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【2章】断食魔女、神殿で華やかな生活を謳歌する(?)
19.世の中には、知らないほうが良いこともあるようです(2)
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(一体何をしてるんだ、この男は……!)
そんな意地っ張りな子供を見守るような生温かい目で見るのは止めてほしい! わたしはこれでも大人。いい大人なんだから!
そりゃあ、言動や行動が伴っていないかもしれないけど、それでも。
「そう言えば、ジュエリーをお渡しするのが未だでしたね」
神官様はそう言って、わたしの背後に回り込む。
「ジュエリー? 別にそんなの無くても……」
「ダメですよ。物事、バランスというものが重要です。
夜会の規模に応じたドレスを着る。それに見合ったジュエリーを身につける。
その場の空気に溶け込むためにも、必要なことだと思いませんか?」
「――――そりゃあ、そうですけど」
ダメだ。神官様にはわたしの思考回路が完全に読まれている。そう言われて断れるはずがない。
「大丈夫。今回かかった費用は出世払いということにしておきますから! 遠慮なく貰ってください!」
「はぁ? 出世払い?」
何だそりゃ。わたしには出世する予定なんてありませんけど。
マリアが正式に聖女に就任して、神殿から自由に出られるようになったら、自宅に帰るつもり満々だし。
そんなことを思っていたら、神官様がニヤリと瞳を細めた。
「――――私のお嫁さんになれば良いでしょう?」
「っ⁉ ――――はぁ⁉」
耳元で熱っぽく囁かれ、わたしは思わず後退る。マリアや侍女たちから、黄色い声が飛び交った。
「馬っ鹿じゃないんですか! 誰が貴方なんかと……!
大体、自分と結婚することを『出世』扱いするなんて、うぬぼれも良いところです!」
「え~~? 妙案だと思うんですけどねぇ。ジャンヌ殿だって、案外私のことが好きでしょう?」
「ないない、ないです! 全然! 全く! ありえない!」
色めき立つギャラリーに向かって手を振り、全力で否定する。
全く。
元々ふざけた人だけど、こういうたちの悪い冗談は止めてほしい。でないと心臓がもたないし。本当、ありえない。
「それはそうと、ジャンヌ殿。ほら、じっとしてください」
首筋にずっしりと重みを感じる。
深い青色の大きな宝石。昔映画で見たのとよく似ている。あれって確か、数十億円とかって聞いた気がしたけど、宝石に詳しくないから分かんない。さすがにそこまでの価値は無いだろうけど。
「神官様――――あんまり聞きたくないんですけど、これ、いくらしたんです?」
「え? 知ったら私と結婚してくれるんですか?」
神官様はそう言って、ニコリと笑った。とてつもなく邪悪な笑みだ。
世の中には知らないほうが良いことも沢山存在する。
神官様の顔つきを見るに、これは間違いなく『知らないほうが良いこと』だろう。
わたしは大きく首を横に振り、急いでマリアの手を握る。
「さっさと行きましょう、さっさと!」
「ええ」
神官様はそう言って、クックッと喉を鳴らして笑った。
そんな意地っ張りな子供を見守るような生温かい目で見るのは止めてほしい! わたしはこれでも大人。いい大人なんだから!
そりゃあ、言動や行動が伴っていないかもしれないけど、それでも。
「そう言えば、ジュエリーをお渡しするのが未だでしたね」
神官様はそう言って、わたしの背後に回り込む。
「ジュエリー? 別にそんなの無くても……」
「ダメですよ。物事、バランスというものが重要です。
夜会の規模に応じたドレスを着る。それに見合ったジュエリーを身につける。
その場の空気に溶け込むためにも、必要なことだと思いませんか?」
「――――そりゃあ、そうですけど」
ダメだ。神官様にはわたしの思考回路が完全に読まれている。そう言われて断れるはずがない。
「大丈夫。今回かかった費用は出世払いということにしておきますから! 遠慮なく貰ってください!」
「はぁ? 出世払い?」
何だそりゃ。わたしには出世する予定なんてありませんけど。
マリアが正式に聖女に就任して、神殿から自由に出られるようになったら、自宅に帰るつもり満々だし。
そんなことを思っていたら、神官様がニヤリと瞳を細めた。
「――――私のお嫁さんになれば良いでしょう?」
「っ⁉ ――――はぁ⁉」
耳元で熱っぽく囁かれ、わたしは思わず後退る。マリアや侍女たちから、黄色い声が飛び交った。
「馬っ鹿じゃないんですか! 誰が貴方なんかと……!
大体、自分と結婚することを『出世』扱いするなんて、うぬぼれも良いところです!」
「え~~? 妙案だと思うんですけどねぇ。ジャンヌ殿だって、案外私のことが好きでしょう?」
「ないない、ないです! 全然! 全く! ありえない!」
色めき立つギャラリーに向かって手を振り、全力で否定する。
全く。
元々ふざけた人だけど、こういうたちの悪い冗談は止めてほしい。でないと心臓がもたないし。本当、ありえない。
「それはそうと、ジャンヌ殿。ほら、じっとしてください」
首筋にずっしりと重みを感じる。
深い青色の大きな宝石。昔映画で見たのとよく似ている。あれって確か、数十億円とかって聞いた気がしたけど、宝石に詳しくないから分かんない。さすがにそこまでの価値は無いだろうけど。
「神官様――――あんまり聞きたくないんですけど、これ、いくらしたんです?」
「え? 知ったら私と結婚してくれるんですか?」
神官様はそう言って、ニコリと笑った。とてつもなく邪悪な笑みだ。
世の中には知らないほうが良いことも沢山存在する。
神官様の顔つきを見るに、これは間違いなく『知らないほうが良いこと』だろう。
わたしは大きく首を横に振り、急いでマリアの手を握る。
「さっさと行きましょう、さっさと!」
「ええ」
神官様はそう言って、クックッと喉を鳴らして笑った。
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