好きだといわせたい

６話 BL営業

　それから、BLドラマの撮影は始まり、忍との関係も続いた。表向きはBL営業、演技をしていない本当の彼を心では欲している。

「俳優業は、このドラマが初めて？」
「ううん、実は去年、主演映画を撮ったよ」
「すごいな」
「うちの事務所制作の映画だけど、監督が有名な人で、僕はゴリ押ししてもらった」
　枕営業で、とは忍は言わなかった。
「黎は？」
「前に映画の脇役で出たことある。でも、あんまり目立つ役じゃなかった」
「僕、映画は結構好きで、黎が出演してた映画も実は観たことあるよ。またああいう作品にも出てほしいな～」
「基本的に恋愛モノは出ない方向だから、この撮影が終わったら、俺は事務所が制作に関わる以外の作品に多く出ることになると思う」
「僕は事務所が関わる作品に出演する契約しかしてないから、他の作品には契約を変えない限り出ないよ。じゃあ、共演はこれで最後になるかもね？　続編もできたら良いのに」
「もう続編撮りたいの？」
「うん、黎と一緒にいたいもん」
「もしかして、もうBL営業してる？」
「ふふ、本心だよ？」
　BL営業というのは、BLドラマに出演する俳優同士が番宣、ひいてはSNS等のファンから見える範囲の私生活でもイマジナリーカップルが現実に存在しているかのように見せることらしい。BLドラマが流行っている他のアジア圏ではあるようだが、日本ではあまり聞いたことがない。だが、俺が所属する事務所は、普通の恋愛作品だけでなくBL作品にも力を入れており、事務所が制作に関わる映画・ドラマに出演する所属タレントには、そういったプロモーション活動をするように契約書を書かせている。