97 / 111
第二章 わたし、めりーさん
沢村さんの電話
しおりを挟む
「どうかしたの?」
『ちょっと明日のことが心配って言うか』
「ああ、例のメールの話だね。黒川くんの方が適任じゃない?」
『うん、それは……そうなんだけど……』
歯切れ悪く返事する沢村さん。
「把握したよ。黒川くんでも、どうにでもできない問題なんだね。月島くんも頼れない感じなの?」
『うん。月島くんもきっと苦手意識があると思うし、相手もどうかな』
黒川くんでも無理で、月島くんにも合わない人物。……思い浮かぶのは一人だけだ。そして僕も彼が苦手。
「師堂くんのことだね」
『そうなのっ。今日の放課後、洋平ちゃんに話を聞いたんだけど、思えば師堂くんには何も聞けてないなって。月島くんのことを疑う訳じゃないけど、月島くんとはまた違う視点の、彼の話を聞きたいと言うかさっ』
物事は多角的に見るべきだから、沢村さんの言い分は理解できる。
『師堂くんってムードメーカーの一人だけどさ、千堂くんよりは不良じゃないのも分かってるつもりなんだけど、オラオラ系で我が強いじゃない』
「オラオラ系か、面白いね」
師堂くんの顔を思い浮かべると、余計にお腹が捩れちゃう。例えるならライオンの鬣みたいな?
『それに、月島くんとは反りが合わないでしょ』
「あー、まあそうだね。でも二人ともお互いを尊敬……じゃないね。意識しているが故の尊重している面も見せるし、クラス全体が分断されるようなことは無いよね。師堂くんもツンデレだし」
『え……?』
沢村さんが黙り込んだ。
『それ絶対誰にも理解できないと思う……樋脇くんだけが言えるよ』
「え?」
今度はこっちの方が面食らう。そんなことないと思うけど。
『月島くんにも、オレからは話聞けねえから後はよろしくって言われてるんだよね』
「言いそうだね」
『黒川くんが二人をどう思っているのか知らないけれども、ほら、二人って仲が悪い訳じゃないけど、お互いの線引きをしっかりしているし、干渉だってあんまりしていないからさ。多分黒川くんは二人のこと、よく分かっていないんじゃないかなって」
「黒川くんも鈍感だもんね」
『……』
沢村さんが再び押し黙った。もしかして人のこと言えないだろ、とか思ってるのかな。僕だって鈍感じゃないんだけど。周囲が僕のことを悪く言えないのも、トリックがあって、処世術の一つでもある。――だから僕は鈍感じゃない。そう言いたいのに、言えない。心苦しさが積もっていく。
……僕が黒川くんのことを好きな理由は、そこにあるのかもしれない。彼なら僕を暴くことが出来るんじゃないかって期待してしまう。黒川くんがいれば、僕も許されるんじゃないかって。そう希望を抱いてしまう。そんなことは許さない、と言わんばかりの赤銅の月光が降りかかる。
仰ぐと、上空にブラッドムーンが浮かんでいる。
『樋脇くん?』
「うん、聞いてるよ」
『それで、師堂くんに話を聞いてくれる?』
「良いけど、立川くんの方が信用されやすいんじゃない?」
師堂くんとの話はもう済んではいるけど、僕よりも適任なのは立川くんだと思うんだよね。どんな人にも平等に声を掛けられるし。
『立川くんはあまり協力してくれないかも。占いはしてくれるみたいだけど、怪異のことを信じてないみたいだから』
「僕もだけどね」
『でも樋脇くんは私に付き合ってくれるでしょ』
「それもそうだね」
痛いところを突かれてしまったな。
「立川くんは信じてないんだ? どっちかと言うと、当事者のような立ち位置じゃなかった?」
詳細は聞いてないけど、メリーさんが展開する前に沢村さんたちとひと悶着あったみたいだし、協力しそうなものなんだけどな。
『うん、そうなんだけど、今日も早く帰っちゃうから話し合いも出来なかったくらいだし』
「そうなんだ。誰を占ったか知ってる?」
『ええと、師堂くんが白だって。今日の結果は明日聞く予定。……あれ、もしかして三日目の占いって当てにならなかったりする?』
今日が二日目の夜。メリーさんは三日間の猶予を与えると言っていた。つまり三日目の夜は同時刻に占い、名前当て、メリーさんの襲来がある筈。仮にメリーさんを外したら、メリーさんの襲来は個人だけでなく、クラスメイト全員に来るだろう。三日目の占いは必然的に不可能となる。あくまでも沢村さんの計算では。
「黒川くんにも確認した方が良いかもね。でも僕は占いを待たない方が良いとは思うけど」
『そっか……』
「まあ、師堂くんの方は任せて」
謎は黒川くんが解いてくれるだろうけど、一応安心させておく。正直に言って、師堂くんから話を聞き出すなんて僕でも無理。うやむやに話を終わらせておく方が無難だ。
『ありがとう!』
心からの礼は、ほんの少しだけ……。
僕は苦笑交じりに「どういたしまして」と返した。
『ちょっと明日のことが心配って言うか』
「ああ、例のメールの話だね。黒川くんの方が適任じゃない?」
『うん、それは……そうなんだけど……』
歯切れ悪く返事する沢村さん。
「把握したよ。黒川くんでも、どうにでもできない問題なんだね。月島くんも頼れない感じなの?」
『うん。月島くんもきっと苦手意識があると思うし、相手もどうかな』
黒川くんでも無理で、月島くんにも合わない人物。……思い浮かぶのは一人だけだ。そして僕も彼が苦手。
「師堂くんのことだね」
『そうなのっ。今日の放課後、洋平ちゃんに話を聞いたんだけど、思えば師堂くんには何も聞けてないなって。月島くんのことを疑う訳じゃないけど、月島くんとはまた違う視点の、彼の話を聞きたいと言うかさっ』
物事は多角的に見るべきだから、沢村さんの言い分は理解できる。
『師堂くんってムードメーカーの一人だけどさ、千堂くんよりは不良じゃないのも分かってるつもりなんだけど、オラオラ系で我が強いじゃない』
「オラオラ系か、面白いね」
師堂くんの顔を思い浮かべると、余計にお腹が捩れちゃう。例えるならライオンの鬣みたいな?
