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10話 噂話
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岡部照は何度か共演したことがある俳優だ。俺がプライベートでも会う俳優は少ないが、その一人。芸能人なのにも関わらず、岡部は畏まった場所は非常に苦手で、人が集まる大衆居酒屋が好きらしく、「焼き鳥食いに行こうー」などと、今日みたいによく連絡が来る。
「もう次の映画の依頼も来てるとか、黎が急に売れっ子に! 深夜枠の単発とはいえ、局が力を入れてる『Difficulty』は注目作だろ。忍もすげえ依頼来てそう」
実際、BLドラマは、アジア圏を中心にSNSで注目を浴びている。だから、海外展開も視野に入れて、『Difficulty』は制作されているようだった。とはいえ、大衆居酒屋で飲んでも人が寄ってこないくらいには、出演俳優は無名なので、このドラマの評価が今後に関わってくると言える。
「忍には、芝居の仕事は殆どさせないつもりらしい」
「何で?」
「CMとかモデルを本人もやりたいみたいだから」
「へー。美しいもんな。モデルって感じするわ」
「元々、モデル志望だったみたいだし」
「でも、新人なのに仕事断って大丈夫か? つーか枕営業してるって噂聞いたけど、忍が」
「噂だろ」
「根も葉もない噂が出てくるのが、この業界だからな」
この間目撃した忍の枕営業のことを事務所の社長に問い詰めようとしたら、躱された。(逃げられた。)頭の回転は速そうだが、軽薄な印象がある社長にこのまま付いて行って大丈夫か、たまに考えることがある。
「そういえばさ、『Difficulty』も濃厚なラブシーンあるって聞くけど、去年撮影してた忍の主演映画、女優との絡みがどエロいんだろ? しのってそういう路線で行くん?」
「社長の趣味かもな」
去年、「他の俳優ともっと仲良くしろ!」と社長から怒られたので、岡部を誘って、三人で食事をしたことがある。岡部は、「黎って無愛想だけどめっちゃ良い奴なんですよー」と空気を読んで力説してくれた。
「あのイケメン社長、忍のこと大好きだもんな。……もう襲ってたりして?」
「そんなことあったら許さない」
「まさか、冗談! にしてもさー、お前らの事務所ってイケメンばっかだけど、どういうこと?」
「……社長の趣味かもな」
「黎の事務所が制作に関わってる作品って、恋愛モノばっかだもんな。美丈夫集めて、恋愛モノ作りたかったって感じ?」
「俺は恋愛モノ、出たくないと言った」
「黎は恋愛ドラマって感じしないよなー」
「BLは社長に人気獲得の為だと押し切られた」
「また、次も押し切られそうだけど! それで、今は相手役の美人に夢中って感じ?」
「変な言い方するな」
「またまたー、毎晩のように家に連れ込んでるくせに。今日は断られちゃったみたいだけど」
「そういうことはしてない」
「本当か?」
「ああ」
「撮影現場の控え室で、羞恥プレイとか? そそるな」
「やるわけないだろ」
淫らな忍の姿を想像して頬を紅潮させると、揶揄うように岡部が笑う。
「だよなー、バレたらクビになるからやめろよ?」
「……本当に忍とはそういう関係じゃない」
「それにしては、構いすぎじゃなーい?」
「忍は家を出てから、一度も両親に会ってない。寂しいんだと思う。だから、一緒にいるだけ」
「ふーん」
それ以上追求する気はないのか、岡部は自分の次の出演作の話題を話し始めた。
「もう次の映画の依頼も来てるとか、黎が急に売れっ子に! 深夜枠の単発とはいえ、局が力を入れてる『Difficulty』は注目作だろ。忍もすげえ依頼来てそう」
実際、BLドラマは、アジア圏を中心にSNSで注目を浴びている。だから、海外展開も視野に入れて、『Difficulty』は制作されているようだった。とはいえ、大衆居酒屋で飲んでも人が寄ってこないくらいには、出演俳優は無名なので、このドラマの評価が今後に関わってくると言える。
「忍には、芝居の仕事は殆どさせないつもりらしい」
「何で?」
「CMとかモデルを本人もやりたいみたいだから」
「へー。美しいもんな。モデルって感じするわ」
「元々、モデル志望だったみたいだし」
「でも、新人なのに仕事断って大丈夫か? つーか枕営業してるって噂聞いたけど、忍が」
「噂だろ」
「根も葉もない噂が出てくるのが、この業界だからな」
この間目撃した忍の枕営業のことを事務所の社長に問い詰めようとしたら、躱された。(逃げられた。)頭の回転は速そうだが、軽薄な印象がある社長にこのまま付いて行って大丈夫か、たまに考えることがある。
「そういえばさ、『Difficulty』も濃厚なラブシーンあるって聞くけど、去年撮影してた忍の主演映画、女優との絡みがどエロいんだろ? しのってそういう路線で行くん?」
「社長の趣味かもな」
去年、「他の俳優ともっと仲良くしろ!」と社長から怒られたので、岡部を誘って、三人で食事をしたことがある。岡部は、「黎って無愛想だけどめっちゃ良い奴なんですよー」と空気を読んで力説してくれた。
「あのイケメン社長、忍のこと大好きだもんな。……もう襲ってたりして?」
「そんなことあったら許さない」
「まさか、冗談! にしてもさー、お前らの事務所ってイケメンばっかだけど、どういうこと?」
「……社長の趣味かもな」
「黎の事務所が制作に関わってる作品って、恋愛モノばっかだもんな。美丈夫集めて、恋愛モノ作りたかったって感じ?」
「俺は恋愛モノ、出たくないと言った」
「黎は恋愛ドラマって感じしないよなー」
「BLは社長に人気獲得の為だと押し切られた」
「また、次も押し切られそうだけど! それで、今は相手役の美人に夢中って感じ?」
「変な言い方するな」
「またまたー、毎晩のように家に連れ込んでるくせに。今日は断られちゃったみたいだけど」
「そういうことはしてない」
「本当か?」
「ああ」
「撮影現場の控え室で、羞恥プレイとか? そそるな」
「やるわけないだろ」
淫らな忍の姿を想像して頬を紅潮させると、揶揄うように岡部が笑う。
「だよなー、バレたらクビになるからやめろよ?」
「……本当に忍とはそういう関係じゃない」
「それにしては、構いすぎじゃなーい?」
「忍は家を出てから、一度も両親に会ってない。寂しいんだと思う。だから、一緒にいるだけ」
「ふーん」
それ以上追求する気はないのか、岡部は自分の次の出演作の話題を話し始めた。
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