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【1章】幼女に復讐は難しい〜ピュアすぎる兄ができました〜
9.王太子アインハード
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(この男、存在だけでなく顔面単体で国宝なのでは…?)
はじめて見る王太子は、キラキラと輝いて見えた。美形はゼリックで見慣れているはずのわたしでも唸るほど、見目形が整っている。
ただ、二人の系統は違っていて、真面目で超正統派美少年のゼリックに対し、王太子は前世でいうホストをナチュラルにした、みたいな感じ。まあ、あくまで第一印象の話なんだけど……。
「申し訳ございません、アインハード殿下。本日は妹が一緒についてきておりまして」
ゼリックは王太子――アインハードに向かって頭を下げた。アインハードはそこでようやくわたしの存在に気づいたらしく、こちらをちらりと見る。それからフンと鼻を鳴らした。
「ふん、ブサイクだな」
(なにおう!?)
バカにしたような表情でそう言われ、わたしは大きく目を見開く。
(あ、あんのクソ王太子……)
ちょっと自分の容姿がいいからって……! これでもグレゾール伯爵家自慢の美少女なんだぞ。会う人みんなに「可愛い!」って言われるし、自分でも超絶美少女だと自負しているのに!
とりあえず、声を上げなかったわたしはものすごく偉いと思う。普通の五歳児じゃこうはいかなかったに違いない。もちろん、めちゃくちゃ腹は立っているけど我慢しなくちゃ。相手は王太子――というか、大事な復讐の糸口なのだし。
「殿下、訂正してください。ブサイクなんてとんでもない。僕の妹は世界で一番可愛いので」
と、ゼリックが笑顔でアインハードに詰め寄った。笑顔――なんだけど、よく見たら圧がすごい。表情も雰囲気も清らかな天使のままなのに、だからこそ怖いものがある。アインハードもわたしと同じものを感じ取っているのか、たじろいでいる様子だ。
「な、なんで俺が……」
「なんで? 殿下の目が正常に機能していないからです。妹のリビーをよく見てください。銀色がかった黄緑色の髪は神様からの贈り物としか思えませんし、エメラルドよりも輝く大きな瞳も、真っ白な肌も、愛くるしい表情も、すべてが最高に美しく、可愛いでしょう?」
「え、いや、その……」
(やめてゼリック~~!)
そういうこと、真顔で言われると恥ずかしいから! ゼリックがわたしを可愛がってくれているのは知ってるけど、言語化されるとかなり精神にくる。しかも、冗談じゃなく本気でそう思っているらしいのがまたなんとも……。
「お、お兄様! わたしは大丈夫ですから。もうそのへんで……」
「ダメだよ、リビー。僕はリビーを守るためなら、世界中の誰を敵に回しても全力で戦うって決めてるんだ」
「世界中の誰を敵に回してもって……」
そうですよね、わたしたちの目の前にいるのはまだ七歳とはいえこの国の王太子ですから! このままだといつか、ゼリックは本気でこの国を敵に回してしまいそう。いや、わたしの復讐計画からすればそれは願ったり叶ったりなのかもしれないけど……。
「殿下、訂正いただけますよね?」
「あ……うぅ……」
ゼリックの追及に、アインハードがタジタジになっている。なお、わたしたちの側には当然大人がいて、この様子を見守っているんだけど、ゼリックを止める素振りはない。むしろ『もっとやれ』といった表情だ。どうやら普段、俺様気質のアインハードに手を焼いているらしい。それをやり込めるゼリックは、相当重宝されているのだろう。
(さすがはゼリックだわ)
これまで屋敷以外の人間と接するところは見たことがなかったけれど、ゼリックは有能――というか特殊なんだと思い知らされた。
「――訂正するよ」
と、アインハードがついに折れた。ゼリックはニコリと笑うと、アインハードをわたしの前に連れてくる。
「殿下、リビーは可愛いですよね」
「……ああ、とても可愛いと思う」
アインハードの頬がほんのりと赤く染まった。
(はっ、そうだった)
わたしはここに、アインハードと仲良くなる――というか、将来妃に選ばれるために来ているんだった。ゼリックのやり取りが強烈過ぎてすっかり忘れていたけれど、ここでポイントを稼がなければ!
「ありがとうございます、アインハード殿下。お初にお目にかかります。リビー・グレゾールと申します。お会いできて光栄ですわ」
わたしは改めてアインハードに挨拶をする。アインハードはぶっきらぼうに「ああ」と返事をした。
(……まあ、七歳の男の子なんてそんなもんよね)
前世を思い出しながらそんなことを考えていたら、またもやゼリックがアインハードに睨みをきかせる。
「お、俺も会えて嬉しいよ」
アインハードは急いでそう言い直すと、わたしの手の甲に恭しくキスをした。
「それで、どうしておまえの妹が、一緒に城に来ているんだ?」
ようやく挨拶を終えたわたしたちは、揃ってソファに腰掛ける。すると、すぐに侍女たちがやってきて、お茶や茶菓子がテーブルへと並べられた。
「それはですね――」
わたしがそっと身を乗り出す。このタイミングで王太子の好感度を稼いでおきたい! あなたに会いたかったんです!と続けようとしたそのときだった。
「妹は僕が大好きで、離れたくないと言って聞かなかったのです」
「お、お兄様! それは……」
ちょっと待ってゼリック!
