婚約者は私を愛していると言いますが、別の女のところに足しげく通うので、私は本当の愛を探します

早乙女 純

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十話

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 私たちは1日宿で休んだあと、再び馬車に乗りエンツェンスベルガー城を目指して進んでいた。

「これからの予定を説明させていただきます」

 アインスがそう言うと、ゴーティエ公、アレクサンドラがこちらを向いた。

「まず、今日の昼にエンツェンスベルガー城に到着いたします。その後、エンツェンスベルガー家の方々と昼食を共にしていただきます。そして、そのままエンツェンスベルガー城に滞在していただくという形になりますがよろしいでしょうか?」

「あぁ、それで構わない」

 ゴーティエ公がそう言うと会話に割り込むようにアレクサンドラが尋ねてきた。

「ねぇ、バルトロメウス様はどのような女性が好みかしら?」

「はい。バルトロメウス様は儚く弱々しい女性が好みでございます。それにアレクサンドラ様にようにお美しくお姫様のような容貌が好きであるとおっしゃておりました」

「そう」

 私がそう答えるとアレクサンドラは何か企むような表情でそう言った。彼女は百戦錬磨の悪女だ何か素晴らしい考えがあるのだろう。

 そんな感じに私たちはバルトロメウスについてアレクサンドラの質問を答え続けた。そうするとエンツェンスベルガー城に着いた。城の前ではエンツェンスベルガー家の人々が待っていた。

「ようこそ、お待ちしておりました。ゴーティエ公、アレクサンドラ嬢」

 エンツェンスベルガー卿がそう言った。その隣にはバルトロメウスがいてアレクサンドラに見惚れている。

「うむ、歓迎に感謝します。エンツェンスベルガー卿」

「バルトロメウス見惚れないで、アレクサンドラ嬢をエスコートしろ」

 エンツェンスベルガー卿がそう言うとバルトロメウスはアレクサンドラに近づいて騎士のように片膝をついてアレクサンドラの手をとった。なんとも気障な振る舞いを見てドン引きをしてしまった。いつの時代の物語だと言わんばかりで、これではアレクサンドラも引いてしまうと思って、見てみるとニコニコと微笑んで嬉しそうであった。私には彼らの感性は理解できなかった。アインスも理解できないという表情で彼らを見ていた。そして、バルトロメウスが立ち上がると、突然にアレクサンドラがバルトロメウスに向かって倒れ出したのだ。

「あぁ、申し訳ありません。バルトロメウス様、少しめまいがしてしまいまして」

 とアレクサンドラが言った。私たちは『え!?』という感情に襲われた。国を傾けたアレクサンドラがこのような幼稚な戦法を使うとは思わなかったのだ。しかし、バルトロメウスに効果があったようで鼻の下を伸ばして視線はアレクサンドラの胸にいっていた。そして本人はキメ顔をしているつもりなのか気障なセリフをはいた。

「いえ、問題ありません。アレクサンドラ嬢、どうやら長旅の疲れが出てしまったのでしょう。あぁ~、このようなか弱いアレクサンドラ嬢をこのような目に合わせるなんて!! 革命軍の奴らが許せません。私が討ち取って見せましょう! まずは私が控え室にご案内いたしましょう」

 それでバルトロメウスはアレクサンドラをお姫様抱っこして城の中に入っていった。ゴーティエ公もエンツェンスベルガー卿も彼らの会話や振る舞いに違和感はなかったのかお互いにいい話だと言わんばかりに頷いていて城に入っていった。

 私たちは終始困惑していた。私は

(どこにいい話の要素があった!?)

 と叫びたい。アインスも目を細めて彼らを見ていた。そして、周りに誰もいなくなった。すると

「……お嬢、俺たちがいなくても問題なかったんじゃないですか?」

 私も少し思ったことをアインスに言われた。

「確かにそう思ってしまうほど、チョロかったわね。だけど、ここからが本番よ」

「で、これからどうします?」

「そうね、すでに城にいる工作員がゴーティエ家の隠し財宝についてを噂流しているはずだから、あとは彼ら勝手に都合よく勘違いしてもらうだけよ。だから城はその工作員に任せて、私たちは旧公国に行って上層部に交渉に行くわよ」

 私がそう言うとアインスは不安そうに言った。

「勝手に交渉しにいって大丈夫なんですか? 国際問題になりますよ」

「大丈夫よ。先にである私のお父様が旧公国にいるから、私たちはお父様に情報を渡すだけよ。あとはお父様が私たちの都合のいいようにやってくださるわ」

「なるほど、それなら安心ですね」

 そして、私たちは馬車に乗り旧公国に向かうのであった。

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