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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜
第49話:決着の時!?シーが勝てる理由
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「まあ、シーはああ見えて、良家出身。しかも始まりの八大元老の孫だからな。いくら、党としては血統を否定しているとはいえ、やはり優遇されてきたんだ」
「はい」
「普通、我々のくらいのポジションに登り詰めるなら、修羅場の一つ二つあり、死線を何度も乗り越えている。ただ、シーはそれを、経験せずに中央政治局常務委員になってしまった。思闘も対して経験しないままな」
「実戦経験がほとんどなかったという事でしょうか」
「ああ、ボアとの闘いが実質初めてだと本人が言ってたよ」
「そうですか……」
確かに、あの時の闘い。シーはオウやボアに、比べれば、思力もさることながら、闘い自体が、拙いなとは素人の俺が、見てても感じた事だ。
「だが、その思闘をシーは乗り越えた。その時の闘いと何か違う事はないかな。その思闘の目撃者はルーだけだ」
オウキに言われて、俺はシーを改めて見た。
ボアの激しい攻撃に、防戦しながらも、遠隔で思力の塊である黒球をボアに向けて牽制している。
防戦一方なのは同じだか、思力装をはためかせながら、舞うその姿は、以前よりも洗練され美しい。
そこで、俺は気付いた。思力装のデザインが全く違う事を。
「思力装が、美しくなってます。前は、ただの布を羽織ったようなものでしたが、今回はデザインがちゃんとあって美しいです」
「……なるほどな。シーのやつ、見た目には無頓着だからな。前はただの布みたいなもんか。それは傑作だ。ま、それに比べればだいぶマシか」
「は、はい。い、いえ、マシどころかとても美しいです」
「そうか?まあ、私の思力装に比べたら、田舎出身のお上りさんみたいな野暮ったいデザインだがな」
そう言ってオウキは豪快に笑った。
オウキの思力装が美しいのは否定できない事実だが、こんな時に張り合わなくてもいいだろうに。
「ま、思力装の美しさはある意味強さの証さ。思闘を乗り越えてシーは強くなったのだ。その後、私も大分特訓してあげたしな」
がさつなオウキの特訓を受けるなんて、考えただけでしんどそうだが、シーはそれも乗り越えたのだろう。
だから、この数ヶ月で、シーは強くなった。
「つまり、ボアは、弱くなり、シー様は強くなったと。それでこの勝負はシー様が勝つと」
「いや、それだけなら五分、いや、シーが分が悪いかな。ボアは、なかなかやるな。本当に闘いたかったよ。ただ、それでもこの勝負でボアは、負ける」
シーの方が分が悪いと言っておきながら、オウキは、シーが勝つことを微塵も疑っていない。
そんなオウキがニヤケ顔をこちらに向けて言った。
「それはな、ルーの存在だ」
「わ、私の?でも、私は助けなくていいと、さきほど……」
「ああ、ルーの力は必要ないさ。ただ、ルーがここにいる。それだけで絶対負けないだろう。負けない事が分かってる闘いに勝てない道理はないさ」
「は、はあ……」
「思力は、心の強さだ。気の持ちようが大きく影響するんだよ。絶対負けないのだから、その分、思いっきり自分の思力を解放できる。」
そう言ってオウキは二度三度俺の肩を軽く叩いた。
俺の存在が認められたようで、単純に嬉しかった。
「そろそろ決着かな」
オウキのつぶやきと共に、辺りは急に明るくなった。
ボアが黄金に輝く無数の兵隊を思力で作ったのだ。
思界もボアの支配領域が専有しつつある。
シーの漆黒の思界を、切り裂くように無数の兵がシーに突撃する。
しかし、シーにたどり着く前に、その兵達は、足元に開いた暗闇に飲み込まれていく。
その暗闇からは地獄の亡者のような腕が何本も伸びて、兵に絡みつき、地獄へ落とすかのように飲み込んでいく。
そんな後景を意に返すことなく、ボアは、思力で顕現したであろう黄金に輝く白馬に跨り、シーに向かっていった。
白馬は、兵たちを飛び越え一瞬でシーに接近する。
ボアが、戟を振りかぶり強烈な一撃をシーに食らわせようとしている。
自信に満ち溢れたその顔は、戟を振り下ろした直後、驚愕した表情になる。
振り下ろした戟は、真ん中から真っ二つなっていた。
その顔前をシーが飛びかかる。
手には漆黒の細剣を握っている。
ボアの戟もそれで切ったのだろう。
渾身の一撃が空振りに終わったボアは、防御する術もない。
シーは、そのボアの喉元に細剣を差し貫いた。
同時にボアの足元からは、黒い腕が無数に湧き、ボアを地獄に引きずり込むようにボアに、絡みつく。
白馬は消え、ボアを地面に伏せられる。
そこに三本暗い矢の様な思力が突き刺さる。
決着は前回の闘いと同様だった。
そして、ボアの思界が消え、シーの思力である漆黒の暗闇が辺りを支配する。