合っているけど! 合っているんだけど! そんなこと言われたらアインハードに子供っぽいって思われてしまうじゃない? というか、下手したら好感度が下がってしまう。
だけど、今から否定をしても絶妙に嘘くさいというか、あまり効果がない気がする。
「おまえ、ブラコンなんだな」
「うっ……!」
絶対言われると思った。でも、ここまで来たら開き直るしかない。
「だって、お兄様は最高にかっこよくて、素敵なんですもの」
わたしはそう言って満面の笑みを浮かべた。
(先程辱められたお返しだもんね)
ゼリックも少しは恥ずかしがればいい――と思っての行動だったのに、ゼリックはものすごく嬉しそうに笑っている。これが真正シスコン! わたしは思わずガックリきてしまった。
(いや、ここで負けちゃダメよ)
次、いつアインハードに会えるかわからないんだもの。少しでも印象を残して帰らなきゃだ。
「でも、アインハード殿下も本当にかっこいいから、びっくりしました。わたし、殿下にお会いできてすごく嬉しいです」
「……ふぅん」
アインハードが返事をする。そっけない言葉ではあるけど、どうやらまんざらでもないみたい。口の端がちょっとだけニヤついているもの。
無事に好感度がアップしたことを喜んだのもつかの間、わたしはハッと背筋を震わせた。
(なんなの、この悪寒は)
自分で自分を抱きしめていると、ゼリックから「どうしたの?」と声がかかる。
ゼリックは天使みたいに美しく笑っていた。だけど、目がまったく笑っていない。邪悪な笑み――じゃなくて、神聖な笑みなのに怖いってどういうこと?
もしかして、わたしがアインハードを褒めたのが気に食わないとか? いや、ゼリックに限ってそんなまさか……。
「アインハード殿下に提案があります」
「提案? なんだ?」
ゼリックの言葉に、アインハードがぶっきらぼうに返事をする。ゼリックは微笑み立ち上がった。
「僕と手合わせをしていただけませんか?」
はじめて見る王太子は、キラキラと輝いて見えた。美形はゼリックで見慣れているはずのわたしでも唸るほど、見目形が整っている。
ただ、二人の系統は違っていて、真面目で超正統派美少年のゼリックに対し、王太子は前世でいうホストをナチュラルにした、みたいな感じ。まあ、あくまで第一印象の話なんだけど……。
「申し訳ございません、アインハード殿下。本日は妹が一緒についてきておりまして」
ゼリックは王太子――アインハードに向かって頭を下げた。アインハードはそこでようやくわたしの存在に気づいたらしく、こちらをちらりと見る。それからフンと鼻を鳴らした。
「ふん、ブサイクだな」
(なにおう!?)
バカにしたような表情でそう言われ、わたしは大きく目を見開く。
(あ、あんのクソ王太子……)
ちょっと自分の容姿がいいからって……! これでもグレゾール伯爵家自慢の美少女なんだぞ。会う人みんなに「可愛い!」って言われるし、自分でも超絶美少女だと自負しているのに!
とりあえず、声を上げなかったわたしはものすごく偉いと思う。普通の五歳児じゃこうはいかなかったに違いない。もちろん、めちゃくちゃ腹は立っているけど我慢しなくちゃ。相手は王太子――というか、大事な復讐の糸口なのだし。
「殿下、訂正してください。ブサイクなんてとんでもない。僕の妹は世界で一番可愛いので」
と、ゼリックが笑顔でアインハードに詰め寄った。笑顔――なんだけど、よく見たら圧がすごい。表情も雰囲気も清らかな天使のままなのに、だからこそ怖いものがある。アインハードもわたしと同じものを感じ取っているのか、たじろいでいる様子だ。
「な、なんで俺が……」
「なんで? 殿下の目が正常に機能していないからです。妹のリビーをよく見てください。銀色がかった黄緑色の髪は神様からの贈り物としか思えませんし、エメラルドよりも輝く大きな瞳も、真っ白な肌も、愛くるしい表情も、すべてが最高に美しく、可愛いでしょう?」
「え、いや、その……」
(やめてゼリック~~!)
