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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-119 同族ではないと言いたいのに

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【ゲェェェェッェェン!!】

 巨体を震わせ、黒い炎を吐き出し始めるクイーン・シャドウフェニックス。
 嘴から解き放たれた炎は一直線に…

「炎というか、怪光線レベルになっているのが来たんだけど!?」
「ハル、危ない!!」

 火を吐き出すイメージとしては、普通はドラゴンのブレスや火炎放射器のようなものをイメージしていたというのに、このフェニックスの炎は一点集中狙いのように集束しており、僕のほうにめがけて解き放たれる。

「ひえっ!!」
ジュインッ!!

 ぎりぎりで回避が間に合い、少しだけかすりはしたが、直撃を避けることはできた。
 だが、それでも被害は軽微では済まない。

ボボボッ!!
「あっつううううううう!!」
「ハル!?えっと、今の攻撃は…シャドウフェニックスのシャドウファイヤーに近いやつかな?かすめても戦闘中に炎のダメージを継続して受け続ける燃焼状態になるみたいだけど」
「ファイヤーどころかレーザーでしょあれ!!しかも今、確認したら『地獄燃焼状態』ってなって、普通の燃焼よりもダメージ受ける幅が大きいんだけど!!」

 ただのフェニックスではなく、その群れのボスというべきクイーンの攻撃は、どうやらすべてがシャドウフェニックスの強化版と言っていいものになっているらしい。
 ボルナックさんから事前にもらっていた資料では、シャドウフェニックスのほうの情報が多いのだが、クイーンに関しては記述が少ないようで、山の管理人でもめったにお目にかかれないような相手だという可能性があるが、それでもその強さは他のシャドウフェニックスよりもけた違いにあるといっていいだろう。

【ゲェェェン!!!!】

 今の攻撃がかわされたことに怒ってういるのか、けたたましい雄たけびを上げながらクイーンが羽ばたき始める。
 あの丸々としたボディで飛べるのかと疑問に思ったが、次の瞬間足のあたりからすさまじい炎が噴き出し、ロケットのように上昇して…

ボボボボ、ボボボン!!
【ゲェェェェェン!!】
「方向を変えて、突進の推進力に切り替えてきたぁ!?」
「シャドウフェニックスの近接攻撃技!本当は影に潜り込んで攻撃してくるらしいからシャドウダイブって技名らしいけど、あれじゃ巨体を生かしただけの体当たり『シャドウストライク』ってところかな!?」

 なんにしても、あの巨体での体当たりはどう考えても不味いだろう。
 他のシャドウフェニックスならばともかく、クイーンはより丸々とした巨体ゆえに、それだけの重量が突進してくるのは脅威になりえる。

 だが、回避しようとする動きを読んでいるのか、クイーンは器用に足から噴射する炎の向きを開けて、またもや僕のほうに…

【ゲェェェェェェェエエエエエエエエ!!】
ドッガァァァァァン!!
「どわあああああああああ!!」

 体当たりをされた瞬間、ぶつかったところから爆発し、重量による重みと爆発のセットで吹っ飛ばされる。
 今のだけで体力の3分の一が消し飛ばされそうな勢いであり、何度も受けることはできないだろう。

【ゲェゲェゲェゲェェッェ!!】
「なんか溜めているうえに、また僕のほうを狙っているんだけど!!」
「なんでハルばっかり狙うの?そんなこと、させないよ!!」

 嘴を開けて奥底から光を溜め始めたクイーンの動きに隙があると思い、狙われていないミーちゃんが素早く動き出す。

「ビッグライトラットの歯で作った光の鍬で扱えるスキル!!『大地進撃光』!!」

 輝く鍬を取り出し、地面に叩きつければ、その刃先から地面にひびが入ってクイーンの足元まで一気に広がる。
 そしてすぐに、そのひび割れの奥から輝く光が見えて、下から一気に貫く。

ズバババァァン!!
【ゲェェンッ!?ゲゲェェェン!!】
「げっ、耐えきった!!」
「違う!!本当は出てくる光で吹っ飛ばすんだけど、クイーンが重すぎて動かせなかったみたい!!」
 
 想定以上にやばい敵というか、事前情報でシャドウフェニックスの名前だけあって、水や光の攻撃に関しては弱点のようなものだということは確認していたはずだが、どうも耐久力がけた違いにあるようで、今の攻撃はやすやすと耐えてしまったらしい。
 しかも攻撃を受けた状態でありながらも、狙いを変える様子はなくまたあのレーザーが撃ちだされそうになる。

 だが、流石に二度目となれば対処方法はある。

「相性最悪だが、実は氷の攻撃でもなんとか打ち消しに持っていけるってことは確認しているんだよ!!『雪兵召喚』大増量!!」
【【【ユキユッキイイイイイイイ!!】】】

 燃え上がるフィールド内での雪兵は正気じゃないと疑われそうだが、実はそうでもない。
 見た目的には明らかにちょっといるだけでもすぐに溶けて無に帰って攻撃を防ぐ盾にもならなさそうには見えるだろうが、ちょっとした絡繰りがある。

「雪兵特殊命令!!手に集まって来い!!」
【【【ユキユキイイイイイイイイ!!】】】

 手を広げて誘うと、雪兵たちがくるりとハルの元へ飛び掛かり、その手に集まっていく。
 兵士たちがまとまって合体していくたびに召喚が繰り返されて、短い間に合体が繰り返されて巨大な氷の拳が出来上がる。

