婚約者は私を愛していると言いますが、別の女のところに足しげく通うので、私は本当の愛を探します

早乙女 純

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十七話

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 私はくたくたであった。50着以上のドレスを着たのだ。そして、メイド達とあーでも無いこーでも無いとわちゃわちゃ話しながら着替えた。最初は楽しいと感じていたが段々と疲れていった。ドレスを着るという作業は意外にも疲れるものなのだ。私がぐったりとソファに座って休んでいるとマリアが話しかけて来た。

「アデリナ様。気に入ったドレスはございましたか? まず5着ぐらいに絞りたいのですが」

 私は良いと思ったドレスを指さした。そこから、さらに1着を選ぼうとしたが、その選んだドレス達はどれも素晴らしく選べずに悩んでいた。

「そうですね。どれもお似合いでしたね。ここは! あれしか無いですよ!」

 アビーはそう言って人差し指だけを出して私に指を差した。するとカーラがアビーの頭を叩いたのだ。

「こら! お嬢様に指を差すなんて失礼でしょう。失礼しました。アデリナ様」

 そう言ってカーラはアビーの頭を掴み一緒に頭を下げた。アビーはやっちゃったという表情をして言った。

「失礼しました」

「えぇ、気にしなくていいわ。それよりもアビーは何かいい提案があるんでしょう?」
 
 私がそう言うとアビーは目をキラキラして

「そうですよ!!」

 と言って私のパーソナルスペースを越え至近距離まで近づいた来た。

「ベルラント様にお聞きすればいいのです! きっとアデリナ様に合ったドレスを選んでくださいます!」

 アビーは続けてそう言った。するとそれはいい考えだわとケイシー言い私のほうを向いて

「アデリナ様~。私が今すぐベルラント様をお呼びして来ますね~」

 と言ってそそくさと出て行った。

 「ちょっ……」

 私はおっとりとしたケイシーのあまりの機敏さに驚き止めることができなかった。宙に浮いた手のやり場を失ってしまった。

「もう、ケイシーはフットワークが軽いんだから」

 カーラはケイシーの行動力に呆れて言った。

「えーと、あのー」

 私はどうしたらいいか分からず言葉にならない声でそう言った。マリアもにこりと微笑んで見守るだけだった。

 時間が幾ばくか経ち、アルマンに引っ張られるようにベルラント様が中に入って来た。その後ろにはニヤニヤしたケイシーをがいた。

「旦那様、観念してくださいませ。さあ」

 アルマンがそう言ってベルラント様を私の前に連れて来た。ベルラント様はなかなか私に顔を合わせずそっぽを向いていた。さっきの執務室にいたときと同じ空気だ。周りのメイド達もアルマンもニヤニヤ見てるだけで助けてくれる気配がない。仕方がなく私がその空気を破った。

「あの、ベルラント様。ドレスありがとうございました。この5着まで決まったのですが、1着に絞れないのです。どれが良いでしょうか?」

 ベルラント様は私をチラリと見て

「1着1着ドレスを着て見せてくれ」

 とやっぱり顔を合わせずそう言った。私は言われるがままに5着を順に着てベルラント様に見せて行った。ベルラント様は腕を組み私のドレス姿を見ていた。でも視線だけは合わせてくれない。

「2番目のドレスだ」

「かしこまりました」

 マリアにそう言ってベルラント様はその場から逃げるように部屋を出て行ってしまった。

「これでドレスは決まりましたね! せっかくですからベルラント様との馴れ初めをお聞かせください!」

 するとアビーがそう言い出した。それがきっかけで私はメイド三人娘たちから質問責めを喰らう羽目にあった。しかし、私もどうしてこのような状況になっているのか分からなず、たじたじに答えていった。彼女らは楽しそうに妄想を繰り広げて私とベルラント様の物語を作っていった。それは私が自宅に帰るまで続き、私はひたすらアビー達に翻弄され続けることになるのであった。
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