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狸寝入りをしています

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雰囲気は最悪ですが、クロードはいつものようにわたくしを抱き締めたまま眠るつもりのようです。

わたくしの背中にあるクロードの指が、何かの拍子に僅かに動きました。

「は…っ。」

思わず声を出してしまいました。クロードにも聞こえたでしょうか。もう寝てしまっていることを祈ります。

「ねえ、さま?」

起きていました。日中に掃除をして体を動かしたのですから、すぐに寝ていてほしかったです。もう、こちらが寝た振りをするしかなさそうです。さっきのはわたくしの寝言ということにしましょう。

クロードがわたくしの顔を覗き込んだ気配がします。

「寝ているのですか?」

そうです。

でも実際はドキドキして中々、寝付けそうにはありません。

「うーん。そろそろだと思うのですが。」

わたくしに言っているのでしょうか。そろそろとは何のことでしょうか。

と言いますより、すぐ近くで話すのはやめていただきたいです。ビクビクドキドキに加えてゾワゾワしてしまいます。

でも動いたら狸寝入りがバレてしまいます。わたくしは体を硬直させました。

その時また背中の指が動きました。今度は意図的なものを感じる触り方でした。

わたくしの背骨をなぞりながら下へと指はゆっくり下りていっています。

「ぁん。」

もう限界でした。

「やっぱり、起きていたのですね。」

バレました。どう言い訳をしたら良いのでしょうか。何も思い付きません。この際、女たらしのカイン先生でも構いません、お知恵を貸していただきたいです。

「姉さま、ひょっとしてお体が辛いのではないですか?」

どうしてわかったのでしょうか。

「でもそれは自然なことなのです。」

これはおかしなことではないのですか?

わたくしは狸寝入りを諦めて、目を開けました。するとすぐ近くにあるクロードの深い青の瞳と目が合います。

「姉さまは欲求不満なのですよ。」

「!?」

…わたくしが、欲求不満…?

でも今までこんなことは無かったのです。急にそんなことになるなんて。

「それはあまり体に良くないのです。僕なら楽にして差し上げることもできます。」

またクロードの背中の手がさわさわと動き出しました。

「んっ。」

本当に切なくて辛いのです。あの日のように楽にしてもらいたいです。

わたくしは自分からクロードに抱きつきました。

「…切なくて、どうしたらいいのかわからないのです。クロード、…お願い、しても、よろしいですか。」

これを言うのはとても勇気が入りました。でもわたくしは楽になりたいのです。

クロードが、ごくりと息を飲んだのが分かりました。

「こんなことを言ってもらえるなんて、一週間、姉さまにいたずらするのを我慢して良かったです。今夜は何度も楽にして差し上げますからね。」

クロードの濃い青の瞳がキラリと輝きました。
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