そういうこと、真顔で言われると恥ずかしいから! ゼリックがわたしを可愛がってくれているのは知ってるけど、言語化されるとかなり精神にくる。しかも、冗談じゃなく本気でそう思っているらしいのがまたなんとも……。
「お、お兄様! わたしは大丈夫ですから。もうそのへんで……」
「ダメだよ、リビー。僕はリビーを守るためなら、世界中の誰を敵に回しても全力で戦うって決めてるんだ」
「世界中の誰を敵に回してもって……」
そうですよね、わたしたちの目の前にいるのはまだ七歳とはいえこの国の王太子ですから! このままだといつか、ゼリックは本気でこの国を敵に回してしまいそう。いや、わたしの復讐計画からすればそれは願ったり叶ったりなのかもしれないけど……。
「殿下、訂正いただけますよね?」
「あ……うぅ……」
ゼリックの追及に、アインハードがタジタジになっている。なお、わたしたちの側には当然大人がいて、この様子を見守っているんだけど、ゼリックを止める素振りはない。むしろ『もっとやれ』といった表情だ。どうやら普段、俺様気質のアインハードに手を焼いているらしい。それをやり込めるゼリックは、相当重宝されているのだろう。
(さすがはゼリックだわ)
これまで屋敷以外の人間と接するところは見たことがなかったけれど、ゼリックは有能――というか特殊なんだと思い知らされた。
「――訂正するよ」
と、アインハードがついに折れた。ゼリックはニコリと笑うと、アインハードをわたしの前に連れてくる。
「殿下、リビーは可愛いですよね」
「……ああ、とても可愛いと思う」
アインハードの頬がほんのりと赤く染まった。
(はっ、そうだった)
わたしはここに、アインハードと仲良くなる――というか、将来妃に選ばれるために来ているんだった。ゼリックのやり取りが強烈過ぎてすっかり忘れていたけれど、ここでポイントを稼がなければ!
「ありがとうございます、アインハード殿下。お初にお目にかかります。リビー・グレゾールと申します。お会いできて光栄ですわ」
わたしは改めてアインハードに挨拶をする。アインハードはぶっきらぼうに「ああ」と返事をした。
(……まあ、七歳の男の子なんてそんなもんよね)
前世を思い出しながらそんなことを考えていたら、またもやゼリックがアインハードに睨みをきかせる。
「お、俺も会えて嬉しいよ」
アインハードは急いでそう言い直すと、わたしの手の甲に恭しくキスをした。
「それで、どうしておまえの妹が、一緒に城に来ているんだ?」
ようやく挨拶を終えたわたしたちは、揃ってソファに腰掛ける。すると、すぐに侍女たちがやってきて、お茶や茶菓子がテーブルへと並べられた。
「それはですね――」
わたしがそっと身を乗り出す。このタイミングで王太子の好感度を稼いでおきたい! あなたに会いたかったんです!と続けようとしたそのときだった。
「妹は僕が大好きで、離れたくないと言って聞かなかったのです」
「お、お兄様! それは……」
ちょっと待ってゼリック!
合っているけど! 合っているんだけど! そんなこと言われたらアインハードに子供っぽいって思われてしまうじゃない? というか、下手したら好感度が下がってしまう。
だけど、今から否定をしても絶妙に嘘くさいというか、あまり効果がない気がする。
「おまえ、ブラコンなんだな」
「うっ……!」
絶対言われると思った。でも、ここまで来たら開き直るしかない。
「だって、お兄様は最高にかっこよくて、素敵なんですもの」
わたしはそう言って満面の笑みを浮かべた。
(先程辱められたお返しだもんね)
ゼリックも少しは恥ずかしがればいい――と思っての行動だったのに、ゼリックはものすごく嬉しそうに笑っている。これが真正シスコン! わたしは思わずガックリきてしまった。
(いや、ここで負けちゃダメよ)
次、いつアインハードに会えるかわからないんだもの。少しでも印象を残して帰らなきゃだ。
「でも、アインハード殿下も本当にかっこいいから、びっくりしました。わたし、殿下にお会いできてすごく嬉しいです」
「……ふぅん」
アインハードが返事をする。そっけない言葉ではあるけど、どうやらまんざらでもないみたい。口の端がちょっとだけニヤついているもの。
無事に好感度がアップしたことを喜んだのもつかの間、わたしはハッと背筋を震わせた。
(なんなの、この悪寒は)
自分で自分を抱きしめていると、ゼリックから「どうしたの?」と声がかかる。
ゼリックは天使みたいに美しく笑っていた。だけど、目がまったく笑っていない。邪悪な笑み――じゃなくて、神聖な笑みなのに怖いってどういうこと?
もしかして、わたしがアインハードを褒めたのが気に食わないとか? いや、ゼリックに限ってそんなまさか……。
「アインハード殿下に提案があります」
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ゼリックの言葉に、アインハードがぶっきらぼうに返事をする。ゼリックは微笑み立ち上がった。
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