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十六話
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私はメイド達に流れるように違う部屋に連れられて行った。そして、かなりの距離を進みある部屋に入れられた。中は衣裳部屋なのか多くのドレスが所狭しと飾られていた。
(誰の衣装部屋でしょう? なんで私がここに連れられて来たのかしら?)
私は頭の上にたくさんのハテナを浮かべていた。すると私をここに連れて来た四人のメイドたちが一列に並び、その真ん中にいた中年のメイドが一歩前に出て
「ご挨拶が遅れました。私はノートン家に使えております。マリアと申します。よろしくお願い致します」
と言って礼をした。そして、続いて他のメイド達も名乗り礼をした。メイド達はマリアを除いて左からアビー、カーラ、ケイシーと言った。アビーは背が低く子供のような可愛さがある金髪の娘で、カーラは長い赤髪を後ろで結んでおり気が強そうな風貌をした娘だった。そして、ケイシーはセミロングの茶髪でおっとりとした感じのお姉さんだった。
「えぇ、よろしく。それでここは?」
私は思っていた疑問をマリア達に聞いた。アビーが手を大きく広げてニコニコして
「ここは今回リシャール公で開かれる夜会のために、ベルラント様がアデリナ様ために急遽用意したドレスです」
そう言ったのだ。
「えぇ?」
私はアビーの発言がすんなりと頭に入ってこなかった。少し呆然としてると、
「ですから、ベルラント様が全て貴方様のためにご用意したものです」
カーラは私に現実を見ろと言わんばかりの物言いでそう言った。
「……でも、昨日の今日ですよ? それに私がここまでされる理由がありません」
「そうです~。昨日アーレンス家の使いが帰ってすぐに、旦那様が帝都中の仕立て屋を呼び用意させたのです。それにしても時間に余裕があれば、オーダーメイド品をご用意できたのですが~。既製品のみご用意になってしまいました」
ケイシーは残念だわ~といった感じで頬に手を当てた。
「そうですよ!! アデリナ様は本当にベルラント様に愛されおられますね! 一回の夜会のためにこれだけのドレスをご用意されるのですから。それにしても女性との浮ついた話を一つも聞いたことのなかった旦那様に本命がいたとは知りませんでした。それに……」
そして、アビーはさらに話し続けてカーラやケイシーも混ざりベルラント様と私の恋物語を話し始めた。そのような事実は一切ないのだが、と思いながら私はドレスをもう一度見た。パッと見た感じ少なくとも50着以上はあるだろう。どれも最近の流行を取り入れたながら、しっかりとした気品を感じさせる素晴らしい作品達であった。さぞかし高名なデザイナー達がデザインしたのだろう。手で素材を確認してみると手触りがよく生地も良いものであった。するとマリアはそろそろ本題に入ろうと言った感じで手を叩いた。
「さて、貴方達おしゃべりばかりしていないで、手伝ってちょうだい。アデリナ様に試着してもらいますから。アデリナ様はこちらへ」
マリアにされるがままに私は試着室に入ったのだった。
(誰の衣装部屋でしょう? なんで私がここに連れられて来たのかしら?)
私は頭の上にたくさんのハテナを浮かべていた。すると私をここに連れて来た四人のメイドたちが一列に並び、その真ん中にいた中年のメイドが一歩前に出て
「ご挨拶が遅れました。私はノートン家に使えております。マリアと申します。よろしくお願い致します」
と言って礼をした。そして、続いて他のメイド達も名乗り礼をした。メイド達はマリアを除いて左からアビー、カーラ、ケイシーと言った。アビーは背が低く子供のような可愛さがある金髪の娘で、カーラは長い赤髪を後ろで結んでおり気が強そうな風貌をした娘だった。そして、ケイシーはセミロングの茶髪でおっとりとした感じのお姉さんだった。
「えぇ、よろしく。それでここは?」
私は思っていた疑問をマリア達に聞いた。アビーが手を大きく広げてニコニコして
「ここは今回リシャール公で開かれる夜会のために、ベルラント様がアデリナ様ために急遽用意したドレスです」
そう言ったのだ。
「えぇ?」
私はアビーの発言がすんなりと頭に入ってこなかった。少し呆然としてると、
「ですから、ベルラント様が全て貴方様のためにご用意したものです」
カーラは私に現実を見ろと言わんばかりの物言いでそう言った。
「……でも、昨日の今日ですよ? それに私がここまでされる理由がありません」
「そうです~。昨日アーレンス家の使いが帰ってすぐに、旦那様が帝都中の仕立て屋を呼び用意させたのです。それにしても時間に余裕があれば、オーダーメイド品をご用意できたのですが~。既製品のみご用意になってしまいました」
ケイシーは残念だわ~といった感じで頬に手を当てた。
「そうですよ!! アデリナ様は本当にベルラント様に愛されおられますね! 一回の夜会のためにこれだけのドレスをご用意されるのですから。それにしても女性との浮ついた話を一つも聞いたことのなかった旦那様に本命がいたとは知りませんでした。それに……」
そして、アビーはさらに話し続けてカーラやケイシーも混ざりベルラント様と私の恋物語を話し始めた。そのような事実は一切ないのだが、と思いながら私はドレスをもう一度見た。パッと見た感じ少なくとも50着以上はあるだろう。どれも最近の流行を取り入れたながら、しっかりとした気品を感じさせる素晴らしい作品達であった。さぞかし高名なデザイナー達がデザインしたのだろう。手で素材を確認してみると手触りがよく生地も良いものであった。するとマリアはそろそろ本題に入ろうと言った感じで手を叩いた。
「さて、貴方達おしゃべりばかりしていないで、手伝ってちょうだい。アデリナ様に試着してもらいますから。アデリナ様はこちらへ」
マリアにされるがままに私は試着室に入ったのだった。
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