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【2章】断食魔女、神殿で華やかな生活を謳歌する(?)
22.異世界にも鬼門は存在するようです(1)
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豪奢なドレスを着た女性が、わたしのことをキッと睨みつけている。
まるで親の仇を見るような目つきだ。
(まあ、当たらずも遠からずってところだけど)
それにしても酷い嫌われっぷりである。
ため息を吐いていたら、神官様がわたしたちの間に割って入り、よそ行きの笑みを浮かべた。
「これはこれはシャーリー嬢……お久しぶりです。ジャンヌ殿とお知り合いなのですか?」
シャーリーと呼ばれた令嬢は、眉間にグッとシワを寄せ、先程よりもさらに不機嫌な表情になった。きっと、わたしが神官様に名前を呼ばれたことが気に食わないのだろう。
柔らかな金の髪に、緑色の瞳。
まるで鏡を見ているみたい。
容姿だけはわたしとよく似ている。
まあ、半分血が繋がっているんだもの。
当然といえば当然だ。
彼女はわたしの異父妹であるシャーリー・ブルックリン。
由緒正しき伯爵令嬢というやつである。
「神官様、実はシャーリーはわたしの――――」
「口を慎みなさい、ジャンヌ。
セドリック様。この人はわたくしとは何の関係もございません。卑しい血の平民ですもの。単に名前を知っていたというだけです」
シャーリーはわたしの発言を遮り、気位の高そうな笑みを浮かべた。
(卑しい血、ねぇ……)
前世で平等な世界を経験し、理科を勉強しているわたしからすれば、平民と貴族で血液の成分が変わらないなんて当たり前のこと。親が貴族に生まれたから、子も貴いなんて馬鹿げている。実にナンセンスだ。
だって、平民にも優秀な人間は腐るほどいるじゃない? 寧ろ甘ったるい環境で育てられてない分、強くて逞しいし、悪知恵だってある。
大体、馬鹿な王族、貴族が大量発生している時点でお察し案件。
血が云々、生まれが云々っていうのは幻想でしかないし、そんなおかしな伝統にしがみついているから政治がおかしなことになる。いずれナポレオンみたいな人が出てきて、下手すりゃ革命だって起こるかもね。歴史は繰り返すって言うし。異世界でもきっと同じでしょ?
(まあ、言わないし、何もしないけどね……)
正直言って今のわたしにとってはどうでも良い。
国を良くしたいとか、身分制度をなんとかしたいとか、そういうことは思わないもの。
シャーリーに馬鹿にされたところで腹も立たないし。
けれど、神官様はそうは思わなかったらしい。彼は眉間にシワを寄せ、シャーリーの前に躍り出た。
「そういう言い方は如何なものかと思いますよ、シャーリー嬢。訂正し、ジャンヌ殿にきちんと謝罪をしてください」
「なっ……」
神官様の反応が意外だったのだろう。シャーリーは目を見開き、頬を真っ赤に染めた。
「そんな、謝罪なんて嫌です。わたくしは思ったままを申し上げただけですわ」
如何にも不服そうな声音。わたしは思わず笑ってしまった。
(そうそう。シャーリーに悪気はない)
元々そういう価値観の世界だし。あの子がそう思うのも普通というか。気にしたところで無駄だって分かっているもの。
「良いですよ、神官様。その子は決して謝りません。わたしも謝ってほしいとは思いませんし」
「ほらね、セドリック様。本人がこう言っているんです。わたくしは何も悪くないでしょう?」
己の非をどうしても認めたくない彼シャーリーは、鼻息も荒く、神官様へと詰め寄っていく。
「そうですか。――――でしたら、シャーリー嬢は、私のことも卑しいと――――そんなふうに思われていたのですね?」
その瞬間、周囲の空気が俄にピリついた。
まるで親の仇を見るような目つきだ。
(まあ、当たらずも遠からずってところだけど)
それにしても酷い嫌われっぷりである。
ため息を吐いていたら、神官様がわたしたちの間に割って入り、よそ行きの笑みを浮かべた。
「これはこれはシャーリー嬢……お久しぶりです。ジャンヌ殿とお知り合いなのですか?」
シャーリーと呼ばれた令嬢は、眉間にグッとシワを寄せ、先程よりもさらに不機嫌な表情になった。きっと、わたしが神官様に名前を呼ばれたことが気に食わないのだろう。
柔らかな金の髪に、緑色の瞳。
まるで鏡を見ているみたい。
容姿だけはわたしとよく似ている。
まあ、半分血が繋がっているんだもの。
当然といえば当然だ。
彼女はわたしの異父妹であるシャーリー・ブルックリン。
由緒正しき伯爵令嬢というやつである。
「神官様、実はシャーリーはわたしの――――」
「口を慎みなさい、ジャンヌ。
セドリック様。この人はわたくしとは何の関係もございません。卑しい血の平民ですもの。単に名前を知っていたというだけです」
シャーリーはわたしの発言を遮り、気位の高そうな笑みを浮かべた。
(卑しい血、ねぇ……)
前世で平等な世界を経験し、理科を勉強しているわたしからすれば、平民と貴族で血液の成分が変わらないなんて当たり前のこと。親が貴族に生まれたから、子も貴いなんて馬鹿げている。実にナンセンスだ。
だって、平民にも優秀な人間は腐るほどいるじゃない? 寧ろ甘ったるい環境で育てられてない分、強くて逞しいし、悪知恵だってある。
大体、馬鹿な王族、貴族が大量発生している時点でお察し案件。
血が云々、生まれが云々っていうのは幻想でしかないし、そんなおかしな伝統にしがみついているから政治がおかしなことになる。いずれナポレオンみたいな人が出てきて、下手すりゃ革命だって起こるかもね。歴史は繰り返すって言うし。異世界でもきっと同じでしょ?
(まあ、言わないし、何もしないけどね……)
正直言って今のわたしにとってはどうでも良い。
国を良くしたいとか、身分制度をなんとかしたいとか、そういうことは思わないもの。
シャーリーに馬鹿にされたところで腹も立たないし。
けれど、神官様はそうは思わなかったらしい。彼は眉間にシワを寄せ、シャーリーの前に躍り出た。
「そういう言い方は如何なものかと思いますよ、シャーリー嬢。訂正し、ジャンヌ殿にきちんと謝罪をしてください」
「なっ……」
神官様の反応が意外だったのだろう。シャーリーは目を見開き、頬を真っ赤に染めた。
「そんな、謝罪なんて嫌です。わたくしは思ったままを申し上げただけですわ」
如何にも不服そうな声音。わたしは思わず笑ってしまった。
(そうそう。シャーリーに悪気はない)
元々そういう価値観の世界だし。あの子がそう思うのも普通というか。気にしたところで無駄だって分かっているもの。
「良いですよ、神官様。その子は決して謝りません。わたしも謝ってほしいとは思いませんし」
「ほらね、セドリック様。本人がこう言っているんです。わたくしは何も悪くないでしょう?」
己の非をどうしても認めたくない彼シャーリーは、鼻息も荒く、神官様へと詰め寄っていく。
「そうですか。――――でしたら、シャーリー嬢は、私のことも卑しいと――――そんなふうに思われていたのですね?」
その瞬間、周囲の空気が俄にピリついた。
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