【ゲェェェン!!】
「流石にレーザーにはならないけどこれだけの氷があればいけるはず!!『ギガント・コールドスマッシュ』!!」

 ドワウッ!!と吐き出されたレーザに向かって、巨大な氷の拳を叩きつければ、撃ちだされていたレーザーは拳にぶつかったところから拡散し、周囲へ飛び散って威力を落とす。

【ゲェェン!?】
「雪兵たちをなめるなよ!!こいつらはただの雪で作られたんじゃなくて、これでもれっきとしたモンスターのようで、特製の雪で作られているんだよ!!いざとなればマグマに浮かぶ氷の船にだって変形するほど、火への耐性があるやつも呼び出せるからな!!」

 火が効かない雪兵というよりも、効果があっても耐えきるだけのガッツがあるやつを呼び出しただけでもあったりする。
 一応、弱点なことは弱点らしいが、根性で溶けるのをこらえることができるようで、こうやって集合させるとより強固になることができるらしい。

 ただ、流石に限度もあるようで、防ぎ切ったのは良いけど半分以上熔解しちゃったので、何度もやるのは無理があるが…さて、どうしたものか。

 どういうわけか僕を全力で狙っている様子であり、目撃だけでも達成できるクエストなので逃亡したいところなのだが、ボスモンスター特有の結界があるせいでそれが不可能。
 だが、討伐の方向に動きたくとも今の戦力では心もとないところがある、今回、アリスやシアは動かせるが他のメンツはRMPで力を借りれるとはいえ、回復していないので戦闘ができない。

 そう考えると、逃亡も戦闘もどっちも厳しいが…それでも、可能性は0ではないだろう。

「そもそもこんな熱いフィールドに引きずり込んできているってことは、自分の戦場ならばより強化されますよって言っているようなものだし…ならばまず、ここからどうにかするか」
「どうするの、ハル?」
「こういう時は、場所を奪えばいいんだよ!!相手の巣に乗り込んできた時点で僕らのほうに非がないわけじゃないけど、それでもここまでケンカを売られても困るからね!!というわけで、より強い力で塗りつぶしてやるよ!!『黒き女神』のスキル発動!!」


ブーーーーーーーーーーーーーッ!!
「「へ?」」

…今、いつものように女神の姿に転じようとしたら、急にブザーが鳴り響いたような音が鳴った。
 何事かと思い、ログを確認してみると…
―――――
>スキル「黒き女神」が使用されました。
>レジスト!!アイギス火山内の判定のため、火の女神の神域に設定されています!!
>クイーン・シャドウフェニックスたちの信仰によって、より強靭なものになっており、他の女神の介入ができない特殊領域変化したことで、女神への転身が防がれました!!
―――――

「…嘘だろ!?」
「まさか、フェニックスたちが信仰しているから、防がれたの!?」
 
 どうやらそのようで、黒き女神のスキルを使用しようと動いても、女神の姿になることができない。
 どうも、かなり強烈な信者でありつつその神域になっているためか、双方の作用によって他の神々が介入できない場所になっており、黒き女神も例外ではなかったようだ。

―――――
>この特殊領域内で、女神の姿に転じることは不可能となります。
>相手側の信仰心を凌駕するほどの信者がこの領域内に入ることがあれば、覆せます。
―――――

「信仰心って…いや、まず信者自体いないと思うんだけど?」
「あ、でもハル。ネットでこの間調べてみたけど、どうも生まれているみたいだよ?黒き女神教ってのあるって」
「あるの!?」

 人の知らないところで、勝手にそんなものができているとは思わなかったが、それでもだめらしい。
 別の場所で大量の信者が祈っても意味がないようで、この領域内ではその神の信者の様な人がより強い信仰心で直接祈ることがなければ、どうにもならないようだ。

「いたらそれはそれで最悪なんだけど!!できるだけ他の人にはバレないようにしているし、知っている人もそんなにいないんだけど!!」
「だったら、ここじゃ黒き女神の力を使って、対抗できないね」
【ゲェェェン!!】

 ギラギラとした目でこちらに向きなおり、怒りの声を上げてまだまだやる気のクイーンフェニックス。
 心なしか僕らのやることが分かっていたようで、女神に転身できない状態をあざ笑うかのような顔を浮かべているようにも見えてくる。

「とりあえず、今やれるのはできるだけ相手の弱点属性と言える攻撃を、何とかぶつけていくしかないけど…ミーちゃん、勝利見込めそうかな?」
「うーん…流石に、無理かも?」

 女神の力が仕えない現状、できるだけ相手に通じるような攻撃しかないだろう。
 けれども、相手は相当な耐久力を持っているようで、一筋縄ではいかないだろうし…これ、全滅する可能性が高いのではなかろうか。

 ここ最近は味わうことがなかった全滅の可能性を前に、僕らは久しぶりに冷や汗をかいたような気がするのであった…

「水コンボ、液状なら毒液とかあるけど…ミーちゃんは?」
「さっきの光の鍬の攻撃と、井戸を掘る際に水脈をあてて噴出させる水の鍬と、神々しく輝くダイヤの鍬の攻撃とかなら何とか…」

…ダイヤって燃えなかったっけ。この場所で出したら不味そうなんだけど。




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