【完結・R18】鉄道の恐怖

告白

私は底知れぬ恐怖を覚えながらも、携帯を手にして店を出て、職場へ連絡を入れる。

「すみません…ちょっと今日、朝から体調が悪くて…突然すみませんが、一日お休みします…会議、すみません…リーダーに伝えてください…」
そう言うと、こちらは大丈夫…お大事に～…とだけ言って、忙しいのかあっさりと、電話を切られた…

…歯車…　そうかもしれない…いや、きっと、そうなのだろう…　

私はもともと、そんなたいした人間ではないのだ…

そうとはわかっていても…
男のその『歯車に過ぎない』という、その言葉は…

まるで、知らないうちにどこからか空気が抜けて、少しずつ小さくなっていく風船のように…私の心をもしぼませていった…

私は確かに、思った以上には、必要とされていない…男は計算なのか、これが狙いなのか、間違いなく私をそんな風に思わせた…

何者でもなく、きっとこの先も、何者にもなれない私…　所詮、私はそんな人間…
　　　なんとなく力が抜けてしまった。


席へ戻ると、男が私を見て、クスリと笑った。

「ちゃんと、戻りましたね…では、話してください…貴女の口から…聞きたい…その後に、私の話をしましょう…」

男が長い脚をゆっくりと組み直し、ずっとかけていたサングラスをおもむろに外す…

切れ長の…眼光鋭い目つきが、私をとらえる…

この男は…きっと普通ではない…

ぞっとするほどに冷たい目で、私を射抜く…
私は震えながら…ついに口を開いた。　

「私は…、…… を、しています…」

　　　　　　　　　　　男が…微笑む。

「やっと…ちゃんと言えましたね…そうだ…貴女はある男性と、数年前から…していますね…
それについて…詳しく、話してもらえますか…？」


私は観念して、ゆっくり目を閉じた。