、寝てるだけだ…　規則的な寝息…　

っていうか、なんでここで　寝る…？
信じられない…
寝るなら家帰ってゆっくり寝ろよと心底、思う…。

幸いにその子はスカートや下着をおろして用を足している最中ってわけでも無く…

普通に椅子の用に腰掛けているだけ。

俺は躊躇しながらもその子の肩に手をかけて、ある程度の力を込めて彼女を揺り動かす…。

「あの…！ちょっと…起きてください…！！高橋さん…！！こんなとこで寝られると困ります…！」

ゆさゆさと上半身を揺らす…大きな胸も揺れる…いや、そんなとこを見ている場合ではない…。

「…　すー　すー　…んっ　　…　」

くたりと前に下がる顔…　　
ダメだ…　ああ…もう、…どうしようもない…。
いっそこのまま、この体勢で寝かせておくか…？
いや…俺がトイレに行けなくなるし、さすがにトイレに放置はまずい…気がする…

俺は起こすのを諦め、その子の両脇に手を挟んでいったん立ち上がらせるように抱え込む…。

全身の力が抜けているためか、まあまあ重い…　葉月より全然…

「くっ…　なんなんだ、全く…」
俺は必死に彼女を引きずるようにしながら自分のベッドへ向かう。

本当は、知らない女をベッドに寝かせたくない…でも、さすがに意識がないからと言って女の子を床の上にごろんとさせておくのはどうしても、気が引ける…。

「ああ…重…」
ボスン…と、なんとかその子をベッドに下ろし、一息つく。

明日が休みで良かった…　　　けど…

俺は咄嗟に、
葉月にこの状況の説明をするかを考えた…。

だって、こんなにもおかしな事態だ…念のため
話しておきたい…

「うっ　…　んっ…」　
背後から聞こえるなんだか色気のある高い声に、俺はビクリとする…。
寝返りを打ったみたいだ。

説明はダメだ…
不可抗力とはいえ、今若い女子が俺のベッドに寝ていると葉月に話したところで、どうなる…？

不安に…不快に、させるだけだ…
俺が逆の立場なら、今すぐそいつを部屋から追い出せと逆上してしまうだろう…。

俺は諦めて頭を冷やそうと、
　　　珈琲を淹れに立ち上がった…。

　
ただ…俺のこの判断が、
やっぱり間違っていたのかもしれない…

俺は、後でそう思うようになった。


やっぱり、

　　　　葉月に言うべきだったんだ…