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【1章】断食魔女、森で隠遁生活を送る

13.いつも笑顔の人ほど、怒るととても怖いらしいです(2)

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「さあさあ、朝食にしましょう? 早くしないと冷めてしまいますよ」


 そう言って神官様は、わたしを無理やり座らせる。マリアもあとに続いた。


「どうです? 美味しそうでしょう?」


 神官様はそう言って胸を張る。
 テーブルに並べられたお料理は、まるで豪華ホテルで出されるモーニングのようだった。

 みずみずしいサラダに、ほかほかと湯気の立つスープ。焼き立てのパンが数種類と、ベーコンやソーセージに香草の練り込まれたオムレツ。フルーツの盛り合わせに、この世界でいうコーヒー的な飲み物やミルク、果物ジュースが並ぶ。


「……まさかとは思いますが、毎日こんなに豪勢なんですか?」


 今日が特別ならば良い。だけどこれ、量も多けりゃ種類も多い。バターの香りも強いし、胃もたれが確定してしまう。


「そうですよ? 朝食はしっかりとらないと」


 神官様は目を丸くして首を傾げる。わたしは思わず頭を抱えた。


 皆で手を合わせ、食事を始める。
 料理は当然美味しかった。やっぱりここの料理人の腕は良い。すごく良い。
 でもなぁ。


「…………あの、明日からキッチンって借りられます?」

「キッチン? そりゃ、使ってもらって構いませんが、なぜ?」

「わたし、自分で朝食を準備します」


 美味しいけど、こんな生活を続けていたら、すぐに身体を壊してしまう。
 少なくとも、わたしには合わない。
 洋食ならトースト一枚、和食ならおにぎり一個程度で良いのよ、マジで。


「わ~~! マリアもそっちが良い! ジャンヌさんの朝食が良い!」

「あんたはこっちを食べなよ。食べ盛りなんだしさ」


 っていうか、わたしは別に朝食なんて食べなくてもいいし。正直普段ならまだ眠っている時間だもん。


「あたし、ジャンヌさんのご飯が食べたい!」


 マリアが声を張り上げる。
 しまった。こうなったマリアは頑固で面倒だ。


「わかった。取り敢えず明日だけね」

「うん! やった! 楽しみ!」


 この年頃の子供なら、適当に約束をして、相手が忘れるのを待つのが一番。


(どうせここで過ごすのも、二ヶ月間だけなんだし)


 そんなことを考えつつ、小さなため息が漏れる。


「さてさて、ジャンヌ殿にこのあとの予定を発表します!」


 その時、神官様が唐突に話題を変えた。


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