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26 夢みたいな
息がかかるほど近い距離。
長い睫毛に縁取られた青の瞳がとても綺麗で、じっと見つめてしまったまま目が離せない。
「ずっと探してた、私の特別。一生大事にする、それに君が欲しいものはどんな事をしても手に入れよう、だから私に愛されて一生この腕の中で……囚われていて?」
鼻先が触れる。
そして細く長い指がゆっくりと唇を撫でたから、私は促されるように瞳を閉じた。
ただ触れるだけの優しい口づけ。
『泣いて叫んでも止めない』
そんな脅すような事をカシウス様は、私に言ってらっしゃったのに。
触れた手は優しくて、温かくて。
唇は蕩けそうなくらい甘く切なくて。
優しい声音で何度も『愛してる』と言われて。
つい勘違いをしてしまいそうになった。
気遣いで『好き』と言ったわけじゃなく、カシウス様は本気で私が好きなんじゃないかと。
そんな夢みたいな事が私に起こるはずないのに。
「あの、カシウス様……? こんなに優しくされたら私、勘違いしてしまいそうになります」
「ん……勘違い?」
絶え間なく優しい口づけを落とすカシウス様に、手を突っ張って待ったをかける。
気持ち的にはもっとして欲しい所だが、これじゃ全然喋れない。
「貴方が本当に私を好きなんじゃないかって、そんなことあるはず……ないのに」
こんな芸術品みたいな美貌を持つ高貴な男性が、私を本気で好きになるなんて奇跡は起こらない。
けどこんなに言葉や行動、態度で表現されると。
本当にそうなんじゃないかと思ってしまう。
「どうして私がアンジェリークの事を好きじゃないって、……君は思うの?」
「いやだって私はっ……! 容姿は平凡で美人ではありませんし……顔も身体も傷だらけで……」
「アンジェリークの顔は私好みでとっても可愛らしいよ? それに傷はさっき全部癒したからどこにも無いね? つるつるすべすべで、いつまでも触っていたくなるくらい気持ちいい……」
待ったをかけた私の手を優しく握って退かし。
再び口づけをカシウス様は落としてきて、とても幸せそうに微笑まれます。
「そ、それに魔法も碌に使えなくて優秀とは言えません! 唯一私が使える魔法も、使い勝手がすごく悪いものでして……」
「魔法? 使えたらそりゃ便利だけど、貴族令嬢である君が魔法を使う必要って……あるの?」
「え……それは……」
「あ、そういえばアンジェリークはどんな魔法使えるの? 君の事、全部私は知りたいな?」
「……私の魔法は魔力を吸収します」
「え……?」
「えと、こんな感じです……」
カシウス様の頬を撫でて余分な魔力を吸収する、魔力は多すぎても少なすぎても身体に良くない。
……さすがは皇族、魔力が多い。
それに余分な魔力もオーギュスト様とは桁が違う。
これじゃお身体にも悪い。
「え……なに、これ?」
「私の魔法は対象の過剰な魔力を吸収し精神を落ち着かせるというもので、本来は荒れ狂う魔物に対して使うもので……何の役にも立たない微妙な魔法です」
「アンジェリーク……君はいったい何を言ってるの? その魔法はね、とても難しいものなんだよ!?」
「え……?」
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