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SS・サンドウィッチ
しおりを挟む春日部の歯磨きと洗顔を、昨晩のことを思い出しつつ見守った後は、朝食だ。
ダイニングの椅子に腰掛けさせ、サンドイッチの皿を春日部の前に差し出した。
「お、すげぇ、お前が作ったのか?」
「うん。パサパサになっちゃうから早く食べよ。」
春日部の顔色は悪く目は充血しているが、僕の作ったサンドウィッチを見ると嬉しそうな顔になった。
「いただきます。」
「召し上がれ。」
昨晩は言語能力も怪しかったが、今は頭も働いているようだ。
僕も手を合わせて、いただきますと言い、サンドウィッチを口に運んだ。
春日部も4分の1に切られたサンドウィッチを一口で食べた。
そして同時に感想を言った。
「うまい。」
「おいしくない。」
パンはパサパサどころかべちゃべちゃしていて、サンドウィッチの味は薄い。
レタスを洗った後、水気を切らなければならなかったようだ。
水分がパンに染み込み、しっとりを通り越してべちゃべちゃしていてサンドウィッチの食感ではなくなっている。
味が薄いのは多分マヨネーズかマーガリン、もしくはその両方とプラス何かが必要だったのに何も塗らなかったせいだ。
うまくできたと思っていたのに。食べられないほどではないが、美味しいとは言えない出来だ。
春日部は「うまい」と言ってくれたが、どう考えても失敗作だった。
しょんぼりと一口だけ齧ったサンドウィッチを見つめていると、それを取り上げられた。
「いらねぇなら俺が食う。」
春日部はそう言って僕の皿を自分の方へ引き寄せた。
気分が悪くてあまり食欲は無いはずなのに。
気を使わなくていい、と言っても「なんでだよ、うまいって」と言って、全部平らげた。
しかも褒めてくれた。
「しっとりしてて喉を通りやすかったし、さっぱりしてっから、二日酔いにもぴったりだった。ありがとな、町屋。」
春日部は傍に来て頭を撫でてくれて、僕の為に冷凍してたおにぎりを温めて海苔を巻いて出してくれた。
おにぎりの絶妙な塩加減と、春日部の優しさが体と心に沁み渡った。
「ごめん、次はちゃんと美味しいもの作れるように練習するからね。」
「十分うまかったって。レタスもちゃんと洗ってあって安心したし、切ってくれてたから食いやすかった。」
「うぅ、ありがとう。」
数少ない褒めポイントを全部言ってくれた春日部。
やっぱり僕の天使だ。
「いや、俺こそ。ごちそーさん。気分、良くなってきた。」
「そっか、それは良かった。」
「ああ。サンキュ。」
「僕が食器洗っておくね。春日部は寝てていいよ。」
「もう寝なくても大丈夫だって。それは俺がする。」
「いいから、いいから。春日部、バイトは夜からでしょ? 折角だから日中はごろごろしちゃおうよ。」
何が折角なのだか自分でもよく分からないが、春日部も「そうだな」って同意してくれた。
食洗機を使うほどは量が無いから食器は手洗いをした。
これは得意だからパパッと済ませた。
ベッドルームに行くと、春日部はベッドに腰を掛けていた。
着てるTシャツが変わっているから着替えたらしい。
二人でベッドに潜り込んで、横になった。
僕がぴったりくっつくと、春日部は僕を抱き寄せて自然な流れで腕枕をしてくれた。
春日部の清潔な匂いと体温に包まれると、気持ちがいい。
気持ちが良くて、ムラムラしてきた。
「ねぇ、頭、まだ痛い?」
「いや、大分、治まってきた。」
「良かった。」
「……。」
「……。」
僕の勃起してしまったチンポは春日部の股に当たってる。
いや、わざと当ててる。
「なぁ。」
「ん?」
「すんのか?」
春日部の熱を帯びた声が僕の鼓膜を擽る。
散々お預け食らった犬そのままの勢いで僕は答えた。
「する!!」
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