僕の輝ける伴星

渡辺 佐倉

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本編

敵は

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結論から言うと、精神魔法をかけられていた使用人はおらず、屋敷からの魔道通信すべてを魔道具で拾うという方法をとることに決まった。

「これ、悪用されるとまずいから王家として布告を出した方がいいね」

とルイスは言う。まだ出ていないのであれば問題はないということだろうと準備を進める。

第三王子は碌な後ろ盾も無ければ付き合いもほとんど無い。
婚約お祝いも儀礼的に数件送られてきただけだ。

使用人たちも貴族家の出身者もいるものの高位貴族に直接連なるものはいない。


だから、外部の貴族の関係者と連絡を取り合っているものが怪しい。
何人も間に経由しているとめんどくさいなと思ったけれど、おそらく魔道通信を盗み聞きされているという警戒はしていなかったのであろう。
直接連絡を取っている人間が分かった。

正直、執事だったらルイスが悲しむだろうと思っていた。
祈るような気持ちで確認作業をしていると、犯人が分かって思わずほっとしてしまった。

外部と連絡を取っていたのは一年前に勤め始めたというメイドのリリーという少女だった。
連絡を取った先の家門は、王妃様の派閥らしい。

ルイスは王妃様の子供ではない。彼の母親はもう亡くなっているという話をその時俺は初めて聞いた。
彼の母親が誰かなんてあまり考えたことが無かったのだ。

薄情な婚約者だ。
そういえば彼の親族との挨拶も全くない。
国王陛下はお忙しいというのは分かるけれど第三王子の婚約というのに彼の血縁者であったことがあるのは第二王子だけだ。

「ふう……」

疲れた表情でルイスは大きくため息をついた。

「彼女を首にしますか?」
「いや……。、早い」

ルイスはそう言った。

それから「僕もちゃんとこれからのために覚悟を決めないといけない」と言った。

「覚悟?」

何だろう。今は自分との結婚の話はしていないのでそれ以外だろう。

「俺はずっとまもなく死ぬと思われてたからね。どの派閥にも属していない」

だから誰も味方がおらずあの状態なのかと思う。
属していないというより、属しようがなかったの方が正解なのかもしれない。

「これから二人で未来に進むために、僕は選択をしないといけない」

ルイスは王子としての顔ではっきりとそう言った。

「誰を次の王に推すかですね」

貴族の機微ってやつには疎い自分でもそれはわかった。
ルイスが王になりたいのであれば俺は不要だ。

俺との未来を描くつもりなのであれば他の誰かが王になる未来だ。
他の候補とは敵対する未来だ。誰を選ぶにせよ覚悟が必要だ。
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