何も見えない漆黒の中で、シーの白い顔だけが浮かび上がる。
冷たく、無機質で、畏ろしく、そして、美しい。
そんなシーの白い顔と対称的な赤い雫がシーの片方の目から流れ落ちた。
まるで血の涙を流すように。
「はい」
「普通、我々のくらいのポジションに登り詰めるなら、修羅場の一つ二つあり、死線を何度も乗り越えている。ただ、シーはそれを、経験せずに中央政治局常務委員になってしまった。思闘も対して経験しないままな」
「実戦経験がほとんどなかったという事でしょうか」
「ああ、ボアとの闘いが実質初めてだと本人が言ってたよ」
「そうですか……」
確かに、あの時の闘い。シーはオウやボアに、比べれば、思力もさることながら、闘い自体が、拙いなとは素人の俺が、見てても感じた事だ。
「だが、その思闘をシーは乗り越えた。その時の闘いと何か違う事はないかな。その思闘の目撃者はルーだけだ」
オウキに言われて、俺はシーを改めて見た。
ボアの激しい攻撃に、防戦しながらも、遠隔で思力の塊である黒球をボアに向けて牽制している。
防戦一方なのは同じだか、思力装をはためかせながら、舞うその姿は、以前よりも洗練され美しい。
そこで、俺は気付いた。思力装のデザインが全く違う事を。
「思力装が、美しくなってます。前は、ただの布を羽織ったようなものでしたが、今回はデザインがちゃんとあって美しいです」
「……なるほどな。シーのやつ、見た目には無頓着だからな。前はただの布みたいなもんか。それは傑作だ。ま、それに比べればだいぶマシか」
「は、はい。い、いえ、マシどころかとても美しいです」
「そうか?まあ、私の思力装に比べたら、田舎出身のお上りさんみたいな野暮ったいデザインだがな」
そう言ってオウキは豪快に笑った。
オウキの思力装が美しいのは否定できない事実だが、こんな時に張り合わなくてもいいだろうに。
「ま、思力装の美しさはある意味強さの証さ。思闘を乗り越えてシーは強くなったのだ。その後、私も大分特訓してあげたしな」
がさつなオウキの特訓を受けるなんて、考えただけでしんどそうだが、シーはそれも乗り越えたのだろう。
だから、この数ヶ月で、シーは強くなった。
「つまり、ボアは、弱くなり、シー様は強くなったと。それでこの勝負はシー様が勝つと」
「いや、それだけなら五分、いや、シーが分が悪いかな。ボアは、なかなかやるな。本当に闘いたかったよ。ただ、それでもこの勝負でボアは、負ける」
シーの方が分が悪いと言っておきながら、オウキは、シーが勝つことを微塵も疑っていない。
そんなオウキがニヤケ顔をこちらに向けて言った。
「それはな、ルーの存在だ」
「わ、私の?でも、私は助けなくていいと、さきほど……」
「ああ、ルーの力は必要ないさ。ただ、ルーがここにいる。それだけで絶対負けないだろう。負けない事が分かってる闘いに勝てない道理はないさ」
「は、はあ……」
「思力は、心の強さだ。気の持ちようが大きく影響するんだよ。絶対負けないのだから、その分、思いっきり自分の思力を解放できる。」
そう言ってオウキは二度三度俺の肩を軽く叩いた。
俺の存在が認められたようで、単純に嬉しかった。
「そろそろ決着かな」
オウキのつぶやきと共に、辺りは急に明るくなった。
ボアが黄金に輝く無数の兵隊を思力で作ったのだ。
思界もボアの支配領域が専有しつつある。
シーの漆黒の思界を、切り裂くように無数の兵がシーに突撃する。
しかし、シーにたどり着く前に、その兵達は、足元に開いた暗闇に飲み込まれていく。
その暗闇からは地獄の亡者のような腕が何本も伸びて、兵に絡みつき、地獄へ落とすかのように飲み込んでいく。
そんな後景を意に返すことなく、ボアは、思力で顕現したであろう黄金に輝く白馬に跨り、シーに向かっていった。
白馬は、兵たちを飛び越え一瞬でシーに接近する。
ボアが、戟を振りかぶり強烈な一撃をシーに食らわせようとしている。
自信に満ち溢れたその顔は、戟を振り下ろした直後、驚愕した表情になる。
振り下ろした戟は、真ん中から真っ二つなっていた。
その顔前をシーが飛びかかる。
手には漆黒の細剣を握っている。
ボアの戟もそれで切ったのだろう。
渾身の一撃が空振りに終わったボアは、防御する術もない。
シーは、そのボアの喉元に細剣を差し貫いた。
同時にボアの足元からは、黒い腕が無数に湧き、ボアを地獄に引きずり込むようにボアに、絡みつく。
白馬は消え、ボアを地面に伏せられる。
そこに三本暗い矢の様な思力が突き刺さる。
決着は前回の闘いと同様だった。
そして、ボアの思界が消え、シーの思力である漆黒の暗闇が辺りを支配する。
何も見えない漆黒の中で、シーの白い顔だけが浮かび上がる。
冷たく、無機質で、畏ろしく、そして、美しい。
そんなシーの白い顔と対称的な赤い雫がシーの片方の目から流れ落ちた。
まるで血の涙を流すように。
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