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【1章】断食魔女、森で隠遁生活を送る

2.夢を見ました(2)

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(朝か……)


 カーテンの隙間から射し込む朝日に目を擦る。
 前世のコンクリートジャングルとは違い、森の朝はとても優しい。木漏れ日は柔らかく、温かく、清々しい気分にしてくれる。

 さて、朝ごはん――――と思ったところでわたしはハタと気づいた。


(別に、作る必要ないじゃない)


 この家にはもう、わたし一人しか居ないんだもの。

 六年間我が家に居候していたマリアは昨日、イケメン神官に連れられ、王都にある神殿で暮らすことになった。今頃は、こことは比べ物にならないリッチな朝食を食べていることだろう。

 わたし一人だけなら、朝ごはんを作る必要はない。食べる必要だってない。

 太陽が空のてっぺんに昇るまで寝なおして、それ以上眠れなくなったら適当に起きて。適当なものを適当に食べて、眠くなったら寝れば良いんだもの。

 そもそも、マリアが居る時だって大したご飯を作ってなかったし。面倒くさがりだもん、わたし。焼いただけのパンとか、肉を炒めただけの大皿一品料理ぐらいしか出せない女なんだし。


(寝よ)


 布団を被りなおし、目を瞑る。
 ありがたいことに、睡魔はすぐに訪れた。



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