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【第一章】第一次セトラ村攻防戦

【第五話】交渉の結果

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 村長の家での会話は、かなり遅くまで続いた。


 初めは気になって広場に集まっていた村人も、日が暮れる頃にはそれぞれの生活に戻っていく。


 僕とテジムだけが、その話を聞き続けていた。


「了解した。カラバ村長のお言葉は、そのまま将軍を通じて、国王陛下にお伝わりになられるだろう」


 結局最後まで、村長は王国の支配下に入る事を拒否し続けたのだ。


 カシュカは村長の隣に座っていたが、村長の意見に同調するだけで、長くは喋らなかった。


「最後に言っておくが、王国への恭順を拒否した村落が、どのような最後を迎えたのかは、知らない訳はあるまいな」


 そう言い残すと、ジラサ隊長はもう一人の兵と共に家を出た。


 そして馬にまたがると、そのまま駆け去っていった。


 セトラ村は、静かだった。


「王国の支配下に入らなかった村は、どうなるの?」


 僕の小屋に戻る途中、テジムに聞いてみた。


「商人から聞いた噂だけど、拒否した村や街は王国軍から攻められたって話だ。それが噂に留まっているのは、生存者が一人もいないからだそうだ」


 もしその噂が本当なら、このセトラ村も王国軍に攻められてしまうのだろうか。


 だとしたら、村長はなぜ拒否したのか。


「じゃあ逆に、王国の支配下に入ったらどうなるの?」


「カラバ村長も言っていた通り、動ける若者は兵隊に取られる。その上で王国に税を払わなくちゃいけなくなるから、村の生活は一気に貧しくなるだろうな」


 それでは、支配下に入っても入らなくてもデメリットしかない。


「どうしてそんな事に」


「大きな国が、小さな街や村を好き勝手に扱うのなんて、今の時代は当たり前なんだよ」


 テジムの顔には、諦めの感情が出ていた。


「でもだからって、そんな勝手が許されるのか」


 この三ヶ月生活していて、僕はこの村が好きになっていた。


 不便と思うことも多いけれど、人は優しいし、食べ物は美味しい。


 ここでの生活が壊されるのは、僕だって嫌だった。


 翌日、村の広場に集合が掛かった。


 カラバ村長が、村人たちの前に立つ。


「皆も知っているだろうが、昨日この村にオトラス王国軍の使者が参った」


 村人達が、ざわつき始めた。


「要件は察しの通り、王国に恭順せよとの事だった。そして、私はそれに拒否をした」


 ざわつきは、更に大きくなった。


「そ、それじゃあ、この村はどうなるんだ?」
「噂じゃあ、軍隊がやって来て皆殺しに合うんだろ!」
「俺たち、殺されるのか!?」


 みんな、それぞれの不安を口にしている。


 村長は何とか村人たちを落ち着かせ、いつでも避難出来るように準備を始めるよう指示を出した。




 せっかくの平和な生活が、徐々に壊れ始めていると思った。
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