【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～拓海～

悪い夢

目覚めが、すこぶる悪い…

葉月が登場したことだけはうっすら覚えている…
だが、その詳細については覚えていない…

とにかく、いい夢ではなく…嫌な、夢だった…
それだけは、なんとなくわかる…　　

「ね～～拓海くん…朝ごはん、どっちがいい？和と、洋～」

俺はハッとする。
所詮、夢の話だ…　そこまで深刻に考える必要もない。

「ん…和洋、どっちでも、いいよ…」俺は目をこすりながら、答える。

そうだ、昨夜、瑠衣が酔っぱらって俺の家に乱入してきたんだった…。
それで、誘われるままに、また…瑠衣を、激しく抱いてしまったんだった…

最近、ほんと駄目だな…節操がない…

どんどん…色々なことが、ゆるくなり始めている…

最初は、抵抗していたのに…
口で…してもらうだけでも十分…満足、出来ていたのに…

瑠衣に裸で迫られたら…エッチしようって誘われたら…
俺自身、途中でやめられない…
最後までやらなきゃ気が済まなくなる…。

俺には、葉月がいるのに…
遠距離ではあるが、長年付き合っている彼女がいるのに、だ…　

ああ…しょうもないな…　俺はマジで…　駄目な、男だ。

ずっと自分は、一途でいられると思っていた…
たとえ遠距離になったとしても、葉月を裏切ることになるなんて、1パーセントも想像していなかった…。

「ね～～拓海君、卵、ないの～～？　卵…　…んー－なさげ…だな…」
瑠衣が冷蔵庫の中を見つめて、俺の方を振り返る…

「…あ…　ない、と思う…　…昨日なくなった…かも…　」

「え～～！致命的～～　もう、…ちょっと待ってて、私、取ってくるから…！」

「瑠衣…、朝飯とか適当でいいよ…　別にそこまで…しな…　あっ…！」

　　　　　　　　　　　　バタン…

ドアの、閉まる音…

決めたら速攻動くのが、瑠衣だ…

ああ…　葉月以外の女とセックスして…　こうやって彼氏彼女みたいに接して…
朝ごはん…作ってもらって一緒に食べるとか…　

ほんと、俺何やってんだろ…　

ふと、思い出した…。

そうだ…　　葉月、今何してんだろ…

昨夜、葉月はこちらからかけた電話には一切出ず…メールしても全く反応がなかった…。

ここまで反応がない…連絡がつかないのは、まあまあ、珍しいことだ…
既に返信のメッセージが来ているかもしれない…
再び携帯をつかみ、画面を開こうとした瞬間、

「あったよ～～！拓海君！！…たまご、たまご…！！」
瑠衣が息せき切って部屋に戻ってきた。

「あ…　ああ、…　ありがと、わざわざ…　」

「すごく美味しい瑠衣特製のだし巻き卵、作るから…もう少し待っててね～～」

瑠衣がニコニコと俺に笑いかける。

まあ、メールも、電話も…　ゆっくり、瑠衣が帰ってからにするか…

「ああ…　待ってる…だし巻きか…楽しみだな。」

俺はまるで瑠衣に内心の気持ちを隠すかのように、笑いかけた。