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【1章】断食魔女、森で隠遁生活を送る

13.いつも笑顔の人ほど、怒るととても怖いらしいです(3)

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「予定?」

「ええ。もうすぐしたら、人々が神殿を訪れ始めます。朝の鐘が鳴ったら、神官たちが立ち並び、彼等の祈りや願い事を聞きます」

「はぁ……」


 そういえば、前に寄付を得るための行動が云々って言ってたっけ。この男が話を聞いてやると、女性参拝者たちが『神殿のために』って、金品を置いていくんだとか。


「だけどそれ、わたしになんの関係が?」

「ジャンヌ殿にも、皆様のお話を聞いていただこうと思いまして」

「は⁉」


 なにそれ! 聞いてない。
 っていうか、話が違うじゃない!


「あなた! わたしはここに居る間、家事とか面倒なことはしなくて良くなるって言いましたよね⁉」

「ええ。そのとおりです。だけど、何もしなくていいとは言ってませんよ?」


 瞳を細め、神官様が笑う。
 あっ、やばい。めっちゃ目が据わっている。
 この人、実はさっきのこと怒ってたんだ。笑ってるけど! 寧ろ怖いんですけども!


「実は、マリア様が来てくださって以降、神殿への寄付が倍増してましてね」


 神官様は立ち上がり、わたしのことをそっと見下ろす。柔らかな笑み。だけど、見ているだけで背筋が凍る。


「かねてより、男性の参拝者を増やしたいと思っていたのですよ。
ジャンヌ殿はこの通り、大層お美しいですから」


 蠱惑的な笑み。ギュッと手を握られ、耳元でそんなことを囁かれる。ゾワゾワと身の毛がよだち、呆然と目を見開くわたしの頬に、彼はそっと口づける。


 子供の前で何してんのよ! ――――そう叫んでやりたいところだけど、マリアは食事に夢中だし。ちょっと今、この男に逆らえそうにない。


「一緒に来ていただけますね、ジャンヌ殿?」


 彼はそう言ってわたしを見つめる。
 近い。ちょっと動いたら唇が触れ合いそうな程、近いんですけど。


「…………行きます。いえ、行かせていただきます」


 最早、それ以外に返す言葉が見つからなかった。
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