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【2章】断食魔女、神殿で華やかな生活を謳歌する(?)
21.勘違いなんてしません、しておりません(2)
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「大丈夫。今は私がいます。マリア様もいます。そうでしょう?」
「……あなたはまた、そういうことを言う。そういうこと、誰にでもホイホイ言うもんじゃありませんよ」
神官様といるとペースが乱れる。最近涙もろくなってしまったし、自分が自分じゃなくなったみたいですごく嫌だ。
「またまた! ジャンヌ殿も知ってるでしょう? 私、塩対応ってことで結構有名なんですよ! こんなこと、ジャンヌ殿にしか言ってません」
「塩対応……物は言いようですね」
そういえば、神殿に来てから分かったことが一つ有る。
わたしに対してはこんなにも無遠慮で無神経な神官様が、参拝に来ている人たちとは一線どころか十線ぐらい画していることだ。
本人は神がかっていて近寄りづらい聖職者(塩対応)を演じているという感じなんだろうけど、本性を知っているわたしとしては違和感バリバリ。
普段の胡散臭い笑顔を貼り付けて、軽薄過ぎて何度も聞き返したくなるような発言をした方が、余程人気が出るだろうに。
「そういうわけで、これはジャンヌ殿の勘違いでもなんでも有りませんから!」
「は? 勘違い?」
その単語、どっから出てきた?
「わたしは何も勘違いしてませんけど」
「またまた~~。ジャンヌ殿だってそろそろ『実は神官様って、本気でわたしのことを……⁉』ぐらいのこと、考えているでしょう?」
「は⁉」
何を言い出すかと思えば! 本当に救いようがない程の自惚れ屋だ。
「馬っ鹿じゃありません⁉ 全く、どこから来るんですか、その自信は!」
「え? 自信というか……ジャンヌ殿にそう思っていただけるように、こちらは日々頑張って口説いているわけで……」
「わたしが本気にするわけ無いでしょう⁉」
「――――ですから、本気にしてほしいと言っているんですよ」
神官様はそう言って、わたしのことを引き寄せた。
言葉も行動も、不意打ちがすぎる。
こんなこと、さすがのわたしも想定していない。
チラリと顔を上げてみたら、神官様はすごく熱い眼差しでわたしのことを見つめていた。
心臓が早鐘を打つ。
今すぐ逃げたい。
逃げ出したい。
だけど、身体がびくともしない。
(誰か、この場をなんとかしてくれる人はいないの⁉ マリア、早く帰ってきて!)
わたしが心からそう願ったそのときだった。
「ご無沙汰しております、セドリック様!」
キャピキャピした若い女の声が、神官様を呼んだ。
これ幸いとばかりに神官様を押しのければ、彼は渋い顔をしてこちらを見遣る。
(良かった、助かった)
誰かは知らないけど、マジでグッジョブ!
心からの称賛を送ろうと振り向いたその時だった。
「後で続きを話しましょうね、ジャンヌ殿」
神官様が耳元でそう囁く。
(こっ、こっ、この男は~~~~!)
折角空気が変わったと思ったのに! 全然切り替えさせてくれないじゃない。
(くそっ)
気を取り直し、声を掛けてきた女性の方を向く。失礼にならないよう、会釈だけしてこの場を去ろう――――そう思っていたのだけど。
「まさか……嘘でしょう⁉ ジャンヌ⁉」
「げっ!」
そこに立っていたのは本当に思いもよらない人物で。
わたしはゲンナリしてしまった。
「……あなたはまた、そういうことを言う。そういうこと、誰にでもホイホイ言うもんじゃありませんよ」
神官様といるとペースが乱れる。最近涙もろくなってしまったし、自分が自分じゃなくなったみたいですごく嫌だ。
「またまた! ジャンヌ殿も知ってるでしょう? 私、塩対応ってことで結構有名なんですよ! こんなこと、ジャンヌ殿にしか言ってません」
「塩対応……物は言いようですね」
そういえば、神殿に来てから分かったことが一つ有る。
わたしに対してはこんなにも無遠慮で無神経な神官様が、参拝に来ている人たちとは一線どころか十線ぐらい画していることだ。
本人は神がかっていて近寄りづらい聖職者(塩対応)を演じているという感じなんだろうけど、本性を知っているわたしとしては違和感バリバリ。
普段の胡散臭い笑顔を貼り付けて、軽薄過ぎて何度も聞き返したくなるような発言をした方が、余程人気が出るだろうに。
「そういうわけで、これはジャンヌ殿の勘違いでもなんでも有りませんから!」
「は? 勘違い?」
その単語、どっから出てきた?
「わたしは何も勘違いしてませんけど」
「またまた~~。ジャンヌ殿だってそろそろ『実は神官様って、本気でわたしのことを……⁉』ぐらいのこと、考えているでしょう?」
「は⁉」
何を言い出すかと思えば! 本当に救いようがない程の自惚れ屋だ。
「馬っ鹿じゃありません⁉ 全く、どこから来るんですか、その自信は!」
「え? 自信というか……ジャンヌ殿にそう思っていただけるように、こちらは日々頑張って口説いているわけで……」
「わたしが本気にするわけ無いでしょう⁉」
「――――ですから、本気にしてほしいと言っているんですよ」
神官様はそう言って、わたしのことを引き寄せた。
言葉も行動も、不意打ちがすぎる。
こんなこと、さすがのわたしも想定していない。
チラリと顔を上げてみたら、神官様はすごく熱い眼差しでわたしのことを見つめていた。
心臓が早鐘を打つ。
今すぐ逃げたい。
逃げ出したい。
だけど、身体がびくともしない。
(誰か、この場をなんとかしてくれる人はいないの⁉ マリア、早く帰ってきて!)
わたしが心からそう願ったそのときだった。
「ご無沙汰しております、セドリック様!」
キャピキャピした若い女の声が、神官様を呼んだ。
これ幸いとばかりに神官様を押しのければ、彼は渋い顔をしてこちらを見遣る。
(良かった、助かった)
誰かは知らないけど、マジでグッジョブ!
心からの称賛を送ろうと振り向いたその時だった。
「後で続きを話しましょうね、ジャンヌ殿」
神官様が耳元でそう囁く。
(こっ、こっ、この男は~~~~!)
折角空気が変わったと思ったのに! 全然切り替えさせてくれないじゃない。
(くそっ)
気を取り直し、声を掛けてきた女性の方を向く。失礼にならないよう、会釈だけしてこの場を去ろう――――そう思っていたのだけど。
「まさか……嘘でしょう⁉ ジャンヌ⁉」
「げっ!」
そこに立っていたのは本当に思いもよらない人物で。
わたしはゲンナリしてしまった。
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