婚約者は私を愛していると言いますが、別の女のところに足しげく通うので、私は本当の愛を探します

早乙女 純

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十九話

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 光陰矢の如しである。ノートン公爵邸でのことがあった次の日から私は夜会の準備に追われていた。今回の夜会の準備として、私は友好のある家々の令嬢達とのお茶会を開き評判の悪い令嬢子息の情報交換をしていた。話を聞く限りだと、やはり多くの不良貴族と呼ぶべき人物達が今回のリシャール公の夜会に参加するようだ。大物だと、デュアメル公爵家次男アダン様やバリバール侯爵家ドリアーヌ様である。

 アダン様は放蕩子息を大勢連れて帝都で好き放題してる方でかなりの好色家であり、泣かせられた令嬢は数知れないとのことだ。さらにデュアメル家自体も家格は帝国でもトップクラスだが、近年の社会動向に付いて来れず借金まみれで超貴族主義で排他的な家であり超不良物件である。私たち令嬢が一番に気を付ける人物である。もちろんその取り巻きも要注意人物だ。

 ドリアーヌ様は傲慢が服を着て歩いているような人物である。この方は自分の気に食わないものは全て排除したがるのだ。私が付き合いでドリアーヌ様のお茶会に行ったときだ。そのお茶会は十数人くらいの規模でバリバール侯爵邸の庭で行われた。そこではほとんどが彼女の派閥の令嬢達であり、私のような他派閥の令嬢達が少数であった。私や他派閥の娘たちは息苦しい思いをしながらテキトーに愛想笑いをしてやり過ごそうとしていた。しかし、私と同じ境遇にいる令嬢の一人がドリアーヌ様が嫌う話題を上げてしまったのだ。それはちょっとした色恋沙汰の話題でよくある些細な話であった。それを聞いたドリアーヌ様はなぜか怒り狂いその話題を出した令嬢を叩き倒し滅多打ちにした。ドリアーヌ様派閥の令嬢は顔を蒼ざめていたが、その情景から目を背けるように何事もなかったように話しだしたていた。私もその娘を助けたかったが、家とあまり知らない令嬢を同じ天秤に乗せることは出来なかった。他の令嬢も同じ様子である。その令嬢の悲鳴はドリアーヌ様が殴り疲れるまで続きその後、その令嬢はお茶会から追い出された。その令嬢はそれ以来社交界で姿を現すことはなくなった。なんとも酷い話である。

 私はその後、なぜドリアーヌ様がお怒りになったのか気になり、ドリアーヌ様派閥の令嬢に聞いた。どうやらドリアーヌ様は恋している相手がいるらしい。しかしその相手は身分でどうこうできる相手ではなかったそうだ。それで正当法でドリアーヌ様はアプローチをしたがその相手は、ドリアーヌ様に対して冷たくあしらったらしい。それで傷心気味であったようでその時、恋の話に敏感になっていたようだ。私はその話を聞いて唖然とした。そんな話こちらの知ったことではないし、そんなことであんな目に合わせたかと思うと私はドリアーヌ様に恐怖した。ちなみに誰に恋をしているのかは教えてもらえなかった。口に出すことも許されていないらしい。それから、私はドリアーヌ様と関わらないようにしてお茶会を上手く躱してきた。こちらも私達が避けるべき人物だ。

 この話を聞いただけでも私はもう行きたくないという気持ちがさらに上がった。目の前に地雷が埋まっているのにそこを通れと言われている気分だ。でも行かなければいけない。
 他の令嬢達も今から戦々恐々と行った感じでどのように上手くやり過ごすかという話をしていた。特に爵位が低い娘は大変だ。爵位が高い子息に言い寄られればNoとは言えないのだ。家のために甘んじて相手をしないといけない。さらに見目が良いと悲惨さが増す。最悪の場合、手籠にされる可能性もあるのだ。もしそのような目に会ってしまえば、その令嬢に良縁は望めないし、一生その傷とレッテルを背負いながら生きないといけないのだ。
 
 貴族社会では、このようなことが起こり得るほど身分に厳しいのだ。もちろん、このようなことがあれば、それをやった側も醜聞になるので貴族家も子に厳しく教育する。しかし、今回のリシャール公が主催する夜会ではその常識が通用するとは限らない。なぜなら、大量の不良物件たちが集まる会なのだ。どうすればいいのかと言った感じだ。
それなりに上手くやっている貴族達は今頃、リシャール公に多く怨念が向いている頃だろう。  

 どの令嬢も本当に今にも泣き出しそうな感じであった。このような悲壮な雰囲気でお茶会は終わったのであった。私も泣き出したいものだ。だが、私はまだマシな方だと思う。なんせベルラント様がいらっしゃるのだから、滅多な目に会うことはないはずだ。もちろん、他の令嬢に嫉妬されて怨みを買う恐れがあるが今回は出し惜しみしていられないのだ。私は自分に大丈夫と言い聞かせながら不安を抱えながら日々を過ごしたのであった。


 
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