『それに、月島くんとは反りが合わないでしょ』
「あー、まあそうだね。でも二人ともお互いを尊敬……じゃないね。意識しているが故の尊重している面も見せるし、クラス全体が分断されるようなことは無いよね。師堂くんもツンデレだし」
『え……?』
沢村さんが黙り込んだ。
『それ絶対誰にも理解できないと思う……樋脇くんだけが言えるよ』
「え?」
今度はこっちの方が面食らう。そんなことないと思うけど。
『月島くんにも、オレからは話聞けねえから後はよろしくって言われてるんだよね』
「言いそうだね」
『黒川くんが二人をどう思っているのか知らないけれども、ほら、二人って仲が悪い訳じゃないけど、お互いの線引きをしっかりしているし、干渉だってあんまりしていないからさ。多分黒川くんは二人のこと、よく分かっていないんじゃないかなって」
「黒川くんも鈍感だもんね」
『……』
沢村さんが再び押し黙った。もしかして人のこと言えないだろ、とか思ってるのかな。僕だって鈍感じゃないんだけど。周囲が僕のことを悪く言えないのも、トリックがあって、処世術の一つでもある。――だから僕は鈍感じゃない。そう言いたいのに、言えない。心苦しさが積もっていく。
……僕が黒川くんのことを好きな理由は、そこにあるのかもしれない。彼なら僕を暴くことが出来るんじゃないかって期待してしまう。黒川くんがいれば、僕も許されるんじゃないかって。そう希望を抱いてしまう。そんなことは許さない、と言わんばかりの赤銅の月光が降りかかる。
仰ぐと、上空にブラッドムーンが浮かんでいる。
『樋脇くん?』
「うん、聞いてるよ」
『それで、師堂くんに話を聞いてくれる?』
「良いけど、立川くんの方が信用されやすいんじゃない?」
師堂くんとの話はもう済んではいるけど、僕よりも適任なのは立川くんだと思うんだよね。どんな人にも平等に声を掛けられるし。
『立川くんはあまり協力してくれないかも。占いはしてくれるみたいだけど、怪異のことを信じてないみたいだから』
「僕もだけどね」
『でも樋脇くんは私に付き合ってくれるでしょ』
「それもそうだね」
痛いところを突かれてしまったな。
「立川くんは信じてないんだ? どっちかと言うと、当事者のような立ち位置じゃなかった?」
詳細は聞いてないけど、メリーさんが展開する前に沢村さんたちとひと悶着あったみたいだし、協力しそうなものなんだけどな。
『うん、そうなんだけど、今日も早く帰っちゃうから話し合いも出来なかったくらいだし』
「そうなんだ。誰を占ったか知ってる?」
『ええと、師堂くんが白だって。今日の結果は明日聞く予定。……あれ、もしかして三日目の占いって当てにならなかったりする?』
今日が二日目の夜。メリーさんは三日間の猶予を与えると言っていた。つまり三日目の夜は同時刻に占い、名前当て、メリーさんの襲来がある筈。仮にメリーさんを外したら、メリーさんの襲来は個人だけでなく、クラスメイト全員に来るだろう。三日目の占いは必然的に不可能となる。あくまでも沢村さんの計算では。
「黒川くんにも確認した方が良いかもね。でも僕は占いを待たない方が良いとは思うけど」
『そっか……』
「まあ、師堂くんの方は任せて」
謎は黒川くんが解いてくれるだろうけど、一応安心させておく。正直に言って、師堂くんから話を聞き出すなんて僕でも無理。うやむやに話を終わらせておく方が無難だ。
『ありがとう!』
心からの礼は、ほんの少しだけ……。
僕は苦笑交じりに「どういたしまして」と返した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる